塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

出発

2010/07/16

10時52分、テイクオフ。成田空港を発ったスイスエアラインズのチューリッヒ直行便の機内では、例によって映画をいくつか見ました。『The Bounty Hunter』は他愛もないコメディーアクションで何だこりゃと思いましたが、『Alice in Wonderland』はけっこう楽しめました。特に、最初の方で赤の女王のお菓子をつまみ食いしたことを問いつめられるカエルの衛兵が秀逸。にやにや顔でぐりんと首を回すチェシャー猫も最高です。ジョニー・デップはこんなものかな?しかし白の女王が善玉キャラのわりには一つ一つの仕種が不気味で笑えます。そして主人公アリス役のミア・ワシコウスカは、最初のうちはなんだか可愛くないなあと思っていたのに、ストーリーが進むにつれてどんどん魅力的になっていったのが不思議でした。

チューリッヒ到着は16時頃。気温は摂氏30度ですが、空気が乾燥しているのであまり暑さを感じません。それでも今日は、この日のうちにツェルマットまで移動しなければならないので大忙しです。ターンテーブルから出てきた荷物をひっつかむと、パスポートを眺めるだけが仕事の入国審査官の前を通ってすぐに空港地下の駅に向かい、窓口でスイスカードをヴァリデーション。そして16時40分発の列車に乗りました。

予定の列車に乗ってしまえば、後はのんびり車窓の景色を楽しむだけです。2階建ての列車の上階に席を占め、相変わらず美しいスイスの山や草原や湖の景色を堪能しました。トゥーンを過ぎたあたりで検札がありましたが、地元の人たちは顔写真入りのクレジットカードのようなものを見せていて、なんだかうらやましい気がします。さすがに時差がきいてきて少し眠くなったものの、予定通りの時刻に乗換駅のフィスプに着いて、ここで列車を降りました。ところが、ここでちょっと勘違い。フィスプのホームに降り立ち、階段を下って駅の外に出たのですが、駅前の景色がこれまでの2回の旅で来たときと違っています。おかしいな、ツェルマット行きのBVZ登山鉄道の駅は少し離れたところにあったはずなんだけど、と思ってはみてもないものはありません。幸いスイスの鉄道には改札というものがないので駅の構内に戻ってみると、BVZ登山鉄道は同じ駅の別のホームから出ていました。このときは気が付かなかったのですが、過去2回はこのフィスプではなくさらに東のブリークまで行って乗り換えていたのを忘れていたのです。

空には黒い雲が広がり、時折小さな雷鳴も聞こえる中、列車は白濁したマッターフィスパ川沿いに谷間を進みます。そして20時14分、緯度が高いためにまだまだ明るいツェルマットに到着しました。

駅からはGGB登山鉄道に沿ってカーブを描く道を歩いて、川を渡るところから雲に覆われたマッターホルンを見上げてから、6年前にも泊まったホテル・シェミネに投宿しました。今日の行動はこれで終了ですが、「今日」とは言っても飛行機での移動は太陽を追いかけながらだったので、自宅を出てからここまで実際には27時間が経過しています。こじんまりしたシングルルームでパッキングを解き、衣類やギアを作りつけのクローゼットにしまうと、夕食をとることもなくベッドに入りました。

夜中には激しい雷雨の音が上部を開けたままの窓から聞こえてきましたが、そのせいでマッターホルンに登れなくなるかどうかは、運を天に任せるしかありません。