塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

トロント市内

2007/09/22 (1)

一夜明ければいきなりライブ当日ですが、とは言っても日中は特にすることもありません。そこで、天気もいいことだしぷらぷらと市内散策を楽しむことにし、ホテルから徒歩20分、トロントのシンボルと言ってよいCNタワー(Canadian National Tower)に同室のT君と共に向かいました。

このタワーの高さは553mで、この高さだけではドバイに建設中のブルジュ・ドバイに最近抜かれたものの、今のところ「展望台のある高さでは世界一」ということになっている模様です。その一番高い展望台=SkyPodまで登るにはCA$25.99も払わなければならず躊躇しましたが、ここまで来てお金をケチっても残るのは後悔だけと思い直してチケットを購入し、エレベーターを乗り継いで最上階に上がりました。

しかし、あまりに高過ぎるせいかいまひとつ高度の実感が湧かず、霞がかって遠望が効かなかったせいもあってちょっと期待外れでした。

むしろそこから100m以上下った中間の展望台でガラスの床から真下を覗き込んだり、網に囲まれた周回テラスで風にじかに吹かれたときの方が高さを感じたのですから、人間の感覚なんといいかげんなものです。

いったんホテルに戻って昼食休憩後、今度はユニオン駅の北側へ地図を片手に遠出してみることにしました。

まずはホテルからすぐ左手の交差点を真っすぐ北上し、金融街の先T字路の突き当たりが旧市庁舎(Old City Hall)です。なかなか由緒ありげな建物ですが、現在は別の用途に使われているのだそう。その前にはなぜかバグパイプのおじさんがいて、途切れることなくぷかぷかと音を出し続けていました。

旧市庁舎の隣には、噴水の向こうに現市庁舎がすっくと建っています。中央の丸い建物を両側から弧を描く建物2棟が包むようなモダンな作りで、中央の円は地球を、包む二つの弧は神の手を表しています。

ここから少し西に行ってユニバーシティ通りをどんどん北上し、緑豊かなQueen's Parkに入って、ロマネスク様式で左右非対称の重厚な造りのオンタリオ州議事堂に辿り着きました。掲げられている旗は右に州旗・左に国旗で、有名なこの国旗のデザインは左右の赤地が太平洋と大西洋、真ん中の白地が国土、赤いカエデは国民を表しているのだそうです。また、議事堂の前には建国時代の政治家の銅像が立っていました。

ところでこの建物、Rushファンなら見覚えがあるのではないでしょうか?迂闊なことに私も帰国して写真の整理にかかるまで気付かなかったのですが、こうして見れば一目瞭然です。

そう、この建物はRushの名盤『Moving Pictures』のジャケットに使われたものなのです。ちなみにこのジャケットのデザインは、運ばれている絵画(Moving Pictures)に心を動かされている(Moved by Pictures)人々を映画(Moving Picture)に撮っている様子、という構図なのだとか。

それにしてもこの公園にはリスがたくさんいます。とりわけ州議事堂の裏手の明るい木立の中に広がる芝生の上では、冬に向かって一所懸命木の実を食べている黒いリスをこれでもかというくらいに見掛けました。そこからわずかの歩きでロイヤル・オンタリオ博物館に辿り着き、T君はここで一足先にホテルに帰ることになったので私一人で入場してみましたが、どうやらここは日中韓の東アジアコレクションが売り物だった様子です。やれやれ、わざわざカナダまで来て博物館に再現された茶室や仏像を見ることになるとは思いませんでした。その他には、展示意図がいまひとつよくわからない中世〜近世ヨーロッパの各種調度品とか鎧や剣(Armor and Sword)とか、はたまた爬虫類の剥製や恐竜の骨、作り物のコウモリ洞窟とか、何でもありという感じでした。

ホテルへの帰路、トロント大学の構内を抜けてみました。ここには雰囲気の良い建物がたくさんあって、それもそのはず大学の歴史の方が国家としてのカナダの歴史よりも長いのだそうです。

市内観散策はこれでおしまいとし、そのままチャイナ・タウンの縁をかすめるように南下してホテルに戻りました。たった数時間の歩きではありましたが、トロント中心部を一通り歩いてみての印象は、ゆったりした町並みの中に多様な人種が穏やかに暮らしている町、というもの。歴史的建造物を選んで回ったせいかもしれませんが、実際治安もよさそうですし、歩行者優先ですぐ停まってくれる車のマナーにも好感がもてて、とてもよい町だと感じました。ただし翌日現地ガイドO氏が説明してくれたところによれば、公共交通機関には時刻表というものがなく、なぜならいつ来るか決まっていないからだということです。しゃれた路面電車も見掛けましたが、その運転手がお客が乗っているにもかかわらずコーヒーショップに寄り道するなど普通にあることなのだとか。のどかと言えばのどか、いい加減と言えばいい加減な面がトロントにはあるようです。

さていよいよ今回の旅のメインイベント、Rushライブです。