帰国

2014/08/03

帰りの飛行機の中で観た映画は、スタンリー・キューブリックの『博士の異常な愛情』です。この映画、久々に観ましたが、狂気の将軍の暴走によって反乱を起こした空軍基地、うろたえるペンタゴンの作戦室、迎撃ミサイルの衝撃波で大破しながら低空飛行を続けるB-52戦略爆撃機の機内の3ヶ所を舞台に展開するドラマの中で、役者のキレキレの演技の凄さを再認識しました。とりわけピーター・セラーズは周知のように基地の副官、ペンタゴンの大統領、ストレンジラブ博士の一人三役をこなしているのですが、実はB-52の機長役も彼がこなす予定になっていたそうです。テキサス訛丸出しのこの役をピーター・セラーズが嫌ったために一人四役は実現しませんでしたが、完成した映画を観たとき、彼は観る者に強烈な印象を残すこの機長役を演じなかったことを後悔したのだとか。

そして私の乗ったエールフランス機は、ミサイルに遭遇することなく、無事に日本の海岸線を越えました。

ノート

予習

シャモニーと言えばガストン・レビュファ。そこで、レビュファが監督を務めた映画を3本、事前に購入して時間の許す範囲で予習をしておきました。いずれも古い映画ですが、今の目で観ても十分に楽しめる内容をもっています。

同じくレビュファの『モン・ブラン山群―特選100コース』も、クラシカルながらアルパインルートの解説としては充実しています。今は絶版らしく、Amazonで中古本を手に入れましたが、これは一家に一冊あってしかるべきでしょう。

シャモニーでは、スネルスポーツの向かいにある書店が充実しています。右の写真の平積みされている本はすべて登山関係で、主立ったものはフランス語版の他に英語版も置かれていました。

この書店で購入したのは、アルパインルートを紹介する『Mountaineering In The Mont Blanc Range』とマルチピッチルートを紹介する『Opposite Mont Blanc The Aiguilles Rouges 1』です。前者は€20、後者はもっとexpensive。安くはない買い物でしたから、来年以降も活用するつもりです。

エール・フランス

これまでのスイス旅行は成田からでしたが、今回は羽田発着のエール・フランスを使うことができました。

日本のイメージは、ガンダムと女子高生?

空港内では一番遠いゲートが使用されており、空港内を歩いているだけで、はるばる旅をしている気になってきました。それでも、わざわざ成田まで行かずに羽田から飛び立てるというのはありがたいことです。今回は出発日も休みにしましたが、テイクオフが22:15と遅いので、日中の仕事を終えて帰宅してから空港に向かっても十分間に合うでしょう。

マルチパス

本文中にも書きましたが、特にエギーユ・デュ・ミディへのロープウェイはめちゃくちゃに混むため、都度チケットを購入するのは得策ではありません。

そこで登場するのがマルチパスです。1日券から6日券まであって日数が長くなるほどに割安になり、私が買った6日券は€118。実際に使ったのはエギーユ・デュ・ミディ往復、モンタンヴェール鉄道、ブレヴァンへのロープウェイ、ラ・フレジェールからの下り、プランプラ往復、ランデックス往復2回といったところですから、細かくは計算していませんが数千円分浮いた計算になるはずですし、何よりストレスフリーで改札を抜けられるのは大きな利点です。

ところで、シャモニーに着いた最初の日の夕方にエギーユ・デュ・ミディへのロープウェイ駅でマルチパスを購入したとき、「翌日から6日間」のチケットを買おうとしたところ、最初の窓口の意思の強そうな顔をしたおばさんは「明日買いにきなさい」と言って決して売ろうとしませんでした。ところが、隣の窓口で同じことを頼んでみたところ、そちらのお姉さんはおばさんの方針など意に介することなく、こちらの希望通りのマルチパスを発券してくれました。何事もチャレンジが肝心です。

保険

現地での保険は、フランス山岳会の会員になるという形で加入しました。

€94.5と決して安くはないのですが、当地では救急車が動けば数万円(病院に行くだけならタクシーを使った方がいいよと救急隊員にアドバイスされるらしい)、病院で一晩過ごせば数万円と、万一事故を起こしたときはお札に羽が生えているようにお金が飛んでいくそうなので、保険加入は必須です。

実は、私がシャモニーに入る直前の7月23日に著名なトレイルランナーである相馬剛氏がマッターホルンで墜落したのですが、Nガイドによれば彼は保険に入っていなかったらしく、その捜索費用は目の玉が飛び出るような金額になるだろうとのこと。しかし800m落ちてクレバスに入り、その上に新雪が積もってしまったので、遺体発見は絶望的な状況であるようです。

コンセント

泊まったホテルのコンセントは、こんな形状でした。

事前の情報では「スイスと同じだ」ということだったのでグリンデルワルトで使用していたアダプターを持参していたのですが、これは使えませんでした。ホテルのフロントで借りようとしましたが、日本の電源コードの形状に合うアダプターはなく、それではとシャモニー市内のSUPER Uというスーパーマーケットの地階で物色しました。

これかな?当たるも八卦、当たらぬも八卦の状態でしたが、無事にコンセントにはまってくれて事なきを得ました。

ところで、日本で言うところの「コンセント」は実は和製英語で、本来の英語表現は「socket」ないし「outlet」であることをこの機会に初めて知りました。覚えておこう。

ガイド

これまでのスイス旅行では現地ガイドをあらかじめネットで予約し、行きたいと思うルートだけをガイドしてもらうというスタイルをとっていましたが、今回は「シャモニーにはどのような『登るべきルート』があるのか」というところからのガイディングを依頼したかったため、日本人ガイドをお願いすることにしました。

この試みは成功で、Nガイドは親身にいろいろ教えて下さった上にシャモニーライフに関する様々な提案やアドバイスもくれて、これで今後数年シャモニーを楽しむための下地を作ることができました。

ただし、当然のことながらコストはかさみます。ルートガイド費用自体が現地ガイドに比べて飛び抜けて高いわけではありませんが、ガイドの渡航費と現地滞在費用は期間中の各クライアントに割り当てられることになりますし、拘束期間中は直接のガイドを受けなくても拘束料がかかります。具体的にいくらかかったかということはここには書けませんが、ここ数年の中では突出した出費になったことは間違いありません。もっとも、それでも今回の私が体験したアクティビティと同じ内容を通常のツアーの中で実現したとしたらやはり同じくらいの料金になったであろうと思いますし、何より国際ガイドの高いガイド品質を提供してもらったことを考えれば、絶対額は高くても割高感はありません。

ともあれ、来年以降もシャモニーに行くとした場合には、自分(たち)で行けるところとガイドの力を借りたいところを計画的に分けて、効率よくガイドの力を頼みたいと思っています。