塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

トロッケナーシュテークからフーリへ

2004/08/04

目が覚めてみれば夜半の雨は上がって青空が戻ってきていましたが、雲がイタリア側から流れ込んできている様子で、マッターホルンも尖った穂先は雲に巻かれています。あの中にいる登山者たちは、今どういう状況にあるのだろう?ハーフトラバースの日に声を掛けてくれた日本人とはその日の午後に我々がリッフェルホルンの予約をしているときにアルピンセンターで再会していましたが、順調なら彼も今あの雲の中にいるはずです。

ホテルの朝食(それぞれ何種類かのパン、シリアル、ハム、チーズ、それに果物のビュッフェ方式。コーヒーか紅茶を選べます)を終えてから、アルピンセンターへ向かいました。その前に午前7時から1チャンネルでやっているスイス国内各地の地域別天気予報を見て、木曜日は悪天候だが金曜日は回復気味であることを確認してありましたが、アルピンセンターの窓口で示された週間予報の図でも明日は雨マーク、金曜日もかろうじてお日様が出ている状態で、はっきり回復するのは日曜日以降のようです。そこで、当初はこの日にヘルンリ小屋まで入って明日登頂を目指す予定でしたが、1日順延して金曜日を登頂予定日とすることにし、この内容で料金を支払いました。

そんなわけで空いた1日、昨日のトーマスのアドバイスもあるのでユウコさんとブライトホルンをノーマルルートで登ってみることにしました。いったんホテルに戻って装備を調え、村の奥のゴンドラ駅へ歩きました。ここから乗換え2回で標高3838mと富士山よりも高い展望台へ向かいます。毎度思うことですが、標高1620mのツェルマットから展望台まで2200m以上の標高差をゴンドラとロープウェイで稼ぐことができるというのは、何とも凄いことです。

下界から見た通り、上に登るほどにイタリア側から押し寄せてくる白雲が力を増してくるようです。クラインマッターホルンの駅のトンネルを抜けてプラトーの側に出てみると、一面ガスが覆っていてブライトホルンは見え隠れしている状態。天候に恵まれればクラインマッターホルンからゆっくり歩いて2時間の行程のはずですが、今はガスに日が遮られている上に風が強く、思いの外に冷え込んでいます。実は、ハーフトラバースのときかなり暑かったのでユウコさんに薄着を指示し、私もTシャツにヤッケを羽織っただけの格好だったのですが、これは明らかに装備不十分でした。それでもハーネスにロープを結んで少しの距離を歩いてはみたのですが、リッフェルホルンで軍手を失っていたユウコさんは寒風に耐えられず、あっという間に撤退となってしまいました。うーん、せめてフリースくらいはリュックサックに入れてくるべきだった。私の判断ミス、すみません。

私はなるべく高度に身体をさらしていたいのでそのままクラインマッターホルンにとどまることにし、ユウコさんは先に下ってツェルマットを散策することにして、ここでいったん別れました。ふと見ると、近くに「Gletschergrotte / 氷河の洞窟」と書かれた看板があり、こりゃ何だ?と思いながら中に入ってみましたが、雪〜氷の中に穿たれたトンネルの中によく訳のわからないオブジェなどが置いてあるだけで意味不明……。

それにしてもスイス人は働き者です。お客に見てもらおうと、右の写真のようにクレバスに落ちたまま固まっているクライマーもいれば、下の写真のように軽装で氷の中に立ち尽くしているワイン畑の農夫もいたりするのですから。

クラインマッターホルンは眺めの良い場所ですが、ガスで覆われている日に長時間いて楽しい場所ではありません。そんなところにぼけっとしているのがだんだんばからしくなってきて、30分ほどで下ることにしました。しかし、ただ下るのではもったいない……そうだ、途中から下降ハイキングを楽しむことにしよう!1駅くらいなら大したことはないだろう。

クラインマッターホルンからロープウェイで1駅下ったトロッケナーシュテークで駅の外に出ると、ハイカーが歩いているのがちらほら見えました。それでは私も、というわけで下り道に入りましたが、上述のようにツェルマットからクラインマッターホルンまでの標高差は2200m以上で、この間にある駅はここトロッケナーシュテーク(2939m)とフーリ(1886m)の二つしかなく、「1駅くらい」といってもその差は1053m!ろくに地図も見ずに下り始めたのが運の尽きで、確かにツェルマットの谷を縦に見下ろす眺めは絶景でしたし、昨日登ったリッフェルホルンが西側からだとジャンダルムのようにすっきりと立っているのも面白い光景でしたが、目の前に見えているツェルマットは下っても下っても近づかず、結局フーリまでたっぷり2時間絞られることになってしまいました。