ヤンゴン

2001/05/06

朝食はお粥にして様子を見ましたが、どうやら下痢は治ったようです。原因は今もってよくわかりませんが、ミャンマーの暑さ、度重なる暴食とミャンマー特有の油の影響などが重なったようです。ともあれ、緑が美しい郊外の道を抜けて、マンダレーの空港から空路ヘーホー経由ヤンゴンへ移動しました。ヘーホーはインレー湖へ行く際の入口になりますが、今回の旅ではインレー湖は行程に入っていません。そして今日はミャンマー滞在最後の日であり、ヤンゴンの市内観光の日となっています。

ヤンゴンの空港で飛行機からロビーへ向かうバスは日本製で「危険ですのでステップに立たないで下さい」といった日本語の表示がそのまま残されていました。これはほんの一例ですが、町中では本当に多くの日本車を見掛けます。チョチョルィンさんによれば、ヤンゴン市内の車の90%は日本製の中古車で、人気のある日産サニーが中古で1万ドル、新車なら3万ドル、ミャンマー国内でも生産されているスズキのワゴン車は8千ドルですが順番待ちだそうです。そんなわけで、ヤンゴン市内は右側通行なのに車はみんな右ハンドルなのでした。

カンドーヂー湖畔にあるレストランで点心の昼食をとったら、シュエダゴォン・パヤーへ向かいました。もともとヤンゴンは2500年以上前に建てられたこの仏塔を擁する町ダゴォンとして知られていたところで、1755年にビルマ族のアラウンパヤー王がモン族を倒したときにこの町に「戦いの終わり」という意味のヤンゴンと名付けたという由来をもっています。そういう意味で、この仏塔はヤンゴンの歴史そのものを体現する仏塔であるわけですが、着いた途端に雷鳴とともに車軸を流すような豪雨になってしまい、風も出てきてこれはもう完全に嵐です。しばらくゲストルームで待機していましたがすぐにはやみそうにないので、とりあえず土産物屋に行って買い物を先に済ませることにしました。途中の道路も派手に冠水していてまるで洪水ですが、人々は慣れているのかさして動じる様子も見せていません。

土産物屋でミャンマー伝統の人形2体とバガンの写真集を買いました。舟型の底をもち舳先に弓をつけたような「ビルマの竪琴」も売られていてインテリアによさそうでしたが、サイズが大きいのでこれは諦めました。ちなみに、僧侶が楽器に触れるのは破戒なので、水島上等兵が法体で竪琴を弾くというのは実はリアリティがありません。

さて、次に向かったのは巨大な寝釈迦で知られるチャウッターチー・パヤーです。この日はミャンマー暦の2月の満月の日で、仏陀が菩提樹の下で悟りを開いた日=菩提樹祭であり、多くの信者が市内に集まって寺院にお参りをしています。寝釈迦の前にもたくさんの人が思い思いの様子で座り込み、お祈りをしたり語らいあったりしていました。その寝釈迦は凄いハンサムで、身体は金箔の貼り直し工事の最中でしたが、それでも十分に優美でした。

再びシュエダゴォン・パヤーに戻りましたが、雨は上がったものの空模様ははっきりしません。前回十分見学しているユウコさんはゲストルームで本を読んでいることにして、チョチョルィンさんと2人で黄金の仏塔を見ることにしました。

仏陀の8本の聖髪を納めたというシュエダゴォン・パヤーは1段高い丘の上にあり、そこまで長い階段が続いていますが、楽をしようとすればエレベーターでその高さまで上がることもできます。我々もエレベーターを利用して境内に出ると、ちょうど境内に入るところにある菩提樹の下で若者たちが大声をあげながら菩提樹に水をかけているところでした。そしてさらに進むと、目の前に実に大きな金色の仏塔が聳えていました。

歴代の王は自分の体重と同じ重さの金箔をこの仏塔に貼りつけるのをならわしとしてきたといいますが、どれだけの富がこの仏塔に集約されているのかは想像もつきません。塔の最頂部には76カラットのダイヤモンドが輝き、多数の宝石がその周囲にちりばめられていると言いますし、4年に一度の補修時には市民は貴賎を問わず自分にとって最も大切なものを寄進するのだそうです。

仏塔の周辺部にはところどころに小さな祭壇があり、それぞれに信者が集まっていました。これはミャンマーの八曜暦の守護像で、自分の生まれた日の曜日(水曜日は午前と午後に分かれます)の守り本尊に水をかけているのでした。ミャンマーの八曜日はタイのそれと同じですが、生活面での影響ははるかに強く、曜日が持つ性質と象徴がその人間を支配します。例えば好きあった男女でも曜日の組み合わせが悪いとそのままでは結婚できないほどで、ではどうするかというと、占い師のところへ行ってお祓い(?)をしてもらうのだそうです。なお、私の生まれは木曜日なので、常識的で穏健、人道主義だが偽善者でうぬぼれが強く、大臣や学者向きなのだそうです。ここまではまだいいとしても木曜日を司る動物がネズミというのはどうにもいただけません。かたやユウコさんは月曜日生まれで、変化を好み空想的、感情的、気まぐれというのはまさにその通り!そして、象徴動物はトラです。

やがて雨が再び降り出しましたが、人々はずぶ濡れになりながらも祈ることをやめようとせず、石畳の上に傘もささずに座り込み仏塔に向かって一心に祈りを続けています。もちろん屋内でも、仏像に祈りを捧げる人々の姿が随所で見られました。

面白い、というと不謹慎かもしれませんが、こちらの仏様の光背は電飾仕掛けでとてもカラフル。また、仏塔の台座の上層にある仏像を下で拝めるようにわざわざテレビに映し出したりしているのもユニークです。

シュエダゴォン・パヤーを後にしたら、イギリス統治時代のいかにも英国風の建物やヤンゴン市街のランドマークとなっているスーレー・パヤーを車の中から見てから空港へ向かい、足かけ5日間お世話になったチョチョルィンさんに心からの感謝とお別れを言って、タイ航空でバンコクへ向かいました。