九曲瀑布 / 帰国

2019/02/12

三泊四日の旅も、あっという間に最終日。この日登る場所は近場とあってゆっくり8時から朝食をとり、最後の氷瀑へ向かいます。

ここまでの二日間は人工氷瀑でのトップロープに終始しましたが、今日は天然の滝をリードする予定。行き先は春川から至近にある景勝地・九曲瀑布구곡폭포クゴクポッポです。

入り口のゲート脇にある事務所で記帳して、係のおじさんに「ご安全안전に」と声をかけてもらってから谷の奥へと進みます。

いかにもコリアンな佇まいの九曲亭を横目にさらに進むと、行く手に大きな氷瀑が見えてきました。なるほどこれか!

九曲瀑布は高さ60m。実にいい具合に氷結しており、左端と真ん中が若干水っぽいものの左右2本のラインを引くことができそうです。まずはJeonさんが右寄りのラインに取り付き、途中まで登ったところで振り返って我々に「どうぞ登って下さい」。えっ、そうなんですか?もちろんリードする気十分で来てはいましたが、朝一のウォームアップなしの状態でいきなり60mのリードをするだけの心の準備はできていませんでした。しかも左側のラインの方が垂直部の長さが明らかに長く、これはちょっとばかり奮闘することになりそうです。

ともあれ、ヨーコさんにビレイしてもらってクライムオン。オブザベーションの際に見当をつけておいた通り、中間部はバーティカルに立っているもののよく登られているせいで氷に凹凸ができており、あまり腕力を消耗することなくぐいぐいと登れます。ただし、ランナウトをものともしない韓国風ではなく要所要所にスクリューを入れながらの和風な登りのため、私が上に着いたときにはJeonさんの方では既にセカンドを迎え入れている状態でした。

落ち口の上の岩壁にはワイヤーやロープが張り巡らされており、そこにセルフビレイをとって後続のヨーコさんを迎え入れたら、Jeonさんがセットしてくれたフィックスロープを使って懸垂下降です。

降り立ったところで、下で待っていたYunさんと、この日だけ参戦のもう一人のクラブメンバーが親指を立てて「いいね!」サインを送ってくれました。

こちらはヨーコさんの懸垂下降ですが、これだけ長い滝だと下降するのも大変です。

この滝の登下降の前後で、Jeonさんからギアについてのいくつかのアドバイスがありました。まずビレイデバイスについてのJeonさんのオススメは、DMM Pivotです。

私が使っているATCガイドとの違いは、カラビナに吊り下げるところが可動式になっており、下部のホールがカラビナを受け付ける大きさであることとあいまってセカンドの抜重→ロワーダウンが容易であるところ。もちろんコンパクトさや軽量さは犠牲になっていません。

目から鱗だったのはクイックドローの使い方です。これまで私はクイックドローの両端でベントゲートのカラビナとストレートゲートのカラビナを逆向きにセットし、ベントゲートのカラビナをチェストハーネスのギアラックに上から掛けていましたが、これだとロープにカラビナを掛けてからスクリューに向かって手を滑らせるときに持ち替えが発生してしまいます。しかし、二つのカラビナを通常通り同じ向きにセットした上でベントゲートのカラビナを下からすくい掛けにし、外す際にも手を下からあててやれば一連の動作の中で持ち替えが生じず、クイックドローを落とすリスクがぐっと軽減されるわけです。他にもPASの輪っか三つでのクイックドローやツインゲートのカラビナなどを見せられて、これまでの自分がギアの選択や使い方にいかに無頓着であったかということを痛感させられました。

ランチはクラブの仲間の方が調理パンを用意して下さっていて、ありがたくいただきました。

お腹がふくれたところで二本目にかかります。ヨーコさんにビレイしてもらって右のラインをTRで登ろうとしたのですが、ヨーコさんのルベルソでは凍ったロープの操作が困難。ここで貸していただいたのがこのかっこいい謎のデバイスです。残念ながら現在は生産されていないとのことですが、これひとつをとってみても韓国クライミング界のギアに対する研究熱心さがよくわかります。

さて、右ラインはバーティカル部が短いものの核心部の氷が脆そうに見えて少し不安だったのですが、実際に登ってみれば問題なし。緩傾斜の下部が長いために左ラインよりむしろ楽なくらいです。

そこで、最後は右ラインをリードさせてもらうことにしました。

これまでのJeonさんやYunさんの教えを思い浮かべ、バーティカル部ではカウンターバランスを意識し、アックスやアイゼンも極力打ち込まないようにして登ったつもりですが、高さが出てロープが重くなってくるとだんだん登り方を意識するゆとりがなくなってきました。ビレイしてくれているヨーコさんにいいところを見せられなかったな……とちょっと苦笑いを浮かべながらトップアウト。

フォローのヨーコさんの向こうには、展望台から我々を見上げるギャラリーの姿あり。よく見るとJeonさんは、そのギャラリーたちの記念撮影までも手伝ってあげている様子です。

残置されていたロープやスリング、カラビナ類を滝の下へ滑らせてから、フィックスロープを辿って右岸の懸垂下降ポイントに移動し、下降専用のロープを使って一気に下って、これでクライミング終了です。

楽しかった韓国でのアイスクライミングをこうして締めくくり、三日間お世話になったYunさんとは駐車場で別れて、Jeonさんに金浦空港まで送っていただいて、ここですべてのプログラムを終了しました。Jeonさん、Yunさん、KMGの皆さん、ありがとうございました。単にガイドしていただいただけでなく、親身になっての様々なアドバイスに深く感謝します。정말 감사합니다.

帰りのフライトまで時間のゆとりがあったので、空港内のレストランで軽く祝杯。ヨーコさんもお付き合いいただきありがとうございました。できれば来年もまた、韓国にアイスクライミングをしに来ましょう。その前に無雪期の花崗岩クライミングもいいかも?こちらはヨーコさんの得意科目ですから、今回とは逆に私がビレイ&フォローに回りますよ。