塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

アルーシャ国立公園

2002/01/04

午前4時頃、プーンという蚊の羽音で目が覚めました。うっかり蚊帳を吊らずに寝ていたので蚊取線香の新しいひと巻を取り出し火をつけてから二度寝しましたが、6時には枕許の室内灯がついたので起き上がってコテージの前に出てみると、遠くにキリマンジャロの大きなシルエットが見えていました。

朝の光の中で空の色が青からオレンジへと移り変わるのが面白く、しばらく突っ立ったまま眺めていたら、別のコテージに泊まっていたトモコさんが外に出てきて前方の山に目をとめ、カメラを構えました。写真を撮り終えたトモコさんに「おはようございます」と声を掛けたところ、

ト「おはようございます。あの山、なんていう山ですか?」
私「……キリマンジャロです」(わかってて撮ってたンとちゃうんか!)

トモコさんは顔を赤らめてしまいました。

改めて周囲を眺めるとロッジの背後にはメルー山の岩壁が横に広がっていて、これは裏から見た磐梯山のようでなかなか立派です。しかし山の位置関係を確認しようとコンパスを見てみると、不思議なことに太陽が昇っている位置は真東よりもかなり南に寄っていました。今は夏なんだから太陽は北寄りの位置から出るのではないのか?というのは勘違いで、ここは南半球なので太陽は南ではなく北側を回るのです。同じ理屈で、南半球の山では「北壁」ではなく「南壁」が厳しい課題になるとのこと。嘘か本当かは知りませんが、洗面所で水を溜めて栓を抜くとできる渦巻きまでも北半球と南半球では逆向きになる(コリオリの力?)という話もあるくらいです。

6時半から車に乗って公園内のサファリに出掛けました。小型の鹿のディクディク、貫禄のあるヌー、立派な角のウォーターバックなどが顔を見せてくれましたが、何といってもここでの目玉は優雅に歩くキリンと数えきれないほどのフラミンゴです。硫黄の匂いがするモメラ湖の周囲を回る道に入ると、湖のあちこちにフラミンゴの群れが羽を休めているのが見えました。あるものはピンクのかたまりとなり、あるものは隊列を作って歩き回り、そしてときには一斉に飛び立って我々を驚かせてくれて、実にサービス精神旺盛です。1時間ほどと短いサファリでしたが十分に満足し、最後は緩やかに首を絡め合う2頭のキリンを見ながらロッジに戻りました。

朝食の後に公園を出発し、いったんアルーシャ市街に出てノボテルで小休止。早川TLが現地のツアー会社との手続をしている間に、私はホテルのインターネット・サービスを利用して自分のウェブサイトの掲示板に登頂の第一報を書き込みました。その後はケニアを目指してひた走り、国境では突如配られた長い英文のアンケートに目を白黒させ(タンザニアでどこへ行ったかとか、いくら使ったか、といったことを訊ねていました)、出入国手続を終えてケニア側に入ると今度は怒濤の物売り攻勢に辟易しましたが、それも再び車が走り出すと静かになって、窓の外にはアフリカの大地がどこまでも広がりました。その上の空もまた、どこまでも高い青です。

15時頃にナイロビ郊外のレストランChez L'amiに入り、日本人女性スタッフの出迎えを受けてフランス料理風日本食という変わった昼食をとりました。お米の御飯が久しぶりにおいしく、またうれしいことにお雑煮がついていました。ここから20分ほどで空港に着きチェックインをすませた我々を乗せたエミレーツ航空の飛行機は、18時35分に滑走路を、そしてアフリカを離れ、一路ドバイを目指しました。