塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

グローセ・シャイデック〜シーニゲ・プラッテ

2013/07/25

事実上の最終日。この日はグローセ・シャイデックからフィルスト、バッハアルプゼー、ファウルホルンを経てシーニゲ・プラッテまでのロング縦走に挑むことにしました。手元のハイキングガイドではコースタイムは7時間半ほど、距離ははっきりしませんが15kmは超えているのではないかと思います。

まず、始発のバスでグローセ・シャイデックへ。ここから眺めるアイガーは、下界からの屏風のような姿とは異なり著しく鋭角的です。

最初の目的地となるフィルスト方向の眺め。西の方から雲が近づいているのがわかります。

シュヴァルツホルンを正面に見ながら、フィルストへ続く道を歩き始めました。

またしてもお前たちか……。

諸君は歓迎します。

……などと言っているうちに、空はどんどん暗くなってきました。

タチコマ?

1時間25分の歩きでフィルスト到着。この天気では縦走は無理だなとは思いましたが、せめてバッハアルプゼーまでは行こうと歩き続けました。

ところが、バッハアルプゼーが近づくにつれて青空が再び見えるようになってきました。

穏やかな色合いの花々に癒されながら先を急いで……。

フィルストから40分ほどでバッハアルプゼーに到着。ここには2年前にも来ていますが、何度来ても癒されます。

気合の入った水着姿で果敢に泳ぐ少女たち。

天気が回復してきたので、さらにファウルホルンまで足を延ばすことにしました。

湖の上へと歩みを進めるにつれて……。

空はどんどん青みを増していきます。

雲上の別天地、ファウルホルン。

最後のつづら折れの道を息を切らせながら登って、ホテルの入口に着きました。

ホテルの建物の間をすり抜けるようにして山頂に立つと、ブリエンツ湖の青緑色の湖面が見えました。その手前には2年前にも目にした岩塔が不思議な形で聳えていますが、行きの飛行機の中でビール缶の表に見掛けた絵柄にそっくりなこの岩塔は、後にも興味深く眺めることになります。

山頂からホテルを見下ろすと、その向こうに遠くヴェッターホルンやシュレックホルンが雲をまといながらも力強い姿を見せています。

これはシュヴァルツホルン方向の眺め。左上から右下へと傾いた地層がはっきりと見えている点に注目です。

これから縦走する東の方角の眺め。よく見ると3本の尾根が並行していることが見てとれます。縦走路は、この3本の尾根を左から右へ順番に渡り歩いていくことになります。

楽しそうなホテルのテラス。ここでゆったり食事などしていきたいところですが、後ろ髪を引かれつつ先を急ぎました。

標識によればシーニゲ・プラッテまではあと3時間。頑張ろう。

尾根上にはまだ雪がところどころに残っていました。また、私のようにファウルホルンからシーニゲ・プラッテへ東行する人よりもシーニゲ・プラッテからファウルホルンへと西進する人の方が多いようでした。

やがて、第1の尾根筋から第2の尾根筋への接続点が見えてきました。手前から真っすぐ進むと二つの尾根が接続する鞍部に山小屋が建っており、道はそこから右手前へ戻るように下って中央の尾根の向こう側へ回り込みます。こうして見るとこの3本の尾根は、ファウルホルンの山頂からシュヴァルツホルンを見たときに気付いたように、傾いた地層が表面に出て断層を作っているものであることがわかります。アルプスを作り上げた造山運動の名残りということなのでしょう。

メントレーネン小屋。ハイカーにとっては貴重な補給拠点ですが、ここはスルー。

2本目の尾根の向こう側に回り込むために戻り気味にトラバースする道。その向こうには、ファウルホルン山頂から眺めた特徴的な岩塔が見えています。さらに近づいてみると……。

あの岩塔は、この第2の尾根を形成する地層の一部が突出したものであることがわかります。なるほど。

そして、第2の尾根のすぐ隣には第3の尾根がどこまでも真っすぐ伸びています。

この残雪の横断はちょっと緊張しました。向こう側に見えている家族はつい今しがたこちらから向こうへ渡り終えたばかりですが、よほど怖かったと見えて女の子が泣き出してしまっていました。そして向こうからこちらへ今まさに渡ってきている一団も、そろそろと慎重に進んできています。

第2の尾根の中腹を走っていた縦走路は、やがて右隣の第3の尾根へとなだらかにつながります。

第3の尾根に渡ったところ。この辺りの地形はとてもダイナミックで、見応えがありました。

実は先ほどから先方にシーニゲ・プラッテが見えているのですが、歩けども歩けども近づきません。だんだんうんざりしてきました。

ブリエンツ湖(右)とトゥーン湖(奥)に挟まれたインターラーケンの町の眺めが、かろうじてアクセントとなって足を前に進めさせてくれます。

あと少し、頑張ろう……。

ようやく到達した展望台。シーニゲ・プラッテから上がってきた観光客も多く、下界の匂いがします。

シーニゲ・プラッテのテラス。すっかり日に炙られた身体をアイスキャンディで冷やしました。

テラスの対岸はメンリッヒェンのピーク。その向こうはもちろん、アイガー・メンヒ・ユングフラウの三山です。

シュレックホルンやヴェッターホルンも見えていますが、出発点となったグローセ・シャイデックはわずかに左からの尾根に隠れていました。結局、グローセ・シャイデックからここまで休憩コミで7時間20分かかりました。

最後は少々つらかったもののどうにか天気にも恵まれ、アルプスのダイナミックな地質にも触れることができた充実した山旅を振り返りながら、ケーブルカーで下界=ヴィルダースヴィルへ下ります。このケーブルカーは座席が変わっていて、進行方向に対し直角に向かい合わせで座るようになっており、そうした向かい合わせの座席が1両に6列。それぞれの列ごとに左右に扉が着いていて、この扉は検札のお姉さんが外から鍵を掛ける仕組みになっています。つまり鍵を開けてもらえないと中からは出られない構造なのですが、これ、非常時にはいったいどうするんでしょう?

ホテルでの最後の一夜は、奮発してレストランでディナーとしました。魚介類ブラボー!

▲この日の行程。