塾長の渡航記録

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私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

ブレヴァン湖とCarlaveyron自然保護区

2019/08/09

クライミングは昨日のポワント・ラシュナルで終了ですが、シャモニーでの日程はまだ2日残っています。このうち今日は快晴、明日は雨天の予報であったので、今日1日をハイキングにあてることにしました。

行き先は、前々から気になっていたブレヴァンの南西に広がる台地の上のブレヴァン湖と、その先に設定されているCarlaveyron自然保護区です。

この日は朝からとても良い天気。有効期間の最終日となったマルチパスを使ってブレヴァンまで上がりました。

ブレヴァンの展望台からも見えたこの茫洋とした台地の広がりの中をのんびりと歩いてみよう、というのがこの日のコンセプト。もっとも、その数時間後には「のんびり」だけではすまないということに気付くことになりました。ともあれ、まずはブレヴァンから眼下に広がる穏やかな台地へと緩やかに下っていきます。

向こうに見えるシャモニー針峰群と高さを競うケルン。

小さい池に映る逆さモン・ブラン。

道はよく整備されており、迷う心配はありません。この道をしばらく進んだところで標識を目印に右側に下っていくと……。

この大きなブレヴァン湖に辿り着きました。

透明度は比較的高く、この湖に入って泳ぐ人の姿も見られましたが、先ほどからカランカランとカウベルの音がしていると思ったら、湖の南岸の岩陰に羊たちがぞろぞろと屯していました。

美しいブレヴァン湖と、その周囲で「メエ〜」と蛮声を上げる羊たちの群。そもそもこの羊たちの飼い主はどこにいるんでしょうか?なんだか風光明媚な湖を見に来たのに羊の方が気になってしまって、少々損をしたような気になりながら湖を離れました。

ブレヴァン湖のさらに先に広がるのがCarlaveyron自然保護区です。ブレヴァンと同じ組成ならここは花崗岩の台地であるはずですが、随所に高層湿原が点在しており、その水源が何なのかとても不思議です。

またまた逆さモン・ブラン。

池塘とワタスゲの仲間。右奥に見えているひときわ高い岩峰は、振り返り見たブレヴァンです。

台地の中腹を横断する道を進んでゆくと、清流が音を立てて流れている場所がありました。この水を水筒に汲んでいるハイカーもいましたが、先ほどの羊の群のことを思い起こすとそのまま飲む気にはなれません。

やがて台地の先の方で左の緩やかな稜線に達し、そのすぐ先にあるピークがエギュイエット・デ・ズーシュ(2285m)でした。

今日のプランは、このエギュイエット・デ・ズーシュを到達点として折り返し、ブレヴァン方向に戻って途中から下界へと下るというもの。振り返ればほとんど起伏のない尾根筋が前方へと伸びています。

その尾根筋の最高点にあたるポワント・ド・ラパーズ(2313m)からの360度の眺めは、シャモニーの谷をはさんで対岸にあるモン・ブラン山群がとりわけ見事です。

後は下界へと下るだけ……と思ったのですが、考えてみるとこの標高差(ほぼ1300m)を一気に下るというのはかなりの苦行なのでは?

ブレヴァンに登り返してロープウェイで下るという選択肢もありますが、それもなんだか面白くありません。ここは覚悟を決めて、ベルラシャ小屋の手前からジグザグに下る道に入ることにしました。幸い道はよく整備されているので歩きやすいのですが、それにしても長い……。下り始めてから1時間近くたったところで、斜面にそこだけ広場状に平らになったメルレが見えてきました。もしやあそこからリフトなどが下界へ通じているのではなかろうか?

……という淡い期待は見事に打ち砕かれました。メルレまで車道は通じているものの公共交通機関が下山手段を提供してはおらず、やはり歩き続けるしかなさそうです。近くにあった看板のフランス語をiPhoneのGoogle翻訳アプリで見てみたところ、下半分は素っ頓狂な訳になってしまいましたが、一番上のメレットでは、徒歩で歩きます!というフレーズが、ここではとにかく歩け!という命令形に見えてきました。

最後はガイアンの岩場に降り立ち、その光景を懐かしく眺めてからバスでシャモニーに戻りました。

懐かしいと言えばもう一つ、中心街のハンバーガー屋さんでテイクアウトのハンバーガーが出来上がるのを待っている間にすぐ近くで演奏を始めた夫婦が、2014年に初めてシャモニーに来たときに街頭で演奏をしていた夫婦(そのときはベースを加えて3人編成)でした。彼らも変わらずこうしてシャモニーで演奏を続けているのだなと思うと、うれしいようなしんみりしてしまうような、不思議な気持ちになりました。