習慣

会社の管理者研修として、新交通臨海線(ゆりかもめ)の国際展示場正門駅前にあるTFTビルの会議室で、「7つの習慣」公開3日間コースに参加。9月8日から10日まで、毎日9時半から18時までのプログラム。講師はコヴィー・リーダーシップ・センター・ジャパン会長のジェームス・スキナー氏。

今、巷で大いに話題のコヴィーの「7つの習慣」の名前は知っていましたが、実際にその研修を体験できるとは思っていませんでした。しかし、受講してみるとなかなかに面白かったので、自分の復習も兼ねてそのダイジェストを以下に試みてみました。ただし、3日間の駆け足の研修をさらに要約したものなので、「7つの習慣」の全貌に触れられているわけではありません。

基礎原則

【変化のサイクルとパラダイム転換】

我々が「7つの習慣」を学ぶ目的は、「変化」を実現することにある。我々の周りには、たとえば顧客・従業員・投資家・取引先・銀行等々といった数多くの利害関係者が存在しており、そのニーズに応えることを求めている(このニーズに応えることが「経営」である。)。そのニーズに応えるための変化を実現すること=結果を改善することが、我々の最初の関心事となる。この「結果」とは、ある「行動」によってもたらされるのであるから、「結果」を改善しようとすれば、「行動」を改める必要がある。しかし行動の変化がもたらす結果の変化率は、意外に小さい。その行動を規定する「プロセス」にこそ問題があるケースが大半だからである。そして、そのプロセスを導入する背景にあるものが、「パラダイム」(人が周りの世界を認識し、理解し、解釈するモデル)である。この「パラダイム」はいわば経験によって色づけられたレンズのようなものであり、その転換は、プロセス>行動>結果を劇的に変えるだろう。

説明例:病気の治癒、という結果を求めるとき、中世西欧の神秘主義的パラダイムを用いると、悪魔祓いというプロセスが選択され、祈祷という行動がとられることとなろう。しかし、そこに近代医学のパラダイムが導入されれば、採用されるプロセスも行動も、したがって結果も全く異なるものとなり、その結果は利害関係者=患者やその家族のニーズに応えることができるはずである。

【P/PCバランスと信頼残高】

我々には、「結果を出すこと=目標達成 Performance」と「結果を出す能力を維持し続けること=目標達成能力 Performance Capability」の双方が求められる。金の卵を得ることは「P」であり、金の卵を産むガチョウを上手に養い殖やすことは「PC」である。この「P」と「PC」の二つの要素のバランス=「P/PCバランス」を最適に維持することが重要である。

説明例:日本の医療費は年間23兆円。実に国家予算の1/3に匹敵する額である。しかし、そのうち99.2%が「治療=P」に充てられており、「予防=PC」に振り向けられているのは僅かに0.8%に過ぎない。

組織の持つ一番重要な資源は人間関係である。この人間関係における「PC」は、信頼のレベルによって表すことができるだろう。これを「信頼残高」と呼ぶとき、我々は信頼残高を殖やす(小さな親切・約束を守る・忠実・許す等々)行動を選択すべきだ。

7つの習慣

【7つの習慣の関係】

「7つの習慣」のうち第一から第三までの習慣は、私的成功に係る習慣である。ここで我々は「依存(あなた)」から「自立(私)」のレベルに進むことができる。第四から第六までの習慣は、公的成功に係る習慣である。ここで我々はさらに「自立(私)」から「相互依存(私たち)」へ成長できる。そして第七の習慣は継続的な改善をもたらす。

【第一の習慣:主体性を発揮する】

ある刺激に対して、感情にコントロールされた反応を起こすことを「反応的な行動」と呼び、刺激と反応との間に自分の価値観に沿った反応を選択する自由を行使することを「主体的な行動」と呼ぶ。反応的な行動をとる人は抵抗の少ない道を選択しがちであり、責任を第三者に委ねて問題の解決に至らない。一方、主体的な行動をとる人は自分がコントロールできる範囲(=「影響の輪」)の中で可能な限りの反応を試み、状況を改善しようとする。我々は価値観に基づく「主体的な行動」を選択し、「影響の輪」の拡大に努めることで、過去の延長線ではない将来を選択することができるようになる。

説明例:営業実績が上がらないとき、商品力のなさを嘆くのは「反応的」であり、販売プロセスを改善したり商品改善のアイデアを開発部隊に提供することは「主体的」である。

【第二の習慣:目的を持って始める】

あらゆる創造は、まず「第一の創造=知的創造」(知的な思い、望む結果についての計画)があり、ついで「第二の創造=物的創造」(望む結果を実際に作り出すこと)という順を経る。リーダーシップは前者に関与し、マネジメントは後者に関与するが、ほとんどの企業はマネジメントの多過ぎ、リーダーシップのなさ過ぎであり、これはほとんどの個人にも当てはまる。望む結果を達成したければ、人生の全ての側面において、知的創造をきちんと行うことが求められる。そこで、自分の人生の目的と意味を文書で表現し、これを意志決定や行動選択の土台とすることが望ましい。この文書をミッション・ステートメントという。

演習例:自分の葬儀の場面において、自分の関係者(妻・子・友人・同僚等々)に、どのような弔辞を述べてもらいたいかを考える。このことは、それぞれの関係において自分がどうありたいかを端的に示すものであり、ミッション・ステートメントの素材を提供してくれる。

【第三の習慣:重要事項を優先する】

我々の活動を「重要度」と「緊急度」で分類すると、全ての活動は4つの領域のいずれかに分類される。我々は往々にして緊急性を優先し、「緊急でかつ重要な領域=第一領域」の次には「緊急だが重要ではない領域=第三領域」に集中するが、本当に大切なことは「重要だが緊急ではない領域=第二領域」に集中することである。第二領域の活動に集中することのみが「主体的」に選択することであり、その他の領域は「反応的」な選択の結果である。また実は、第二領域に集中することにより第一領域の活動は減少する(例:「品質管理活動によりクレーム件数を減少させる/健康づくりにより病気を予防する」等)のであり、同時にこれは「PC」を増大させる活動でもある。この第二領域に集中するために、我々は自分の1)ミッションを復習し、2)役割の定義と3)目標の設定を行った上で4)一週間を計画し、その計画に5)忠実に行動した上で、6)評価と反省を加える、という6ステップを履行するべきだ。

【第四の習慣:Win-Winを考える】

効果的かつ長期的な関係を維持しようとすれば、”I win. You win.” すなわち「Win-Win」を考える必要がある。その特長は、相互得を求めること、競争的ではなく協力的であること、コミュニケーションを続け立場を率直に表現すること、であり、その実現は第三案の存在を信じることと、お互いを信頼すること(「信頼残高」が高いこと)にかかっている。これに対して、「Win-Lose」 は他人の犠牲を求める競争的・独裁的なアプローチであり、「Lose-Win」は自分の信念に基づき行動する勇気の欠如を示す。「Win-Win」は一見、理想主義的に響くが、自社と顧客や取引先との関係、自分と家族や友人との関係を想起すれば、決して特殊な状況で現れるものではないことが理解できる。

演習例:4チームがおのおの「X」か「Y」を選択し、披露し合う。そのとき「4X」ならば全チームが-1点、「3X1Y」なら「X」は+1点・「Y」は-3点、「2X2Y」なら「X」は+2点・「Y」は-2点、「1X3Y」なら「X」は+3点・「Y」は-1点、「4Y」なら全チームが+1点である。10ラウンドを行い、途中2回談合の機会が与えられる。また、途中及び最後に点数が数倍になるラウンドが用意されている。自チームはどのような選択を行うべきか。もし、「Win-Win」を実践するならば、選択肢はひとつ。すなわち、全ラウンド、全チームが「Y」を選択することである。しかし実際にはこの点の理解不足や倍率アップの誘惑から「X」と「Y」が乱れ飛ぶことになった。ちなみに、講師のこれまでの経験上全チームが全ラウンド「Y」を出し続けたケースが一度だけある。それは、US Armyを対象とした研修だったそうだ。

【第五の習慣:理解してから理解される】

ほとんどの人は、コミュニケーションにおいてあまり時間をかけずに相手の状況を理解したつもりになり、その状況あるいは問題に関してアドバイスや助言を出してしまう。相手を理解しようと思って聞くのではなく、答えようと思って聞いているのである。しかも、相手の情報を自分の経験のフィルターにかけて解釈し、「私だったら」という接頭辞で助言や評価をしがちである。これを「自叙伝的な反応」と呼ぶが、相手が求めているのは「彼はどうすべきか」ということなのである。好ましいコミュニケーションのためには、相手が伝えようとしている内容と気持ちの双方を、言葉・話し方や声のトーン・ボディランゲージなどの全てを通じて理解し、相手以上に上手に要約してみせることが必要である。これを「感情移入の傾聴」と呼ぶ。

説明例:「学校なんかやめてやる。」と言う息子に対して、多くの父親は瞬時に説得にかかろうとするだろう。しかし息子がなぜ学校をやめたいと言い出したかを真摯に聞き出すことが出来れば、本当は彼も学校を出る必要があると認めながら、ある教科でひどい点がついたために不安になっているのだと理解することができ、その教科の成績を上げるためにどうすればよいかというアドバイスを提供することができるようになるはずである。

【第六の習慣:相乗効果を発揮する】

第四の習慣によって相互得を求めるようになり、第五の習慣によって開かれたコミュニケーションを図るようになると、その上に立って双方のニーズを満たす第三案を探すようになる。相手の相違点を尊び、そこから自分一人だけでは発見できないことを発見するようになれば、シナジーが生み出される。

【第七の習慣:刃を研ぐ】

「肉体」「知性」「精神」「社会・情緒」の4つの側面において、我々は再新再生を図る必要がある。これはすなわち「P/PCバランス」の改善である。これを毎日、少しずつ実践することによって、一生涯続く成長の道に入り、それを歩むことができる。

真のリーダーとなる5つの決定的瞬間

最後に、「7つの習慣」を体得した上で真のリーダーとなる5つの決定的瞬間を解説する。

  1. 中心原則の確立→目的・意味
  2. 深い決意→内的な力
  3. 原則に言葉と行動を合わせる→信頼
  4. 原則からのずれの自己修正→希望
  5. 他人の自己修正を助ける・許す→価値

これら以外に真のリーダーになる方法はなく、これら以外に自分の中心を守る方法はない。そして、これらのいずれも、自分の「影響の輪」の中にある。つまり、自分の主体的な選択にかかっているのである。

……とまあ、こんな感じ。講師のスキナー氏(33歳)は、「超」がつくくらい流暢な日本語とガッツとユーモアで120名強の参加者を掌握し、導いていました。「7つの習慣」に掲げられている原則やパラダイム、プロセスはいずれも納得性のあるものであり、プログラムは極めてよく練られたものでしたが、研修の成否の相当部分がスキナー氏のプレゼンテーション・スキル(の高さ)にかかっていた点も否めません。なぜなら、ここには各人の自覚を促すメッセージは豊富に提供されていても、日々実践するための具体的な手法が(専用手帳があるとは言え)DIPSほどには用意されていないと感じるから。しかし、逆に極めてプラグマティックな色合いをもつDIPSが、知的レベルでの気づきを多く与えてくれながら、本来目標としているとされる「豊かな人生の実現」という企図を必ずしも十分には伝えてくれないのに対して、「7つの習慣」は「よりよく生きる」ということにフォーカスし、情動レベルからのショックを与えてくれます。研修最後の自由発表で、多くの受講者が、仕事以上に家族への思いやりや自身の健康の重要性への気づきを指摘していたのは象徴的でした。