責任

Fly Away」から一夜明けて、ひどい二日酔い。飛翔どころか這うようにして出社し、定時になったら這々の体で帰路に着いたものの、そのまま帰宅するのもなんだなということで喫茶店にこもって読了したのが、こちらの本。国広正弁護士の『修羅場の経営責任』です。

実は10月に社内のコンプライアンス月間のイベントとして国広弁護士の講演があり、そこでパロマのガス瞬間湯沸器一酸化炭素中毒死事件やダスキンの肉まん事件、船場吉兆の産地偽装事件、NHKのインサイダー取引事件などを引き合いにした説得力のある講演に魅了されていたのですが、ちょうど愛読しているブログ『ビジネス法務の部屋』で本書がとりあげられたので、早速購入してみたものです。

本書は、著者が関わった二つの大きなイベント、すなわち山一証券廃業と長銀破綻についてそれぞれの経緯を時系列に沿って説明しており、前者では廃業後の社内調査委員会の活動の様子が、また後者では長銀破綻に伴う東京地検特捜部の国策捜査によって刑事告訴された旧経営陣の弁護活動の模様が、著者自身の体験をもとにいずれもリアルに描かれています。山一証券の社内調査委員会は、同社破綻の原因となった「飛ばし」の実態解明とこれに関わった経営者の責任追及を目的とし、調査の公正確保のために国広弁護士も参画することになったのですが、調査が進むにつれて追及を恐れる経営陣の抵抗も高まる様子は、まさに修羅場にあって経営者がいかに身を処すべきかを反面教師的に示しているようです。一方の長銀破綻に係る訴訟は、長銀破綻の経営責任と粉飾決算という刑事責任とを(公的資金投入を正当化するための)国策捜査の名のもとに故意に混同させた有罪の結論ありきの強引な運び=犯罪の創作が明らかにされて、厚生労働省の村木局長の事件を連想させます。事件は、地裁・高裁では有罪判決が出たものの、最高裁では著者らの主張が通り無罪判決を勝ち得るのですが、著者は終章の「『企業の社会的責任』を果たす『前向きの責任論』」の中で、10年にわたった訴訟のために、長銀の経営者たちから「失敗の真実を語ることにより経営責任を果たす機会」を奪ったことが、この国策としての長銀裁判の重大な禍根であったと述べています。さらに、次の指摘にも大いに傾聴すべきでしょう。

ここで重要なことがある。……消費者、投資家、そして国民といったステークホルダーとそれを代弁する報道機関側にも、「官」に頼らず、自ら継続的に企業を監視していくという姿勢(市民の社会的責任:Citizens’ Social Responsibility)の自覚が必要ということである。ステークホルダーの側が、熱しやすく冷めやすい情緒的な反応から脱却することが、真に有効に機能する「社会的リスク管理」を実現するための条件である。

さて、続いてこの本を読んでみるつもりです。

国広弁護士等は旧経営陣とともに監査法人にも責任ありとの報告をまとめており、実際に山一証券の破産管財人は監査法人を被告とした損害賠償請求訴訟を提起しているのですが、この『命燃やして』は、その訴えられた会計監査人の立場から「なぜ監査法人にも不正が発見できなかったのか」を検討したもの(らしい)です。オリンパスの損失隠しについても監査法人の責任を追及する動きが見えてきているいま、タイムリーな内容になりそう。

ただいま、Amazonからの到着待ちです。