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2009年6月25日の死によって幻に終わったMichael Jacksonのショウのリハーサルの模様を収めた映画「THIS IS IT」を、ユナイテッド・シネマ豊洲で観ました。正直に言えば、MJの音楽には思い入れはほとんどなく、アルバム『Thriller』収録の「Billie Jean」「Beat It」「Thriller」などのMTVを印象深く覚えている程度だったのですが、周囲の評判が非常にいいので久しぶりに映画館に足を運んだというわけです。

映像は、オーディションを経て憧れのMJと同じステージに立つことになった若いダンサーたちの感激の独白を数人続けて映し出し、最後の若者の、人生にとって価値のあること、それがこれだ(This is it.)という言葉からリハーサルのステージへと展開します。そしてそこでは、おそらくはショウの本番で展開するはずだっただろうセットリストに沿って各種の楽曲が次々に歌われ踊られていき、その合間にMJやミュージシャン達のインタビュー、ショウの特殊効果を担う映像の撮影シーン、パイロやゴンドラのデモなどが挿入されて、ショウのメイキングとして充実した内容となっています。

  1. Wanna Be Startin’ Somethin’
  2. Jam
  3. They Don’t Care About Us
  4. Human Nature
  5. Smooth Criminal
  6. The Way You Make Me Feel
  7. Shake Your Body (Down to the Ground)
  8. I Just Can’t Stop Loving You
  9. Thriller
  10. Beat It
  11. Black or White
  12. Earth Song
  13. Billie Jean
  14. Man in the Mirror
  15. This Is It

MJの姿は、50歳であることがまったく信じられないほど颯爽としており、ショウを作り上げていく途中であるだけに歌や踊りはある程度流している様子が見受けられるものの、それでも尋常ではないキレが感じられます。このステージに戻ってくるために、人の目につかないところでMJが自分に課したストイックなトレーニングの成果がこの映像での彼の姿につながっているのは間違いありません。また、MJは単なるシンガー / ダンサーではなく、ショウの全てを掌握し、彼の指示でコントロールしている様子が繰り返し映し出されます。ミュージシャンたちとのリハーサルの中から、曲のアレンジを決め、テンポを指示し、キューを出すきっかけを設定して曲を練り上げていくプロセスは極めて生身のもので、打ち込みを多用しているのだろうと思い込んでいた自分の不明を恥じ入るばかり。さらにMJの指示は演奏だけでなく、ショウの演出全般にわたって具体的で、一つ一つのアクションに意味を持たせ、そのことを周囲に自分の言葉で伝えようとする努力を惜しまない誠実さに心を打たれます。ミュージシャンがMJの意図を理解できておらずタイミングがずれたり、インイヤーモニターが気に入らずいらつくといった場面もありますが、そんなときでもスタッフに指示を出しながら「怒ってないよ。L.O.V.E.」となかば自分に言い聞かせ、自制するMJ。そんな彼の指示にミュージシャンもダンサーもスタッフもリアルタイムに反応して、素晴らしいスピードでショウが完成形へと仕上がっていく様子は、見ていてわくわくするくらいです。

この映画で示されたリハーサル風景だけでも十分に興奮できるのですから、もしこのショウが敢行されていたらどんなことになったのでしょうか。しかし実際には、MJはショウ開幕の三週間前に突然この世を去り、彼の、そして彼の周りに結集した全ての才能の献身的な努力と夢とは、無に帰したのです。そのことが悲しく、泣けてきます。

God bless you.