同志

渋谷のDJ Bar EdgeEndで、プログレナイト “And You and I” に参戦。今回は、いよいよ「回す側」としての参加です。いわゆるプログレッシヴロックというジャンルの音楽を聴いていただこうというのがこのイベントのテーマなのですが、事前に渋谷のアイリッシュ・パブで行ったミーティングでも、あれも聴いてもらえるしこれもかけられる、と次々にアーティストや曲のリストがあがってきます(というのは、該博なrobin☆とHatchのお二人の話で、私は聞いたこともないバンド名が次々に出てくるのに目を見開いているしかなかったのですが)。

そも、プログレッシヴロックとは何か。

……という命題に対する答えは、それこそ星の数ほどあるでしょう。だからこそ、DJ陣が三者三様の選曲でリスナーに自分の解釈の妥当性を問い掛けるこうしたイベントが成り立つわけです。とりあえず私の場合は、

  • 印象的なメロディと意表を突くコード進行
  • リスナーに緊張を強いる機知に富んだリズム
  • これらを支えるプレイヤーの高度な演奏技術

が揃った音楽をプログレ、と呼ぶことにして選曲してみました。つまり、真の意味での「先進性=progressiveness」ではなく、スタイルとしてのプログレです。

■DJイベント <<プログレナイト – and You and I – >>

プログレッシヴロックと定義された音のみで構成されたイベント。王道からニッチまで。クラシカル寄り、ジャズ寄り、メタル寄り、さらには産業寄り、あらゆるアプローチからの選曲。今回は、どちらかというとプログレ入門的な位置づけでお送りする予定。といいながらも、一癖も二癖もある曲も飛び出すかも。(produced and introduced by robin☆)

■日時 2008年2月23日(土) 18:00〜22:00
■会場 渋谷 EdgeEnd
■DJ&順番
18:00 Hatch
18:40 robin☆
19:20 juqcho
20:00 Hatch
20:40 robin☆
21:20 juqcho

練達のDJ、Hatchとrobin☆がロシアやらスウェーデンやらのロックをとりあげた後に、三番手で登場した私のファーストセットは「王道」セットと銘打って、1970年代の保守本流のプログレばかりをとりあげました。ただし、普通プログレの代表的なバンドというとYes / King Crimson / Emerson, Lake & Palmer / Pink Floydの四つが挙げられ、さらにここにGenesisを加えてプログレ五大バンドとする場合がありますが、私の定義からするとサイケバンドであるPink Floydをここで採り上げることには(その革新性は認めるとしても)違和感があるので、リストには加えていません。

以下、曲名 / アーティスト名 / “アルバム名”(発表年)。

And You and I / Yes / “Close to the Edge” (1972年)
ロックの歴史に燦然と輝く金字塔『Close to the Edge』収録、本イベントのテーマ曲を担当させていただきました。Steve Howeの幻想的なアコースティックギターのイントロに続いて、ベースとバスドラ、トライアングルがリズムパターンを刻み始め、ギターのコードの上にMinimoogがいかにも70年代なレゾナンス変化&ポルタメントのきいたフレーズで入ってくると、そこはもうYesの世界。二つのヴォーカルラインが異なる歌詞を歌うコーラスも斬新です。そしてもちろん、メロトロン全開の中間部は感涙にむせぶしかありません。
Fallen Angel / King Crimson / “Red” (1974年)
私にとってのKing Crimsonのラストアルバム『Red』から、John Wettonのヴォーカルが深く美しいこのナンバーは、3拍子と4拍子の間を自在に行き来するリズムが面白い曲です。メタリックなLesPaulのアルペジオと鋭いサックス、徐々に熱を帯びていくドラムも、歌詞の悲痛さを増幅します。ヴァイオリンのDavid Crossはもうここにはいないけれど、それでもバンドの叙情面が最上の形で結晶した楽曲です。
I Know What I Like (In Your Wardrobe) / Genesis / “Selling England by the Pound” (1973年)
Peter Gabriel在籍時のGenesisの曲の中から、つなぎになりそうな比較的軽めのものを選択。しかしそれではGenesisに対してあんまりだ、と思わないでもないので、いずれ機会を得てGenesisの魅力的な楽曲群を紹介したいもの。もっとも、robin☆さんはプログレナイトであろうがなかろうがGenesis系列の曲をかけまくっているので、まあ、そんなに気にしなくてもいいのかもしれません。
Easy Money / King Crimson / “Larks’ Tongues in Aspic” (1973年)
またKing Crimson?しかし私にとって「プログレ」とは67%くらい、イコール King Crimsonなのだから仕方ありません。Robert Frippが全メンバーを新たに選び直して世に問うた『Larks’ Tongues in Aspic』(邦題は『太陽と戦慄』ですが、どう訳したらこうなるのか……)の、インプロヴィゼーションとアレンジとの絶妙なバランスを聴かせる曲。そして最後の笑い袋が強烈!
Pirates / Emerson, Lake & Palmer / “Works, Vol.1” (1977年)
書き忘れていましたが、プログレの要素には「クラシックの影響」、そして「長い」というキーワードもあります。というわけで、掟破りの13分ではありますが、Emerson, Lake & Palmerのクラシカルな魅力が全開となったこの曲。ツアーにもオーケストラを引き連れてこの曲を演奏したそうですが、そのツアーで大赤字を出したことが、バンド崩壊の引き金となったとか。この曲のイントロが流れたときには、そのおどろおどろしい雰囲気にいしこさんたちが「こ、怖い……」とおののいていましたが、Greg Lakeのヴォーカルが入るとがらりと雰囲気が変わります。

本当は「Pirates」の後に「Tarkus」の最後の部分をつなげたかったのですが、残念ながら時間切れ。本番直前に「Siberian Khatru」を「And You and I」に差し替えたために増えた時間をつなぎで吸収しきれませんでした。

1stセットの途中あたりから、私のクライミング仲間Y女史とその同僚の女性、うっちゃまん女史&ありか先生、そしてクライミング仲間デチが来てくれました。後で打上げの席で「塾長さんの女性集客力は凄い!」「これからは塾長じゃなくて将軍様だ(←意味不明)」と褒められましたが、たぶんこれはデビュー戦だからという御祝儀でしょう。さらに、Mickyさんやいしこさんはもちろんのこと、本当に久しぶりにKyonさんに会えたのがうれしかった。追川氏、そしてRUBEN氏も顔を出して下さって、結局20人くらいが来場いただいた勘定。正直、このイベントでこんなに集客できるとは思っていなかったので、うれしい誤算でした。

robin☆さんの感涙ものの「The Lamia」に続く、私の最後のコーナーは「産業」セット。1980年代、音楽機材のデジタル化とともに音楽自体のデジタル化が進み、繊細なゴーストノートは駆逐され、ビートを強調するダンサブルな楽曲が音楽市場を席巻する中で、プログレ不毛の1970年代をひっそりと生き延びた楽曲指向のミュージシャンたちが、時代の流れに逆らうことなくプログレのフォーマットを80年代向けに再構築した音楽です。ここでは、以下の曲を紹介。

Rhythm of Love / Yes / “Big Generator” (1987年)
Trevor Rabinをギタリストに迎えたいわゆる“90125Yes”の、二枚目の作品のオープニングナンバー。プロデューサー主導の音づくり、テクノロジーの恩恵を享受した楽器と録音技術、これらが要求するあくまでもタイトなリズムと言った産業ロックのフォーマットを見事なまでにとりいれています。なお、「rhythm of love」とは文字通りセックスのこと。これも、かつてのYesでは考えられなかったあけすけな表現です。
Awake / Asia / “Aura” (2000年)
Asiaと言えばJohn Wettonなのですが、こちらはPayne-Downes体制のAsiaによる作品。リリースが比較的最近なのでこのセットに入れるべきかどうか迷いましたが、「ルバイヤート」に題材を採ったというこの曲は私の大のお気に入りなので、どうしても皆に聴いてもらいたくてとりあげました。Geoff Downesの美しいシンセサイザーソロや大らかな曲調を楽しんで下さい。このアルバムには、Steve HoweやVinnie Colaiuta、Simon Phillipsなどが参加していて、なかなかの佳品に仕上がっています。
Endless / Toto / “Isolation” (1984年)
ここからしばらく、北米のバンドが続きます。Totoでプログレというと『Hydra』から選ぶべきかもしれませんが、ポリフォニックシンセサイザーを自在に使えるようになったこの頃からが産業ロックの花盛り(David PaichとSteve Porcaroの二人は、YAMAHA DXシリーズのプロモーションにかなり協力していたはず)なので、あえて本線をはずして『Isolation』にしてみました。イントロのシンセサイザーのアルペジオや中間のドラムが印象的。Fergie Frederiksenのヴォーカルワークも素晴らしいものです。ただ、この曲の出だしで操作をミスして、一度音を止めてしまいました。ビールの飲み過ぎ?大反省。
Big Money / Rush / “Power Windows” (1985年)
カナダが誇るスーパートリオRushの、シンセサイザー(とりわけPPG Wave2.3)への傾倒が最も著しい時期を代表する曲。この曲はMTVでも紹介されて、あの複雑なベースリフを弾きながらヴォーカルをとるGeddy Leeを見て「すげー!」「信じられない!」「彼、おかしいんじゃないの?」と思った人も多いはず。ところが実際に弾いてみると、よく考えられた運指のフレーズでメカニカルに弾けるので、なかば無意識化することが可能です。
On the Loose / Saga / “Worlds Apart” (1981年)
Sagaもまた、カナダのプログレッシヴポップグループ。専任のキーボードプレイヤー以外にヴォーカルとベースの二人もキーボードを弾くトリプルキーボード構成で華麗な演奏を披露するバンドですが、このバンドの最大の魅力はむしろMichael Sadlerの力のあるヴォーカルでしょう。そんな彼らがブレイクすることになった、記念碑的な曲がこれ。最近まで現役の活動を続けていたSagaですが、この『Worlds Apart』と続く『Heads or Tales』(1983年)が彼らの最もクリエイティブな時代の記録でしょう。
Surrounded / Dream Theater / “Images and Words” (1992年)
自他ともに認めるRushのフォロワーですが、プログレとメタルを融合して早くから独自の境地に達していたDream Theaterの2ndアルバムから。この曲もJames LaBrieの素晴らしいヴォーカルとJohn Petrucciの伸びやかなギターを堪能できる上に、4拍子+5拍子のリズムパターンが面白く、「Light to dark, dark to light.」と歌うところは歌詞とリズムが一体となった機知に富んだ曲づくりの技巧に感動します。うっちゃまん女史はこの曲がお気に召したようなので、別れ際に『Images and Words』を貸してあげましたが、果たしてアルバム全体を気に入ってくれるでしょうか?
No One Together / Kansas / “Audio-Visions” (1980年)
アメリカンプログレハードというジャンルの代表選手Kansasの、彼らの全盛期を少し過ぎたあたりの作品から。目まぐるしい展開で様々な楽器(キーボードやギター、ヴァイオリンはもとより、ヴァイブまで)がカラフルに絡み合う、いかにもKansasらしい曲。ジャケットのメンバー紹介に “Kansas is still:” と書いて結成以来の結束を誇示していたバンドも、この数年後にはついにメンバーチェンジを繰り返すようになります。Kansasというと「Dust in the Wind」のイメージしかなかったといういしこさんには、この曲やHatchがかけた「Journey From Mariabronn」が新鮮だったそうです。
Caesar’s Palace Blues / U.K. / “Night After Night” (1979年)
大英帝国に戻り、パンクムーヴメント全盛の中でプログレの火を絶やさず80年代に引き継いでくれたU.K.に敬意を表して、彼らの日本でのライブから、Eddie Jobsonのエレクトリックヴァイオリンが華麗に響き渡る「Caesar’s Palace Blues」。Terry Bozzioのドラミングもタイトでかっこいい。イベント終了の挨拶も、John Wettonに「ドーモ!サヨナラ!」と叫んでもらいました。

最後は弦楽四重奏による「Tom Sawyer」をBGMに、お開き。

以上、私にとっては緊張したけれど楽しかった4時間でしたが、それもこれも、来場いただいた皆さんのノリのよさと、ナーバスになっていた私に現場で丁寧に指導してくれたrobin☆・Hatchのお二人のおかげです。ありがとうございました。

さて、来場いただいた皆さんは、知っている曲や気に入った曲はどれくらいあったでしょうか?あるいは、ちょっとラウドに過ぎたかも?ともあれ、感想などどしどしお寄せ下さい。このイベント、第二弾も企画されることになっていますので、どうぞお楽しみに。