合掌

昨年の4月に吉野川水系下多古川で事故死した弘田氏の終焉の地となった琵琶の滝には、遠からず手を合わせに行きたいと昨年から計画していたのですが、今回、大阪在住の山友・T女史の助力をいただいて実現しました。

金曜日の夜に新宿を発った高速バスが奈良県に着いた土曜日の早朝は、前線の南下に伴い奈良県のほぼ全域で激しい雷雨。当初の計画ではこの日から翌日にかけて大台ヶ原の堂倉谷を沢中一泊で遡行した後、帰りの途中で下多古川に立ち寄ることにしていたのですが、T女史の提案で予定を変更し、堂倉谷遡行は日曜日ワンデイにして、大台ヶ原に向かう途中で琵琶の滝に足を向けることにしました。

T女史の車で下多古川沿いの林道の終点にある広場まで入り、そこから山道へ。道は傘をさしても歩けるくらいによく整備されていますが、すぐ隣を流れる濁流の荒々しさには少々怯みます。

T女史の先導で早足に歩くこと20分、吊り橋を右岸に渡った後に山肌が崩れてフィックスロープの世話になるセクションもありましたが、そこを越えたすぐ先に東屋があって、ここが滝見台になっていました。

これはすごい……といっても写真ではそのスケールがわかりにくいですが、落差50メートルの二段の滝に、雨のために増水した川の水が一気になだれ落ちている様子は圧倒的です。

さらに近づくために、右岸の斜面の踏み跡を辿りました。こちらは整備された登山道ではなく、山靴が必要な領域です。

滝壺の近くから見上げた琵琶の滝。こうして見るとこの滝に取り付くことはとても考えられませんが、ふだんの水量ならもっと穏やかなのでしょう。実際、T女史もこの滝を「登れる」と思って取り付いたことがあるそうですが、一段上がった先から困難度が増し、しかもぬめりがひどくて引き返すのもひやひやだったそう。弘田氏も琵琶の滝を見上げて「登れる」と思い、吸い込まれるように登ってしまったのでしょうか?しかし、昨年5月にやはりこの滝を登っている大阪わらじの会の記録を見ても、とてもソロで行ける滝とは思えません。

ともあれ、滝壺から吹き付ける暴風と水飛沫の中で手を合わせて黙祷し、故人の冥福を祈りました。