労店

東陽町の江東区文化センターの講座『初めての能の世界』の第五回目「本物に触れる能【能楽囃子のワークショップ】」。講師は、森田流笛方の寺井宏明先生とその娘さん(小学生)です。

ワークショップとうたっている通り能楽囃子を体験してみようということで、和室に持ち込まれた能管・小鼓・大鼓・太鼓に実際に触れ、音を出してみます。私はまず小鼓を打ってみましたが、決まればそれなりの音は出るものの、安定して強い音を出すことはとてもできません。また、能管(笛)も吹いてみましたが、音を出すのは至難の業。そして、女先生の指導はなかなか厳しいものです。もちろん、最初に「よろしくお願いいたします」、終わったら「ありがとうございました」の挨拶も欠かしません。

ちなみに、寺井先生ご自身が腰に差し、吹いて下さった能管は「獅王」という銘があり、桃山時代から伝わるものなのだとか。先生曰く「お道具(楽器)は、使い続けて定期的にメンテナンスしなければダメ。美術品としてしまい込まれたり海外に流出したものがたくさんあるが、本当にもったいない」。

さて、その「お道具」の中でも、最もつらく、かつ音を出しにくいのはたぶん大鼓でしょう。極めて硬質な高い音が出る鼓ですが、素人はまともな打音を出すことすらできませんし、打つと非常に手が痛いもの。大鼓を打ってみた男性がすぐに手を痛くして顔をしかめながら「これはたいへんだ!」と言っていましたが、先生の解説によれば、音を出す秘密は手を堅い枠に当て、そこを支点に指先を鼓の中心に当てる打ち方なのだとか。こうして書くとうまく伝わりませんが、要するにオープン・リムショットのことですね。

ひとしきり指導を終えた後で、寺井先生と女先生とが何やら業界用語で短い打合せ。ほんの二言三言で話が通じて……というわけにはさすがにいかなくて、女先生が「えっ、それどういう意味?」などと確認してから、寺井先生が小鼓、女先生が笛で模範演奏を見せて下さいました。

講座はこれで、全て終了。面白く、ためになる講座でした。やはりこうした鑑賞ものは、舞台の上にいる人たちが何を考え、どこに苦労しながらパフォーマンスを展開しているのかを知ると、面白みが倍増しますね。洋楽であれば自分も楽器をかじっているので仕どころ・聴きどころがわかるのに対し、伝統芸能系は習ったことがないので、とにかく鑑賞回数を増やしていくしかないかなと考えていたのですが、今回の経験を活かして、これからはこうした講座ものにも積極的に参加してみようと思いました。本当は先生について仕舞や謡を習いたいところでもあるのですが、ただでさえ「拷問芸能」と言われる世界。正座ができない今の自分には、ちょっと敷居が高そうです。