僕ら

能評家・金子直樹氏『僕らの能・狂言 13人に聞く!これまで・これから』を読了。

前書きに書かれている通り、能楽師の中で「次の時代を担っていく世代」の13人をとりあげ、それぞれ数時間のインタビューを行って、その生い立ちから能楽に取り組む考え方、今後への抱負などを聞き出していますが、次代と言いつつ50歳台も普通に含まれるところがやはり能楽です。

登場する能楽師は、次の通り。

  • シテ方
    • 観世流 片山九郎右衛門
    • 観世流 鵜澤光
    • 宝生流 宝生和英
    • 金春流 中村昌弘
    • 金剛流 金剛龍謹
    • 喜多流 友枝雄人
  • ワキ方
    • 宝生流 宝生欣哉
  • 狂言方
    • 大蔵流 山本則重
    • 和泉流 野村又三郎
  • 囃子方
    • 笛方森田流 杉信太朗
    • 小鼓方幸流 成田達志
    • 大鼓方高安流 安福光雄
    • 大鼓方観世流 観世元伯

自分の中で注目している中村昌弘師が取り上げられているのがポイント高く、他の登場人物もそれぞれに興味の湧く人選になっていて、読み始めたら最後のページに達するまでがあっという間でした。

全体を通して通奏低音のように共鳴しているのが、自らの芸をどこまでも高めようとする強い意思の力と、これとは裏腹に先細り傾向が見られる能楽のこれからに対する不安、そして、そうした状況を打破しようとする積極的な取組み姿勢です。それぞれに自分の会や同世代同士協力しての企画を立ち上げ、演劇寄りの「わかりやすい」能を安易に見せることなくファンの裾野を広げようとするその努力。今後はこうした能楽師自身がプロデュースする会に積極的に足を運ぼうと思いました。

そうした中で、ある意味最も尖った発言をしていたのが鵜澤光師です。女性の能楽師(「女流能楽師」ではない点に留意)としてさまざまな偏見にさらされ苦労もしてきただろうと思いますが、その点について鵜澤師は次のように述べています。

持って生まれたものは持って生まれたものとして、それを人間の根っこ、根源にあるところまで、緻密に練られた状態に持っていくという作業を一生かけてやっているのだと思います。そこしか私にはもう突破口がないと思いますし、そこを目指さないで、何を目指すんだかわからないし、それ目指さないんだったら、もはや男だって女だって関係なく、この仕事をする意味なんてないと思うんですね。

この覚悟の深さ!そして『風姿花伝』の「年来稽古条条」を引いて一生かけて能に取り組む気迫を示した後に放った次の言葉には、ノックアウトされました。

私を断じるなら死んだ後にしてくれと思うんです。

ここまでの強靭な表現ではないにせよ、残る12人もまたそれぞれに一生の仕事として能楽と向き合う姿勢を語っているその肉声を記録した本書は、自分の観能の姿勢に新しい何ものかを付け加えてくれたようです。