一風

セルリアン能楽堂へ向かう途中の歩道橋からの眺め。渋谷駅とその周辺の再開発のために、この一角が更地になってしまっています。

ここに何があったかと思い出してみると、楽器屋さんにも世話になったしスポーツ用品店にも世話になりましたが、一番懐かしいのは、高校生の頃にせっせと通ってはカセットテープをまとめ買いした「一風堂」です。

中学生から高校生の頃にかけて、お互いに仕入れた洋楽の知識を交換し合うのは、レコードではなくカセットテープを通じてでした。King Crimsonの『Larks’ Tongues in Aspic』を聴いて衝撃を受けたのも、Yesの『Close to the Edge』の洗練された演奏に聞き惚れたのも、いずれも友人から借りたカセットテープと小遣いをはたいて買ったラジカセによるものです。

その頃は著作権の発想はまったくありませんでしたから、誰それはYes、誰それはKansas……といった感じで友人同士それぞれに担当バンドを決め、新しいレコードが出るとそのバンドの担当が買ったレコードをカセットテープにダビングしてもらうことで、手元の音楽ライブラリーを少しずつ増やしていました。しかし、いくらお金がないといってもカセットテープは自前で用意しなければなりません。FMラジオのエアチェックも含めると毎月相当数のカセットテープが必要となり、そのためにカセットテープが相対的に安く売られている「一風堂」は我々音楽少年(当時)にとってはなくてはならない存在だったのです。

今では楽曲はデータとしてダウンロードするのが当たり前になってしまい、お金にも多少のゆとりができましたが、かつてNHK-FMの渋谷陽一の番組でかかったKing Crimsonのアムステルダム・コンセルトヘボウでのライブ(BBCのアナウンサーによるアナウンス入り)を録音したテープを宝物のように大切にしていたあの時代も、同じ頃のいろいろな思い出と共に懐かしく、貴重なものとして思い出されます。