広河原沢左俣見晴らしルンゼ

日程:2019/01/06

概要:広河原沢左俣の見晴らしルンゼを前夜発ワンデイで。

山頂:---

同行:ヨーコさん

山行寸描

▲奥の二つの滝。今回はまず奥から数えて二つ目の滝を登った。(2019/01/06撮影)
▲続いて本流筋の一番手前の2段滝。上の滝は水氷になっていて水滴が常時垂れている状態だった。(2019/01/06撮影)

昨年末の最後の山行もヨーコさんと広河原沢でしたが、新年最初の山行も同じパターン。前回は右俣のクリスマスルンゼだったのに対し、今回は左俣の見晴らしルンゼです。ここは昨年何度も通ったところなので勝手は十分わかっていますが、年が明けても南岸低気圧が到来していない寡雪の中でこのルンゼがどういう状態になっているかを見てみたいという興味がありました。

2019/01/06

△06:55 舟山十字路 → △08:00 二俣 → △08:25-50 左俣F1手前 → △09:05 見晴らしルンゼ出合 → △09:35-14:55 見晴らしルンゼ三俣 → △15:25 見晴らしルンゼ出合 → △15:40-16:00 左俣F1手前 → △16:15 二俣 → △17:00 舟山十字路

これまた前回同様、前夜のうちに美濃戸口に入って八ヶ岳山荘の仮眠室で十分な睡眠をとり、明るくなってから舟山十字路へ移動して歩き始めました。この日も舟山十字路の駐車スペースは大賑わいでしたが、幸い1台分の空きスペースが残されていました。

二俣のテントスペースは相変わらず雪が少なく、あろうことか焚火の跡が。

左俣を少し進むとすぐにF1。事前の情報では釜が凍っておらず巻く必要ありとのことでしたが、この日は見事に凍っていました。この手前でギアを身につけ、ストックはデポしてから遡行を開始します。F1の小滝の先もナメ氷が続いており、大変良い状態でした。

見晴らしルンゼの入り口の滝もばっちり凍っており、さらにルンゼを奥に進むと雪が深ければ左岸に逃げるミニゴルジュの先もそのまま氷床がつながっていました。そしてそのすぐ先に「氷のテーマパーク」でも呼びたくなる氷瀑群が見えてきます。

左岸からの支流を合わせてここからは五つの滝が至近距離内に並ぶのですが、この日は(3)のみ未発達で登れない状態。しかし他の滝はいずれも友好的な雰囲気を漂わせていました。(1)の滝の下でリュックサックを置き登攀態勢に入った上で、(4)→(2)の順に登り、さらにゆとりがあれば(1)を登ってみようとヨーコさんと申し合わせました。

リュックサックをデポした分岐点から(4)の滝の下までは緩やかなナメ氷になっており、ここを各自フリーでザクザクと登ります。傾斜は緩やかでまったく易しいのですが、万一足を滑らせるとそれなりの距離を落ちることになるので油断はできません。

(4)の滝の下に着き、スクリューで確保支点を作ってまずはヨーコさんのリード。目の前には出だし1mの急傾斜の先に45度くらいのナメ、そして2mほどの垂壁があって、落ち口の向こうにルンゼが続いている様子です。ヨーコさんは今シーズン初めてのアイスでのリードで、そのためランナーをとるときにZクリップになりかけるなど若干の戸惑いが見られましたが、落ち口直下の垂壁部分は大胆に足を開いて安定した態勢を作るなど危なげがありませんでした。さすがです。

落ち口の先、50mロープが残り10mを切ったあたりでルンゼの奥の立った氷瀑にスクリューで支点を作ったヨーコさんにビレイされて私も後続。この立った滝は私のリードとなりました。高さは5mくらいで凹凸も豊富であったためさほどの困難は感じませんが、落ち口の氷が狭く・薄くなっていて少し緊張しました。

落ち口周辺には適当な灌木がなく、傾斜が緩んだルンゼを10m進んだ先の灌木にスリングを回してヨーコさんを迎え、ここから懸垂下降を重ねて次の(2)の滝を目指します。

(2)の滝は2段になっていますが、下の滝は中央部が水を滴らせている状態ではあるものの、その左壁はいい感じに凍っています。さらに左端を登ればアックスを使う必要もないくらいに雪が付いていますが、ここはせっかくなので再びヨーコさんのリード。

……と言っても立った部分は2m程度で、そこから傾斜の落ちたナメ氷〜雪をつないで上の滝の下へ。ここはお互いにリードすることにして、まずは私から登りました。こちらの滝は全面的に水が滴るシャバシャバの状態でしたが、真ん中の凹角から上半分は右寄りを選べばそれなりの氷が楽しめます。

落ち口まで登った私が右岸の灌木を使ってロワーダウンで戻ったあと、今度はヨーコさんのリード。もちろんこちらも何ら問題なく上まで抜けましたが、右岸の灌木から下降しながらスクリューやクイックドローを回収するのはラインが外れ過ぎていて無理なので、私もフォローで登りながらこれらを回収し、灌木から懸垂下降することにしました。

50mロープを2本つないで懸垂下降すると2段滝の下段の裾まで一気に下ることができ、そこからは歩いてデポ地点まで下ることができました。(1)の滝にも食指が動きましたが、実は既にいい時間。行動食をとって、ここから下山を開始することにしました。結局この日、見晴らしルンゼの中では誰一人会うことがなく、自分たちのペースでじっくりと氷を登ることができてラッキーでした。

途中のミニゴルジュは例によって左岸から懸垂下降し、さらに出だしの滝は以前懸垂下降で使っていた木が折れていたので岩にロープを回して下りました。左俣のF1をクライムダウンしたところで装備を解き、デポしていたストックを回収すると、後はのんびり歩くだけ。舟山十字路に近づいたところでは文字通り燃えるような夕焼けを見ることもできて、気分の良い帰還となりました。

この日の山行は、以下の新兵器のテストを兼ねていました。

左の緑色のスクリューは、Black Diamond Ultralight Ice Screw。スチールチップにアルミシャフトを組み合わせて軽量化が図られたもので、実際に手にしてみるとExpress Ice Screwに対してはっきりと軽さを感じます。また、軽さでは双璧をなすPetzl Laser Speed Lightが苦手とする水氷にもしっかり刺さってくれるのが高ポイントで、これは私のメインアイテムとなりそう。ただ、ハンドル部の穴の大きさのせいかクリッパーから外す動作がちょっとやりにくい感じ。慣れの問題かもしれません。

また右の白っぽい袋は、Quechua Ultralight - 10L。この小さい袋の中からリュックサックの本体を引き出せるようになっていて、テルモス、行動食、そしてヘッドランプなどが入った小袋が余裕で入り、しかもクライミングの邪魔になりませんでした。さらに特筆すべきは、¥290という超価格破壊的な(というより値付けを間違えているとしか思えない)そのお値段です。これはいい買い物をしたかも。