日原川川苔谷逆川

日程:2018/08/19

概要:川乗橋から川苔谷沿いの林道を30分で逆川に入渓。ウスバ林道を越えた先で左俣に入り、そのまま川苔山に登頂後、百尋ノ滝を見物してから川乗橋へ下山。

山頂:川苔山 1363m

同行:かみちゃん

山行寸描

▲ウスバ林道下の10m滝。かみちゃんリードで楽々突破。(2018/08/19撮影)
▲今回の遡行の主目的となるウスバ林道の先の25m滝。水流の右側から問題なく登れる。(2018/08/19撮影)

◎本稿での地名の同定は主に『東京起点 沢登りルート120』(山と溪谷社 2010年)の記述を参照しています。

4月のエベレスト街道トレッキングで友達になったかみちゃんと「帰国したら沢登りにご一緒しましょう」という話をしていたものの、日程が合わなかったり天気が悪かったりで、やっと実現したのはお盆も過ぎたこの時期。行き先は、ワンデイで行けてイベント的な小滝も多い逆川をチョイスしました。私自身はこの沢にこれまで2007年2013年の二度入っていますが、いずれも上流で沢を横断するウスバ林道で遡行を打ち切っており、その先にあるこの沢最大の25m滝を登っていないので、この機会に完全遡行してみようというもくろみもあります。

2018/08/19

△07:40 川乗橋 → △08:05-25 カーブミラー → △08:35 逆川出合 → △11:30-55 ウスバ林道下の10m滝 → △12:45-13:10 左俣の25m大滝 → △14:20-45 川苔山 → △15:45-55 百尋ノ滝 → △17:00 川乗橋

始発電車でそれぞれ自宅を出て、奥多摩駅7時20分集合。ほとんど間髪入れずに出発するバスに乗って、川乗橋で下車しました。

過去には降り口を間違えたこともありましたが、今回はGPSで現在地を確認しながら歩いたのでばっちり。実際に目印のカーブミラーに着いてみたら間違えようがないほどはっきりしたカーブで、沢に降りる踏み跡も明瞭でした。ここで遡行の支度を整えて、かみちゃんを先頭に斜面を下ります。

降り着いた場所から少し上流に進んで、左岸から入ってくる逆川に入りましたが、ここまででも膝上から腰まで水に浸かっての遡行になりました。水量が多いのかな?と思いながら先に進むと、最初のハイライトとなる2段滝は豊富な水量・水圧で威圧的。しかしかみちゃんはクライミング能力十分なので、ここはロープを出さずにお互いフリーで上がります。上の滝の壁を回り込むところは脆い岩を丁寧に踏んでトラバースし、最後の落ち口もカチガバをとらえられれば不安はありません。

うなぎの寝床のようなミニミニゴルジュの先のミニ滝は毎度意外に奮闘的になるのですが、今回は頭からもろかぶりに水をかぶって、大変ですが楽しいところ。しかしこれで身体が冷えてしまい、しばらく進んだ先で休憩したときにはかみちゃんの唇が紫色になっていました。今年の夏は酷暑だから沢登りがうれしいのに、この週末に限って9月並みの気温の低さで、涼をとろうという当初のもくろみは完全に崩れてしまっています。

2人とも上に1枚羽織って遡行再開。相変わらず釜やらゴルジュやらちょっとテクニカルな小滝やらが続いて、前菜段階で既にお腹いっぱいという感じになってきました。この沢、こんなに盛りだくさんだったかな?

この沢のいくつかあるポイントの一つ、トイ状3段10m滝と、続く釜を持つ4m滝。かみちゃんはステミングがなぜか苦手のようで、後からこの動画を見て「めちゃもじもじしてる〜恥ずかし〜」と感想を漏らしていました。

すぐ上に出てくるのが、それまでの小滝とは異質の存在感を持つウスバ林道下の10m滝です。ここでこの日初めてロープを出しました。ステミングは嫌いでもフェース登りなら任せろ!とばかりにリードを買って出るかみちゃん。途中のテラスの残置ピンにランナーを一つとっただけでさくっと登ってしまいました。ここは出だしがヌメっていることが多いのですが、今シーズンは人を多く迎えているのか、フォローしてみるとヌメりもあまりなく、滝の状態としては良好だったようです。なお、水音でお互いのコールはまったく聞こえないのでホイッスルは必携。この点でも、初手合わせながらコミュニケーションはうまくいきました。

滝の上では、ウスバ林道の朽ちかけた木の橋が沢を横断しています。時刻は正午前、いよいよ未体験ゾーンに突入です。ウスバ林道から上流に進むと倒木で沢が荒れた感じで、この上に大滝があると知っていなければあまり遡行意欲が湧かない渓相です。

橋から少し上流に進み、かすかに日が当たるところで小休止して、かみちゃん手製の赤飯おにぎりをいただきました。すこぶる美味。

最初に出てきた8m滝はぱっと見「おっ?」と思うほど立派ですが、近づいてみれば水流の右側が階段状。そしてそのすぐ先に顕著な二俣があり、これを左俣に入ってすぐの前衛の多段滝を越えた先に、目指す25m大滝が出てきました。この滝、遠目には「どこを登るのか?」という感じがするほど威圧的ですが、真下に立ってみればラインは明瞭。ずっと水流の右端を登るコースが簡便で、中段のテラスの上に残置スリングも見えています。出だしがちょっと立っていますが、凹凸は豊富なので、ホールドを壊さないように丁寧に体重を移動させていけば容易そうです。

ここはありがたく私がリード。再びロープを結んでかみちゃんにビレイしてもらい、オブザベーションした通りの右手直上ラインをじっくりした足置きで登って1段目のレッジに立ったら、右壁のクラックにリンクカム(緑)で最初のランナーをとりました。ついで水流寄りに斜上していくと、下から見えていた残置スリングよりずっと手前にハーケンが打たれており、ここにスリングを通して二つ目のランナー。さらに進んで残置スリングに三つ目のランナーをとってしまえばもう危険はありません。

問題は落ち口を抜けた後の確保支点で、安定した位置で後続を迎えようと思うとそこそこ進まなければなりません。実は、そういうこともあろうかと今回は40mロープを持参していたのですが、それでも私がセルフビレイをとれた位置ではほぼロープいっぱいになっていました。

滝はこれでおしまいで、後はひたすら沢筋を山頂に向けて詰めていくことになります。倒木、ガレ、そして落ち葉のラッセル。最後は滑りやすい斜面をだましだまし登って、滝から1時間余りで登山道に出ることができました。沢筋をそのまま詰めるか、あるいはその右手の尾根に乗れば川苔山の山頂にダイレクトに突き上げられたはずですが、早く安定した地面を踏みたいという気持ちが勝ってエスケープした先は、てっぺんまで10分の位置でした。

よく踏まれた道を登って、すぐに川苔山の頂に到着しました。逆川が3度目であったように、この川苔山に登るのも3度目ですが、最初も2度目も1986年のこと。つまり、前回この山頂に立ったのは今から32年前ということになります。ともあれ、山頂でかみちゃんとがっちり握手し、沢装備を解いてしばし休憩。下りは鳩ノ巣駅まで歩いてもいいのですが、かみちゃんが百尋ノ滝を見たことがないということなので、滝に立ち寄ることにしました。

山頂から急降下とトラバースの道を1時間で、名瀑・百尋ノ滝に到着しました。この滝は何度見ても立派です。ところが、ここでマイナスイオンに包まれながらリュックサックから沢靴を取り出し、しゃがみこんでフェルトに付いた土を洗い落としていると、都会風な若いカップルが下からやってきました。そして泥臭い作業にいそしむ我々を尻目に、男子の方は上半身はだかになり釜にダイブして滝行を始め、女子の方はきゃーきゃー言いながらその姿をスマホで撮影しています。その「私たち、ラブラブ!(はあと)」オーラに少々イラっとしながらかみちゃんを見ると、「……若いですね」と感想を漏らすかみちゃんの目も笑っていませんでした(たぶん)。

久しぶりの逆川は、予定外の涼しさに見舞われて少々つらい面もありましたが、滝登りの面白さは相変わらず。さらにようやく最上流の25m大滝を登れて、宿題を一つ片付けた気持ちです。付き合ってくれたかみちゃんに感謝!かみちゃん、また次の機会もよろしくお願いします。