塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

叶津川赤崩沢(敗退)

日程:2018/06/02-03

概要:国道289号のゲートから浅草岳入叶津登山口を経て木ノ根沢の先から叶津川に入渓。途中から赤崩沢に入り、その上流部から尾根を越えて叶津川本流を下る予定だったが、途中で雪渓に阻まれ引入沢出合に幕営。翌日、往路を戻る。

山頂:---

同行:ルーリー / ノダ氏

山行寸描

▲赤崩沢の途中で出てきた雪渓。一応その上に乗って先を眺めてみたが、沢は完全に埋まっていた。(2018/06/02撮影)
▲この日の戦利品。ウルイ、コゴミ、ウド、コシアブラ、フキノトウ、タラの芽、イワナ。(2018/06/02撮影)

昨年、苗場山近くの清津川サゴイ沢でご一緒したルーリー・ノダ氏ペアと、今回は会越国境・浅草岳の東面(会津側)を流れる叶津川に向かうことにしました。予定では叶津川の途中から支流の赤崩沢に入り、これを詰めた後に尾根を越えて叶津川に入り、これを下って起点に戻ることとしていましたが、雪渓の存在が懸念されるこの時期にあえてここに入る目的はもちろん、春ならではの山の幸をいただくことです。この時期の参考記録を探してみると案の定、雪渓のために途中から引き返している2015年6月の記録もあったので、状況次第で我々も適宜判断しようと気楽な気持ちで現地に向かいました。

2018/06/02

△07:15 国道289号ゲート → △07:30 浅草岳入叶津登山口 → △09:40 入渓点 → △10:15 赤崩沢出合 → △11:20-12:00 引入沢出合 → △12:25-35 残雪偵察 → △12:55 引入沢出合

只見線只見駅前の駐車場を出発して少し北に向かってから、西へ向かう国道289号に入りました。期待としては浅草岳の入叶津登山口まで車で入り、そこから歩き出すというものでしたが、途中にゲートがあって登山口までは入れませんでした。

身繕いをして、すぐに出発。登山口までは1km余りでしたが、途中これといって悪路もなかったので、なぜゲートを登山口よりも手前に設置したのかは謎です。

登山口の先にあった、工事概要を説明する看板。この国道289号は、古くから越後と会津との間の交易路として使われ、北越戊辰戦争では河井継之助が長岡から会津へ撤退した道としても知られる八十里街道をベースとしたものですが、分水嶺を越える19.1kmの区間は登山道状態で自動車が通れないままになっていました。この工事はトンネルを多用してより直線的なルートを通そうとするもので、事業化されたのは1986年ですが、もともと難所である上に年の半分は雪のために工事ができないという条件の悪さから、全線開通にはまだ相当の年数を要することが見込まれています。

そんなわけで一般車両はもちろん走っていないのですが、工事車両や地元民の車はときどき我々を追い越したりすれ違ったりします。特に長い叶津第二トンネル(全長566.5m)では、暗闇のトンネルの奥から地獄の釜の蓋が開いたときのような音が響いてきて大いにびびったのですが、その正体もまた工事車両でした。

この道はまだ供用されていないのでGPSデータにも反映されておらず、その強引なまでに直線的な道筋に半ば呆れながらひたすら歩き続け、先ほどの叶津第二トンネルを過ぎて木ノ根沢橋を渡った先にある第21号トンネル(入り口はスノーシェッド)から、右手の叶津川に向かって下りました。つる草に足をとられて歩きにくい斜面を適当に下ると、やがて小さい沢に出て、これを少し下ったところから叶津川に入渓です。

叶津川は穏やかな河原状の歩きが続き、両岸の地形を見ながら適当に渡渉を繰り返して進みますが、水はせいぜい膝程度まで。途中ではカモシカの子供にも出会ったりして楽しいところですが、そのカモシカが立っているところは残雪の上。渡渉するときに水温をかなり低く感じるところからしても、どうやら予想した通り、上流には雪が待っているようです。

赤崩沢出合は明瞭な二俣になっており、ここを右へ入ったところで、ルーリーとノダ氏は竿を出しました。電光石火!あっという間にイワナを2尾釣り上げるノダ氏の早業には恐れ入りましたが、ルーリーの方はなかなか釣果が上がりません。がんばれ!

そうこうしているうちに、大規模な残雪の崩落が沢を埋めている場所に着きました。沢の水は雪の下を流れてきていますが、その隙間はとてもくぐれるような高さではありません。

しかし、試みに雪の上に乗ってみると50mほど先で沢は再び顔を出しており、そこまで問題なく雪の上を歩いて行けました。

すぐ先が引入沢との出合で、その手前の淵でノダ氏を待ちながらルーリーは再トライ。目の前を悠然と泳ぐイワナに向けて竿を入れたルーリーは、ついに型の良いイワナをゲットして満面の笑みになりました。一方、ずいぶんたってからやってきたノダ氏は、釣り上げた魚を入れていたビニール袋に穴が開いていたために1尾を逃してしまった、と嘆いていましたが、ここまででノダ氏が3尾、ルーリーが1尾を今夜のおかずとして確保しています。

引入沢を右に分けて左へ赤崩沢を詰めていくと、少し先の大きく右に曲がるあたりにまたしても沢を埋める雪渓の末端が見えてきました。しかし、これは先ほどの雪崩のようなものとは異なり、廊下状になった沢筋に自然に残っている残雪であるようです。

試みに上流を偵察してみましたが、うーん、これは……。協議の上、今回の遡行はここで打ち切ることになりました。事前に参照していた記録とまったく同じところで残雪に阻まれたということは、やはり今回の計画は時期的に少々無理があったようです。山菜山行と割り切るならこれでもよいのですが、予定通りに周回しようとするなら、秋に紅葉ときのこを狙って入るのがベターなのかもしれません。

引入沢出合のわずかに下流側に幕営に適した河岸段丘があるのは先ほど見ていたので、そこまで戻ってテントを張りました。薪を集めて焚火の準備をし、戦利品を並べて記念撮影をしたらまずは乾杯です。しかし、まだ14時そこそこなんですが、こんな時刻から飲んでいていいのでしょうか?

実は、戦利品はイワナだけではありません。ここまでの道すがらゲットしてきた各種山菜が、和え物になったり天ぷらになったりして次々に振る舞われました。いずれも美味!特にタラの芽の天ぷらは絶品です。

もちろんイワナの皆さんも、こういう姿になって遠火で焼かれています。イワナが焼きあがるまでの間に、お酒はビール類から日本酒、そしてウイスキーへと移り変わりました。

無念であろうが、成仏いたせ……。

ようやく長かった昼が終わり、19時半に就寝。美味この上ない料理と大量のお酒とですっかりいい気持ちになっていた私は、シュラフに入るとあっという間に爆睡してしまいました。

2018/06/03

△07:15 引入沢出合 → △07:40 赤崩沢出合 → △07:55 入渓点 → △09:45 浅草岳入叶津登山口 → △10:00 国道289号ゲート

この日は来た道を下るだけなので、のんびり5時半に起床です。

おもむろに火を熾してお茶を飲んでから各自持参の朝食ですが、火を大きくしたいノダ氏は昨日の天ぷらの残り油を薪にかけ、期待通りの炎を見て一人悦に入っています。

ノ「フッフッフッ」
ル「そんな卑怯な手を使って燃やしてうれしいんですか?」
ノ「うれしいねぇ」
私「……」

さて、焚火の後始末をしっかりして帰ろうか。

昨日は沢の水の濁りが気になりましたが、それは高い気温で雪が溶けたことによるものだったようです。この朝はまだ雪が溶けだしておらず、水は透明度を取り戻していました。例の雪が沢を覆ったところも問題なく通過できましたが、その前後は冷気が漂って薄い朝靄を作っていました。

この日は釣りも山菜採取もせずに沢を下ってきたため、幕営地点からわずか40分で入渓点にあたる小沢に着いてしまいました。

この小沢の周辺にも各種山菜がわんさか生えており、ノダ氏とルーリーは嬉々として山菜採りに勤しんでいましたが、小沢の行く手にはこの堰堤状の構造物がどんと控えています。幸い、先行していた私が選んだルートは正しく、無理なくスノーシェッドまで上がることができました。

幕営地点から入渓点までわずか40分、入渓点から(山菜を採りながら)スノーシェッドまで登り25分、そしてそこから車を駐めたところまでの車道歩きが1時間40分……。これを沢登りと呼んでよいかどうかは若干疑問で、ルーリーはしっかり遡行できなかったことを残念がっていましたが、至れり尽くせりの沢キャンプを堪能させていただいた私は大変ハッピーでした。ただし、釣りもせず山菜の目利きもできない自分はこのキャンプでは何の貢献もできていないのが心苦しく、そこはいずれ行うであろう登攀系沢登りでお返しをしたいと思っているところです。

以下、下山後のエピソードをご紹介。

風呂は、只見町の「深澤温泉 むら湯」。入浴後にはセブンイレブンを探し出し、いつもの儀式であるノンアルコールビールと揚げ鶏で乾杯。

帰りの道すがら、山菜をメインに売っているお店で、こんにゃく田楽をいただきながら山菜の価格帯をチェック。なるほど、こういう値付けになるのか。

そして、大宮駅での別れ際にはお二人から山菜のおすそ分け。鮮烈な苦味と香りのウドは皮を剥いてそのまま酢味噌で、穏やかな味わいのコゴミはさっと湯がいてマヨネーズで、帰宅してからいずれもおいしくいただきました。ごちそうさまでした。