広河原沢左俣

日程:2018/01/07-08

概要:広河原沢左俣を目的として入山。初日は二俣にテントを設営し、上の大滝まで登ってから同ルート下降。2日目は降雪予報の中、見晴らしルンゼを偵察してから下山。

山頂:---

同行:かっきー / セキネくん

山行寸描

▲下の大滝。私がリードするも途中で力尽き、セキネくんにバトンタッチ……。(2018/01/07撮影)
▲上の大滝。セキネくんがリードするも途中で力尽き、私にバトンタッチ……。(2018/01/07撮影)

成人の日の三連休はアイスクライミングに行きたいとかっきーに打診したところ(あらかじめ恩を売ってあったので)快く同行を承諾してくれましたが、うまい具合にセキネくんも後ろの2日間を休めるとのことなので、久しぶりに3人揃って八ヶ岳に行こうということになりました。行き先は、アプローチ至便の広河原沢です。

2018/01/07

△06:50 舟山十字路 → △07:55-09:00 二俣 → △11:00-12:05 下の大滝 → △13:20-14:25 上の大滝 → △16:40 二俣

日曜日の未明に小淵沢の道の駅で合流し、かっきー号で舟山十字路へ。

舟山十字路の駐車スペースはぎっしり満員御礼状態でした。これだけのパーティーに広河原沢に入られてはたまらないのですが、おそらく半分くらいは阿弥陀岳南稜狙い(中央稜か御小屋尾根下降)だと思われます。我々はのんびりペースで広河原沢沿いの道を奥へ進みましたが、この道を辿るのは2016年2月のクリスマスルンゼ以来。そのときも今回と同じSKJトリオでした。

1時間ほどの歩きでテントサイトとなる二俣に着きましたが、驚くほど雪がありません。これは水を作るのも一苦労だなと思いつつテント2張りと宴会用シェルターを設置してから、この日の行き先である左俣へ向かいました。

左俣には2014年12月に入っていますが、そのときは釜が口を開けていて左から巻いたF1も今回は流水を見せながらも凍っていて、そのまま通過できました。どうやら今シーズンの広河原沢は他の八ヶ岳の氷瀑と同じく結氷条件に恵まれている模様……と言いつつ、次の滝はシャバシャバのシャンデリアだったので左から巻き上がりました。

そこから先に次々に出てくる小滝を、我々の前にいるご夫婦(?)パーティーはリードの男性がフォローの女性をテープスリングで確保しながら登っていましたが、我々はおおむねフリーソロ。

シャバシャバだったのは釜の上の最初の滝だけで、そこから先の小滝はいずれもいい具合に凍っており、楽しく登ることができました。

やがて行き着いたのが下の大滝です。2014年の登攀時にはガサガサの階段風でしたが、今回はドーム状の見事な凍り具合で登攀意欲をそそります。前回はここをかっきーがリードし、私は上の大滝をリードしたので、今回はこちらをリードさせてもらうことにして勇躍取り付きました。ところが、見ると登るとは大違い……というのは毎度のことなのですが、見上げた姿以上に滝は立っている上に、氷が硬い!アックスを何度も打ち込まないと決まったという感覚を得られず、リーシュの取り回しのミスも重なってあっという間にパンプしてしまいました。下から3ピンとったあたりでフリーでの登攀は諦め、ビレイヤーにテンションをかけてもらったりアックステンションをかけたりの牛歩クライミングにしたものの、落ち口の1段下の段差でついにギブアップ。「選手交代」を告げて降ろしてもらいました。嗚呼、恥ずかしい……。バトンタッチしたセキネくんはロープを抜いてスクリューだけ残った状態でリードし、ここを一撃。かっきー、私の順にフォローしました。

下の大滝の上に出ると、それまでの寒い谷底歩きから一転して明るい日差しの中を進むことになり、そのせいかどうか、水気たっぷりの滝なども現れて、セキネくんは私のおニューのスクリュー(後述)で即席の蛇口を作ったりして遊んでいました。

いよいよ上の大滝。時間にゆとりがあればさらに詰めて最後は中央稜を下降しようという話もしていたのですが、下の大滝で時間を費やしたためにこの時点で午後1時すぎ。よってこの滝を越えたら同ルートを下降しようと申し合わせて、セキネくんがリードしました。ところがここも氷が非常に硬く、セキネくんも苦労しながらアックスを振っています。そして滝の中ほどまで登ってしばしレストの後、アックスを右上に打ち込もうとしたところ不意に右足が外れてフォールしてしまいました。落ちた位置が実質的に1ピン目であったためにグラウンドフォール寸前になりましたが、かろうじてロープが利いて寸止め状態になったのと滝の出だしがふかふかの雪であったおかげで、セキネくんはノーダメージ。苦笑しながら「すみません」と言いつつ立ち上がって登り返したセキネくんでしたが、先ほど落ちた地点から上に進む踏ん切りがつかず、今度は私がバトンを受け取りました。

途中まではトップロープ状態、そしてセキネくんが落ちたところからフリーですが、先人のアックス痕のおかげでほぼ引っ掛けで身体を引き上げることができました。最後に落ち口でアックスが決まらず少々時間をくったものの、どうにか上に抜けてセキネくんとかっきーを引き上げ、ここで登攀終了。いつの間にか午後2時半近くになっています。急いで下らなければ。

ひたすら懸垂下降を繰り返して、同ルートを下降。ほぼすべてのポイントに残置スリングが残されており、ありがたくそれらを使わせていただいててきぱきと下ります。

どうにか明るいうちに帰幕することができ、装備を解いてから雪をかき集めて水を作りながら、かっきー特製のつくね鍋に舌鼓を打ちつつアルコールを摂取しましたが、雪集め担当の私が手抜きをして手近の樹林帯の中で雪をとってきたために、雪を溶かした水の中には細い木の葉がいっぱい浮かんでいます。おかげで食事や飲み物なのに「檜風呂の匂い」(セキネくん談)を楽しむことになってしまいました。

2018/01/08

△07:00 二俣 → △07:30 見晴らしルンゼ出合 → △08:30-08:55 見晴らしルンゼ三俣 → △09:25 見晴らしルンゼ出合 → △09:50-10:35 二俣 → △11:15 舟山十字路

昨夜は19時就寝、そして今朝は5時起床……の予定が、これだけ寝ていても20分寝坊しました。気温はずいぶん高く、それが証拠にシェルター内に置いておいた鍋の中の水が凍っていません。そしてこの日の天気予報を見ると、9時頃に最初の雪雲が到来し、そして正午からは本格的な降雪が見込まれています。出発の準備をしながら、当初の予定通り左俣の支流に当たる見晴らしルンゼに行くか右俣のクリスマスルンゼを狙うかを協議しましたが、この二俣の右俣寄りにテント村ができていることを考えるとクリスマスルンゼは混み合いそう。それなら偵察と割り切って見晴らしルンゼへ入ることにしようと衆議一決しました。

昨日偵察してあった見晴らしルンゼの入り口は、左俣F1から15分くらいで左(右岸)に入ってくる沢筋で、出だしに傾斜の緩いナメ滝を持ち、その上で右に曲がっています。ナメ滝は半分以上雪に埋もれ、アックスを使うのは数m程度でした。

沢筋はすぐに開けて前方に阿弥陀岳の山体らしきものが見通せましたが、やがて幅が狭まります。沢筋通しでは水の上に薄く張った氷を破りそうな箇所があり、ここは右の45度ほどの氷の壁を登ってから雪の斜面をトラバース気味に上流に向かいました。

再び沢筋に降りたところから右上を見ると、支流の奥に長いナメ滝、そしてその先に垂直の氷瀑が見えています。これだけでも立派ですが、本流を少し進んだ先には正面に1本、左奥にも2本の滝が見えています。ルンゼに入ってからまだ1時間しかたっていないのですが、早くも見晴らしルンゼの奥の院に到達したようです。目の前にあるナメ滝は斜度的にロープが必要なさそうですが、これが初見参でもありそれなりに高さもあるので念のためロープを結び、私が1ピッチ上がってみました。すると……。

下からは見えていなかった位置(右端)にもう1本、これも立派な氷瀑が隠れていました。ぱっと見た感じでは左奥の2本が比較的易しく、右の2本は奮闘的なクライミングになりそうですが、いずれも楽しめそうです。しかし予報通りにこの頃から雪が降り出したため、今回はこれまでとして退却することにしました。ここには遠からず再訪問するつもりです。

懸垂下降と歩きとを繰り返して元来た道を戻るうちにも、雪はどんどん本降りになっていきました。

帰路の途中で立ち寄ったのがこの岩小屋です。中には銀マットの残骸もありましたが、真っすぐ立てるほど高く、詰めれば10人くらい収容できるほどの広さもあって、左俣登攀のベースとして使えそうです。

あっという間に二俣に戻り、テントを畳んで舟山十字路へ。この後一時的に晴れましたが、これも予報通り午後は本格的な降雪に見舞われたので、早めの撤収は良い判断だったと思います。

今回の新兵器は、こちらのシューズ(スポルティバ ネパール キューブ GTX)とアイススクリュー(PETZLレーザースピードライト)です。夏冬合わせて12シーズン使った前任のネパールエボ GTXは退役。そしてレーザースピードライトは昨年末の裏同心ルンゼで初めて使ってみてそのあまりの食いつきの良さとねじ込みの軽さ、さらにスクリュー自体の軽さに衝撃を受けて3本新調したもの。特に後者は、今回も使ってみて改めてその性能を実感しました。かっきーとセキネくんからは「なんだ、そのぴかぴかのシューズは!」「なんだそのスクリュー、色を塗ったのか!」とさんざん非難されましたが、さすがにもう財源がないので、新兵器シリーズはこれで打止めです。

しかし、いかにアイスクライミングが「道具で登る」と言われていても登る者に基本的な資格が備わっていなければ猫に小判で、今回は、3人ともいくつもの課題を発見する山行となりました。それらは下山した後にメッセンジャーでのやりとりを通じて確認し合っており、反省を次回に活かすこととしています。自分自身は、遅まきながら次の週末に岩根山荘の人工氷瀑で登り込むことにしているので、そこで技術とパワーの両面での再構築を果たすつもりです。