八ヶ岳全山縦走(敗退)

概要:観音平から北上する八ヶ岳全山縦走を目指したが、麦草峠までの縦走で終わる。

日程:2017/10/08-09

山頂:編笠山2,524m / 権現岳2,715m / 赤岳2,899m / 横岳2,829m / 硫黄岳2,760m / 東天狗岳2,640m / 中山2,496m / 丸山2,330m

分類:八ヶ岳

同行:---

権現岳手前から北を望む。左奥に見えている蓼科山まで歩くはずだったが……。(2017/10/08撮影)
天狗岳から南を眺める。たいした距離を歩いていないことに落胆。(2017/10/08撮影)

土日月の三連休は金曜日に休暇をつけ(月曜日を予備日とし)て沢登りに行く予定でしたが、あいにく金土が雨模様であったために計画は中止。その代わり日月は好天に恵まれそうなので、それなら久しぶりに八ヶ岳を歩いてみようと急に思い立ちました。2006年に北から南へと縦走を試みたときは天狗岳を白く覆う雪のために縦走を中断しましたが、今回はさすがに雪ということはないでしょう。そして今では「毎日あるぺん号」が竹橋から観音平まで運んでくれるので、前回とは反対に南から北へ向かうことにしました。しかし……。

2017/10/08

■04:05 観音平 ■06:50-07:00 編笠山 ■08:40 権現岳 ■11:30 赤岳 ■13:00-15 横岳 ■14:10 硫黄岳

毎日あるぺん号で観音平に着いたのは3時45分頃。他にも数人の登山客を降ろしてバスが去った後、身繕いをしヘッドランプを灯して出発しました。気温は比較的高く、薄着のままどんどん高度を上げてゆき、押手川あたりでヘッドランプをしまいました。

編笠山の山頂からは、薄い雲海の向こうに南アルプスが立派です。左には富士山、右には中央アルプスや御嶽山、そして北アルプスの山々もきれいに見えていました。しばらくザックを置いて大展望を堪能してから、青年小屋を経て権現岳へ。山頂の手前の権現小屋は冬にツェルト一枚でビバークした思い出の深い小屋ですが、今日の明るい空の下では、ツェルトが風に煽られるたびに目の前にきれいな夜景が広がったあの珍妙な一晩を想像することもできません。

主稜線から少し離れたところにある権現岳山頂に足を伸ばし、権現岳東稜上部の岩壁を見下ろしてみましたが、無雪期にはただのボロボロの岩場であることにちょっとショックを受けました。

キレットを越えて赤岳山頂。さすがに大賑わいです。近年では山小屋がヘルメット着用を推奨している模様で、かなりの確率でヘルメットをかぶっていました。確かに岩が脆い赤岳では人為落石の危険が無視できませんから、ヘルメット着用は理にかなっています(私はかぶっていませんでしたが)。そして、赤岳から硫黄岳にかけてのメインストリートは多くの団体で随所に渋滞が発生していました。もしこの縦走がタイムトライアルなら渋滞の影響は深刻ですが、今回の自分なりのルールは、

というものなので、反対方向の登山者と行き交うたびに「お先にどうぞ」と鷹揚に道を譲り続けました。

さらに硫黄岳から北へ、天狗岳方向を目指して緩やかに下る道でも20人規模の大団体と行き交いましたが、高年齢者も大勢含まれているところを見ると、14時過ぎでこの地点ではさすがに遅いのでは?と首をひねりました。

■14:50-15:00 夏沢峠 ■16:25 東天狗 ■17:10 中山峠 ■18:25-23:40 高見石小屋

夏沢峠の二軒の山小屋(ヒュッテ夏沢と山びこ荘)はいずれも営業しておらず、若干の寂寥感が漂っていましたが、居合わせた登山者たちの会話を聞くとここから本沢温泉へ下る人が少なくない様子です。

箕冠山を越えたところにある根石岳山荘は「ようこそ営業中」の看板を出していて、これにはぐらっときました。しかし、今回は小屋泊はしないと決めているのだからと小屋に立ち寄ることはせずに先を急ぎましたが、根石岳の上から振り返ると、山荘がこちらに「泊まっていけば?」と秋波を送っているようにも見えました。

そろそろ日が翳ってきました。影に沈もうとしている稲子岳南壁を横目に見ながら先を急ぐうちに、東天狗岳に到着。ここから振り返れば歩いてきた道、先を眺めればこれから歩く道が一望です。この先の中山峠から北はアルペン的風貌を失って樹林に覆われた平坦な山々が連なりますが、あの平坦に見える地形の中に実はしんどいアップダウンが数多く隠されています。

中山峠を過ぎ、中山の展望台に達したところで日没を迎えました。夜戦は苦にならない方ですが、さすがに一晩中歩き通すのは難しいので、月の出の時刻も考慮に入れ、日没後早めのタイミングで仮眠をとれる場所を見つけて数時間の仮眠をとってから歩行を継続しようというのが今回の作戦でした。その仮眠場所として事前に目論んでいたのは麦草峠でしたが、渋滞に巻き込まれ続けたせいでビバークポイントを高見石小屋に変更することにして先を急いだものの、思わぬ障害に足が止まりました。それは、金・土と降り続いたという雨の影響による泥田のような登山道です。多少のぬかるみならゴアテックスブーティーのアプローチシューズが耐えてくれますが、よくてくるぶしまでの泥濘、ひどいところは水が登山道一面に広がって池のようになっており、とてもそのまま足を踏み入れる気にはなれません。これは木道を整備してもらわないと……とぶつぶつ言いながら脇道に逃げたり飛び石でかわしたりしつつ遅々とした歩みを続け、どうにか高見石小屋に達したときは心理的にへとへとになってしまっていました。

ともあれ小屋の受付でPET飲料2本を購入し、小屋前にツェルトを張らせてほしいと申し出たところ、若い小屋番氏はテラスから小屋の前の広場をライトで照らして「平らだがどろどろの場所」「乾いているがごつごつの傾斜地」の二択を提示してくれました。私が選んだのはもちろん後者で、ありったけの衣類を身につけると、ザックの背面に入っているマットを引き出して斜面に敷き、ツェルトをかぶって仮眠に入りました。

どうやら私は、10月の北八ヶ岳の寒さを甘く見ていたようです。横になってしばらくはうとうとと眠れたものの、骨身にこたえる寒さにすぐに目が覚めてしまい、とても仮眠を続ける気になれません。それでも4時間ぐらいは粘って横になり続け、我慢の限界に達したところで起き上がってツェルトをザックに押し込みました。

睡眠は十分とは言えませんが、そういうこともあろうかとブラックブラックガムを持参しているので、どうにか歩行を継続できそうです。

2017/10/09

■01:00-05 麦草峠 ■01:20 大石峠の手前

高見石小屋から麦草峠までは最初に少し登って丸山に達し、その後にぐっと大きく下り、わずかに登り返してから峠への下り。そんなことは地図の等高線を見れば誰でもわかるのですが、その道がどういう状態かということはさすがに地図に書かれてはいません。高見石小屋までの泥田の道に辟易としたのは上述の通りですが、丸山からの下り道もじとじとジメジメ、ときどきドロドロという状態で、はっきり言って不快この上ない状況でした。電池節約のために光量を落としたヘッドランプの明かりでそんな道を右往左往しながら歩いている内に、自分はいったい何のためにこんなところを歩いているのか……と気が滅入ってきてしまいます。

笹原の中の道を緩やかに下って麦草峠に着いた時点では、モチベーションの半分以上は失われている状態でした。そして、R299を横断して大石峠方向へしばらく進んだところで出会ったのは、またしても泥田道。これを見たとき、山行を継続する意欲は完全に失われていました。

とぼとぼと麦草峠に戻り、麦草ヒュッテの近くにある平らな岩の上にマットを敷いて、再び仮眠タイムとしました。気温の低さは相変わらずでしたが、こちらの方が多少しのぎやすい寒さでした。

■01:30-05:25 麦草峠 ■06:00 狭霧苑 ■06:50 冷山のコル ■07:40 渋の湯

5時頃に目を覚ましてあたりを窺うと、麦草ヒュッテに明かりがついています。とりあえず寒さをしのごうとヒュッテに入らせていただき、ここで下山の方法を検討しました。麦草峠から茅野駅に向かうバスは11時台までありませんし、タクシーなどお値段的に論外。しからばと地図を眺めたところ、2時間程度の歩きで渋の湯へ下れることがわかりました。

きれいな朝焼けを見ながら麦草ヒュッテを後にし、R299に平行している山道を緩やかに下って狭霧苑へ。さらにそこから冷山歩道へ。

豊かな樹林とかわいい池、緑滴る苔、紅葉はサラサドウダン。何よりも癒されるのは、しっかり整備された木道の存在です。

あまり人が歩いていないと思われる冷山歩道を、苔を愛でながらゆっくり歩いて、渋の湯に降り立ったのは7時40分。お風呂は10時から、バスの始発は10時半と言われてここでもずいぶん待たなければならないのか(麦草峠でバスを待つよりはましではあるものの)と思っていたところ、ちょうどタクシーを呼んでいたご夫婦がいて、相乗りさせていただくことができました。

一路下界を目指すタクシーの窓から、青空の下に柔和なスカイラインで高く聳える蓼科山の姿が見えたとき、はっきりと悟りました。これは泥田のせいでもなければ寒さのせいでもなく、単に自分の力量不足による敗退なのだと。