塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

阿弥陀岳北稜

日程:2014/03/15-16

概要:初日は阿弥陀岳北稜鉱泉のアイスキャンディでアイスクライミングの練習。2日目に阿弥陀岳北稜を登って阿弥陀岳に登頂し、中岳沢を下降してそのまま下山。

山頂:阿弥陀岳 2805m

同行:さとし&よっこ夫妻

山行寸描

▲阿弥陀岳北稜の第二岩稜。あまりにも定番な構図だが……。(2014/03/16撮影)
▲2ピッチ目をリードするよっこさん。Good job!!(2014/03/16撮影)

今はサウジアラビア赴任中のジム仲間さとし氏が一時帰国。それなら一緒に雪山に行こうという話が発展して、さとし&よっこ夫妻にとっては初めての積雪期アルパインルートに同行することになりました。行き先は比較的容易とされる阿弥陀岳北稜です。

2014/03/15

△09:50 美濃戸口 → △11:00-10 美濃戸 → △13:20 赤岳鉱泉

この日の行程は美濃戸口から赤岳鉱泉まで。お昼すぎに赤岳鉱泉について、夕食までの時間をアイスキャンディで遊ぼうという算段です。

濃い青空の下、北沢沿いのよく踏まれた道を歩くと、樹林の中で雪の上に寝そべるカモシカの姿を発見。赤岳鉱泉のすぐ近くでもやはりカモシカを見掛けました。このときはずいぶんサービスがいいなくらいにしか思っていなかったのですが、翌日もっと接近することになるとは、このときは思ってもみませんでした。

やがて前方にアイスキャンディの姿が現れて、この日の歩きは終了です。受付を済ませて寝床を確保したら、すぐにアイスキャンディに向かいました。

最初は日陰側の凹凸の多い氷壁で4本ずつ。ついで日の当たる側の高さのある氷壁で各2本。いい練習になりました。アイスクライミングは1年ぶりのはずのさとし氏のダイナミックなムーブには目を見張りましたが、最後にこの高さのある氷壁をよっこさんがノーテンで登りきったのは見事でした。

16時頃に屋内に戻り、まずはビールで乾杯。やがてビールが日本酒になり、日本酒がワインになり……。

夕食のステーキは素晴らしい味でしたが、私はちょっと飲み過ぎてしまい、寝床に入る頃には頭の中がぐるぐる回っていました。

2014/03/16

△06:50 赤岳鉱泉 → △07:25-55 行者小屋 → △10:30-40 阿弥陀岳 → △11:20-45 行者小屋 → △12:55-13:05 美濃戸 → △13:50 美濃戸口

ゆっくり朝食をとってから出発。今日も素晴らしい快晴です。

行者小屋まで歩いたところで不要な荷物をデポし、ハーネスやヘルメットを装着して、行く手に白銀に輝いている阿弥陀岳を目指しました。ここからでも北稜を登っているクライマーの姿がはっきりと見えていて、そのシルエットはずいぶん高いところにいるように思えるのですが、実際には1時間余りも登れば彼らの現在地に到達するはずです。

3日前に新雪が積もっているはずですが、さすが人気ルートだけにばっちりトレースがついており道に迷う心配はありません。もっとも、私もこれが5回目の北稜なので間違えようがないのですが。

たっぷり雪が着いたジャンクションピークを過ぎ、斜度のある灌木混じりの第一岩稜も雪がしっかり着いていてすいすいと登れてしまうと、前方に第二岩稜が現れました。ちょうど先行パーティーのセカンドが登り始めているところで、次に2人組が待機しており、我々はその次。幸いにも無風快晴で眺めもよく、のんびりと順番を待つことにしました。

大した時間の空費にもならずに我々の番がやってきて、まず1ピッチ目は私がリードしました。出だしの岩は凍り付くこともなく豊富なホールドを提供してくれており、岩稜上に上がったところからは適度に雪が着いていてアイゼンやアックスの刺さりが良く、今までで一番登りやすい感じです。後続の2人も、岩と雪の感触をじっくりと楽しみながら登ってきました。

2ピッチ目はよっこさんのリード。危なげなく登っていったよっこさんがナイフリッジの先のハイマツにセルフビレイをとったところで私・さとし氏の順番に後続しましたが、岩峰の上部は岩が雪に覆われて手掛かりが少なく、セカンドなのに案外に肝を冷やしました。よっこさん、good job!!

このよっこさんのリードの間に、後続の外国人2人組のトップ(ガイドっぽい雰囲気)がビレイしているさとし氏と私の横に追いついてきました。

外「Where did you come from?
私「From Tokyo
外「You too?
さ「サウジアラビア」
外「Oh, south?
さ「No! サウジアラビア」
外「Oh, Saudi Arabia!←まるで発音が違います。
さ「……」

雪のナイフリッジはしっかりした踏み跡ができていて快適に渡ることができ、そこから先は山頂まで易しい雪の道を登るだけ。安定した場所でロープを畳んで、山頂を目指しました。

我々の後ろから北稜をすごいスピードで登ってきたソロの男性と我々3人の、計4人だけの山頂。さすがに少し風が出てきていましたが、それが気にならないほどの絶景です。

さとし&よっこ夫妻はお互いの記念撮影に余念がありませんでしたが、中岳沢を下るなら早いうちがいいので滞頂10分で下降にかかることにしました。

阿弥陀岳の赤岳方面の下りは毎度肝を冷やすのですが、今回は雪の着き方がしっかりしていてそれほど怖くありません。それなのにどこまでも慎重な私の下り方を、後ろで見ていたよっこさんには後でさんざん笑われてしまいました。

中岳沢の雪の状態が危険であれば中岳を越えて赤岳近くまで歩き、文三郎尾根を下らなければならないのですが、どうやら中岳沢両岸(特に左岸)の雪はしっかりしているようで、雪面に亀裂も見当たりません。これなら行けるだろうと判断し、間隔を空けてさっさと下ることにしました。

行者小屋に帰り着き、握手を交わしてほっと一息。小屋の前から見上げる阿弥陀岳の山頂は高い位置にあり、その周囲を雲がスピーディーに動いています。つい先ほどまでその頂にいたとは俄には信じられないほど、ここから見る阿弥陀岳の姿は堂々としていました。

軽く行動食を口に入れ、デポしてあった品々を回収しギアをリュックサックにしまって、後は美濃戸まで下るだけ……と思っていたのですが、予想外の出来事がありました。南沢の下山ルートに入ってすぐに、行く手を遮るカモシカに遭遇。近づけば逃げてくれるかな、と期待しつつじわじわと距離を詰めたのですが……。

カモシカがこんなに攻撃的な動物だったとは!それでも最後は人間の気迫勝ち。かくして意気揚々と美濃戸まで下山しました。

さて、さとし&よっこ夫妻にとっての初めての積雪期アルパインクライミングは、楽しいものになったでしょうか。え、疲れた?確かに、アルパインクライミングなんて行動の95%は「歩き」なのでそれは仕方ありません。もっと脚力を身に付ければよいのです。

……というわけで、帰りの車中でのDVD鑑賞は『激走モンブラン』にしたのでした。