栂海新道

山頂 白馬岳2,932m / 雪倉岳2,611m / 朝日岳2,418m / 黒岩山1,624m / 犬ヶ岳1,593m / 白鳥山1,287m
分類 北アルプス
日程 2009/08/10-13
同行  
概要 初日は、栂池自然園から短い登りで白馬大池山荘に素泊まり。二日目に白馬大池から白馬岳へ登り、とって返して朝日平テントサイト。三日目は朝日平から栂海新道に入って犬ヶ岳の栂海山荘泊。四日目に栂海新道をさらに北上して親不知の海岸まで。
朝日岳から黒岩山までの素晴らしい山旅。至福の数時間。(2009/08/12撮影)
朝日岳の北にある照葉ノ池。遠景は白馬岳方面。(2009/08/12撮影)
長栂山から見下ろす栂海新道の遥かな連なり。このあたりはお花畑と池溏・草原が豊富で癒されます。(2009/08/12撮影)

キリマンジャロでご一緒して以来、赤木沢沢上谷など沢登りに時々おつきあいいただいているT女史から、デナリに登ったという連絡が入ったのは今年の7月のこと。デナリは通常5月から6月という限られた期間内に約1ヶ月の休暇を作れないと登れない山とされているので、いくら海外登山経験の豊富なT女史でも仕事を持っている以上はムリだろうと思っていたのですが、いったいどうして?ところで、同じメールでT女史が富山県の高山植物保護パトロール員(通称「Gパト」)に応募して7月下旬から約1ヶ月、白馬岳〜朝日岳方面に勤務することが知らされていたので、「それなら差し入れを持って行ってあげよう。ついでに栂海新道も歩いてみるか」ということになったのです。

正直に言うと「おやぢれんじゃあ隊」の面々と都合が合わず、アルパインの計画を入れられなかったという背景もあるのですが、それはT女史には内緒……。

ちなみに、栂海新道と常念山脈を別にすると、日本アルプスの主稜線でまだ歩いていない、いわば「ミッシングリンク」は次の5箇所。これらもいずれは歩き通して、足跡がつながるようにしたいものです。

  • 北アルプス
    • 針ノ木峠から南沢岳まで
    • 三俣蓮華岳から双六小屋まで
  • 南アルプス
    • 早川尾根
    • 仙丈ヶ岳から三峰岳まで
    • 三伏峠から荒川前岳まで

2009/08/10

■08:15 栂池自然園駅 ■09:25 天狗原 ■10:30 乗鞍岳 ■11:00 白馬大池山荘

「さわやか信州号」で栂池高原の駅に着いたときは、はっきりとした雨。おまけにゴンドラリフトの駅で見ると、「大雨」と「雷」の注意報が出ています。直前まで、週間予報ではこの日から晴れるはずだったのに……。とはいえ、ここまで来て帰るわけにもいかないので、当初この日のうちに白馬岳まで登るつもりだった予定を白馬大池までに短縮することにして、ゴンドラリフトとロープウェイを乗り継いで栂池自然園駅に上がりました。

雨具をしっかり着込んで、雨の中をビジターセンター先から登山道に入ります。地図に「樹林帯のジグザグ登り」と書かれてある通り、面白みのない道をひたすら高度を上げると、途中に「銀嶺水」という名の湧き水を見て、やがて岩場、そして一段上がって木道が現れたら、そこが高層湿原の天狗原でした。

湿性の花がちらほらと咲く湿原を見ながら、相変わらずの雨の中を木道を進み、やがて岩ごろごろの斜面に入るあたりから周囲にナナカマドが目立つようになってきました。そして、残雪の斜面をスプーンカットを利用して登ると、ほんのわずかで傾斜がなくなり、霧の中にぼうっとケルンが現れたと思ったら、そこが乗鞍岳。この日の目的地の白馬大池は、そこから30分の下りでした。

実は、今回の山旅では営業小屋の利用はなるべく避けようとテントを担いできていたのですが、上述の通り雷の恐れがあるとなると話は別です。白馬大池山荘の前のテントサイトには3張り程のテントがありましたが、それらを横目で見ながら山荘の受付に素泊まり(6,300円也)を申し込みました。「明日はどこまで?台風が接近していますよ」などと脅されながら受付を済ませて、雨具や靴、ソックスをトイレ前のストーブ室に置き、あとは午後一杯を食堂で山の本などを読みながら過ごそうと思っていたのですが……14時頃になってふと気づくと、雨はあがり、まさかの日差しまでさしこんで来ています。

そんなの聞いてないよ!と地団駄踏んでも後の祭り。この後、天気はどんどん良くなって、青空が広がりました。こうなったら、台風が南にそれて翌日も好天になることを祈るしかありません。多少の割り切れない思いを抱えながら、早々に自炊で夕食をとって、床につきました。

2009/08/11

■05:00 白馬大池山荘 ■06:30 小蓮華山 ■07:05 三国境

朝もいい天気。5時ちょうどに山荘を出て目の前の尾根筋を左上する道を上がっていくと、白馬大池の向こう側の雲海から太陽が顔を出しました。その光景にしばらく見惚れてから、さらに緩やかな登り道を進みましたが、西から湧き上がってきたガスが白馬岳方面の景色を隠してしまい、やがて周囲は真っ白になってしまいました。

途中のピークである小蓮華山は、山頂部分がロープで囲まれて立入禁止。白馬大池山荘で仕入れた情報によれば、2007年に山頂が割れて陥没してしまったとのこと。ここは新潟県の最高峰なのに、その標高が数m下がることになってしまったようです。それにしても相変わらずあたりは霧に覆われていて、しかも小蓮華山から先はやや下り気味の平らな尾根道になったために方向感覚が狂いそうになります。おかげで、ちょうど反対側から来た登山者と「こんにちは。こっちは白馬岳ですよね?」「そうです。そっちは大池ですね?」と間の抜けた会話を交わす始末。

三国境を過ぎて、白馬岳の手前の馬の背に差し掛かったところで、向こうから来る黄色いヤッケに赤い帽子の4人パーティーと行き違いました。「こんにちは」と挨拶をしてすれ違おうとしたところ、最後尾にいた女性から「○○さん!」と声がかかって、それがT女史でした。当初の予定ではこの日はT女史は既に朝日小屋にいるはずでしたから、こちらはびっくり。後で聞いたところでは、最初の10日が朝日小屋、次の10日が白馬山荘で、前日に移動して最後の10日を再び朝日小屋をベースとしてパトロールをすることになっていたのが、前日の悪天候のために移動をこの日に繰り下げたのだそうです。そんなわけで偶然の再会となったのですが、ここで立ち話も何なので、とりあえず後で朝日小屋で合流することを約束して、いったんT女史と別れました。

■07:55 白馬岳 ■08:20 三国境 ■10:35 雪倉岳

T女史たちと別れたところから、白馬岳山頂まではあっという間。景色はないし、何度も来たことがあるしで、山頂標識にタッチしたら直ちに引き返しました。

三国境から先、朝日岳方面は未体験ゾーンです。そして、この道はさまざまな高山植物が花を咲かせていて、眺めがなくても十分に楽しい道でした。特に、紫色のマツムシソウが随所に大きな花を開かせていて、ついつい足を止めて見入ってしまいます。

鉢ヶ岳の東の山腹をトラバースする道でも、広々としたお花畑の広がりを斜面に見ることができ、目を奪われます。そして、顕著な二重山稜の薄い尾根筋の登り口に建つ雪倉岳避難小屋からマツムシソウをはじめとする様々な花が咲く緩やかな登りになって、雪倉岳へ。白馬岳周辺で随所に見られるこの二重山稜(舟窪)は、かつては浸食作用によって形成されたものと言われていましたが、現在では山腹の浸食によって稜線部が地滑りを起こした跡とみなされているようです。そして、雷鳥のつがいに出迎えられた雪倉岳のちょっと先で、T女史たちに追いつきました。

■11:40-12:20 ツバメ平 ■15:20 朝日平テントサイト

白馬岳手前ですれ違った4人のうち、男性二人は白馬班、T女史を含む女性二人が今日から朝日班ということになっているそうで、今日は移動しながらパトロール兼登山道清掃。やがて水場があるツバメ平で大休止となり、ここでT女史から白馬山荘のお弁当をもらいました。さすが豪華な白馬山荘のお弁当、とてもおいしい……んですが、毎日同じ弁当ではさすがにT女史たちも辟易していたようです。私が大喜びで平らげたのは言うまでもありません。ちょうど通りがかった登山者がT女史に「あなたたち、何者?」と質問していましたが、富山県のGパトだと説明すると納得していた模様。

あれこれおしゃべりをしながら30分以上も休憩をとったのち、おもむろに立ち上がって見事な岩壁(でも脆そう)の燕岩を左に回り込み、やがて出てきた木道を進んで庭園のような小桜平を過ぎ、分岐点から朝日岳の山腹をトラバースする水平道に入りました。小さな上り下りがあって意外に大変とされている道ですが、途中の小湿原やさまざまな花がいい感じで飽きません。

水平道も悪くないじゃないか、と思いながらのほほんと歩いていたのですが、世の中それほど甘くはありません。前方からエンジンの音が響いてきたと思ったら、朝日小屋のスタッフ二人が草刈りをしているところでした。当然T女史たちと顔なじみのスタッフ二人は、しめしめといった表情でT女史たちに「小屋までの間、登山道にかかった草をどけながら行ってくれる?」と注文。実は、富山県のGパトの場合、本来のパトロール業務以外に小屋の手伝いも仕事になるのだそうで、しかもそのことは事前には知らされておらず皆びっくり、という仕儀になるのだそうです。

まあしかし、小屋の人がこうして登山道の整備を地道に続けてくれているのはありがたいこと、そして、旅は道連れ世は情け。私もT女史たちを手伝うことにして、3人でもっぱら木道にかかった刈り払い後の草をどけながら、ゆっくりと朝日平を目指しました。やがて、朝日平手前の水量豊富な水場にさしかかったところで最後の休憩をとると、ガスが切れたその先に朝日小屋の屋根が見えています。今日の目的地である朝日平は、もう目の前でした。

いかにも快適そうな山上平地に建つ朝日小屋に着いて、私は受付を済ませてテントを設営。T女史は到着連絡を入れて、着替え。その後に大事な儀式が待っていました。そう、わざわざ担ぎ上げてきた差し入れの品の引き渡しです。それはこちら、とらやの羊羹でした。もちろんT女史一人で食べきれる量ではなく、Gパトの同僚さんや小屋のスタッフの方々と一緒に召し上がって下さい、という趣旨。

この後、小屋の自炊室に立てこもってビールをぐいぐい飲みながら、T女史のデナリでの武勇談(Landing Pointで日本登山界のスーパーレディ谷口けいさんに会って声を掛けたのだそうですが、声を掛けた理由というのが「トイレのルールを教えてもらうため」だったというのですから……。でも谷口さんは気さくに教えてくれたそうです)などを聞かされて大笑い。そして、気になっていたことをT女史に確認しました。すなわち、デナリに登るために3月一杯で仕事も辞めたというT女史は、エベレストまでも本気で狙っているのではないか?ということ。その答は、Yesでした。ただ、時間的にはゆとりができたとしても経済的なハードルが相当に高いように思うんだけど、どうするんだろう?

2009/08/12

■05:25 朝日平テントサイト ■06:20-45 朝日岳 ■07:05 千代の吹上 ■07:50 長栂山標識 ■09:25 黒岩平

朝、3日目にして快晴の空。北には雲海が広がり、南には白馬岳の高みから旭岳の尖峰、さらに清水岳へと連なる稜線が見えています。

T女史たちとそれぞれにお別れの挨拶をして、朝日岳への道を登りましたが、すぐに剱岳方面の展望が開けてきて、ついつい振り返って見とれてしまうために足がはかどりません。それでもやがて傾斜がぐっと緩くなって木道を詰めた先に、素晴らしい山岳展望をもつ朝日岳の山頂がありました。ここからは東に頚城の山々や高妻山から戸隠山といった北信の山々が見渡せ、北にはこれから辿ろうとしている栂海新道が草原や池の間を縫うように伸びているのがよく見えています。風に吹かれながら今回の山行中随一の展望を楽しんだ後、去りがたい思いを押さえつけて出発しました。

朝日岳の北斜面をぐっと下って千代ノ吹上(標識には「吹上げのコル」とありました)で蓮華温泉への道を分けると、しばらく樹林の中のぬかるんだ道が続いて、やがて長栂山東斜面の草原を抜ける木道になりました。そして、ここから黒岩平までの間が、この世のものとも思われないほど美しい場所でした。

優しい湿生の草原、キスゲに彩られた照葉ノ池、紫やピンクや黄色の高山植物、かわいらしい池溏、そして白馬岳から白馬大池方面の眺め。この日はできるだけ距離を稼いで、行けるものなら白鳥小屋までと思っているのに、これらの素晴らしい眺めについつい足が止まってしまいます。さらに、「アヤメ平」の標識の手前の斜面には、それこそ数えきれない種類の花々と濃紫のアヤメの群生。そこからも道は草原をためらいもなく突っ切って、ぐんぐん高度を下げていきます。最後に冷たい水が流れる小沢を渡ると、そこが黒岩平。朝日岳からここまで、飽きることのない、まさに癒し系の山歩きでした。

そう、本当に……ここまでは。

■09:55 黒岩山 ■11:10 サワガニ山 ■11:45-12:10 北俣ノ水場 ■12:45-50 犬ヶ岳 ■12:55 栂海山荘

日が高くなるにつれて、気温がどんどん上がってきました。それに高度が下がってきていることもあって、夏の低山の辛さである高温多湿と羽虫の襲来とが厳しいものになってきます。黒岩山は日本海へと続く尾根筋上の顕著なピークで、彼方には栂海山荘の赤い屋根が見えており、振り返れば朝日岳方面の眺めも開けてよい展望台になっていますが、とにかく先を急ぐことにしました。この先はひたすら尾根の上を、時に灌木に囲まれ、時に痩せ尾根になりながら、北へ北へと向かいます。

ひょいと開けたサワガニ山で単独行の男性と挨拶を交わして先に進み、ガマンガマンのアップダウンを重ねて尾根道を歩き続けると、北又ノ水場に到着。ザックを置き、道の左手に下るひんやりした緩やかなルンゼを下ると、5分も歩かないうちに冷たいきれいな水が樋から流れている場所に行き着きました。日に炙られ通しでほてった身体をクールダウンするべくたっぷり水を飲み、さらにここで3リットルの水を補給。ザックを置いた場所へ戻ると、先ほどサワガニ山で抜かした単独行の男性、さらにしばらくたって朝日岳からここまで前後していた御夫婦が相次いで到着しました。御夫婦の奥さんの方が「白鳥山まで行くの?」と聞いてきたので「行きます!」とその場では元気よく答えたのですが、いざザックを背負って水場から犬ヶ岳へ登る急坂に足を進め始めた途端、こりゃダメだと悟りました。自宅を出る時点での乾燥重量が14kgで、羊羹と二日分の食料がなくなったかわりに3リットルの水が加わっていますから、この時点でのザックの重さはだいたい15kgくらい。冬のアルパインでも20kgくらいは担いでいることに比べればずいぶん軽量なはずなのですが、暑さにやられたせいか、どうにも足がスムーズに上がりません。それでもえっちらおっちら身体を引き上げてなんとか犬ヶ岳の山頂に立ち、眼下に栂海山荘の屋根を見下ろしたとき、今日はギブアップしてここまでとすることに決めました。

栂海山荘は、栂海新道を拓いたさわがに山岳会が建てた山小屋で、無人小屋ですが非常にきれいに整備されています。その一階の涼しい場所を選んで荷物を置き、メッシュのTシャツ一枚になって体温を下げているうちに、先述の3人の他にガイドパーティー5人組、男女3人組、単独行らしい男性などが次々に小屋に入ってきました。しかし、そうした中でびっくりしたのは、この小屋にちょっと立ち寄ったというトレイルランナーの男性。この日の朝に猿倉からスタートして大雪渓を2時間で駆け上がり、長駆ここまでやってきて、この日のうちに親不知まで走り抜けるのだそうです。おそろしい……。

2009/08/13

■04:10 栂海山荘 ■05:50 菊石山 ■06:25 下駒ヶ岳 ■07:40-55 白鳥山

3時頃にガイドパーティー5人組がスタートして、残された宿泊者もヘッドランプを頼りに順次出発。出だしは急な下り道ですが、嬉しいことに下界の港町の明かりが意外に近く見えています。やがて雨飾山から焼山方面が朝焼けのオレンジに染まりましたが、反対側の西の方からはあやしげな雲がどんどん押し寄せてきていて、天気がいつまでもつか不安にさせられました。

時折ぱらぱらと雨が降る中、樹林帯の中を切り開いた道を淡々と進むと、黄蓮ノ水場への分岐。ここには小広い平地もあって幕営可能で、昨日小屋に泊まったガイドパーティー5人組は当初の予定ではここまで足を伸ばすつもりだったようです。しかし、ここは幕営指定地ではないと思うのですが、いいのかな?周辺はブナ林になっていて、確かに気持ちのよい場所ではありますが……。ともあれ、このあたりの道も昨日同様にアップダウンが続き、ヤブ蚊の群れもうるさく、決して楽な道ではありません。菊石山を越え、次にロープ頼みの急登をこなして下駒ヶ岳に達すると、そこにガイドパーティー5人組が休止中でした。前日から年配のゲスト一人が不調を訴えていたのですが、どうやらこの日もペースが上がらないらしく、荷の配分をしなおしている模様。この様子だと、この日のうちの下山は難しそうだなと思いながら先を急ぎました。そこからも我慢を続けて、白鳥小屋。先行していた御夫婦パーティー、それに単独行の男性とここで言葉を交わしながら小休止としました。

■09:30-40 坂田峠 ■10:15 尻高山 ■12:00 栂海新道登山口 ■12:10 親不知海岸

白鳥山からは急な下り、そしてシキ割の水場で喉を潤して、再び急下降の連続で車道が通っている坂田峠に到着しました。ここには駐車場があって、地元の人はここから山に登り始めるようですが、栂海新道は峠を横断してその先に続いています。この峠には「熊出没注意」の看板がありましたが、実は栂海山荘の利用者ノートにも、8月11日に登山者が尻高山で親子連れの熊に遭遇したということが書かれてあったので、この先も気を許すことはできません。

車道からちょっと入ったところにある古い地蔵と旧街道(北陸街道のバイパス道)の名残を見て、そのまま大きく左に回り込んでいくと、尻高山の山頂標識。そしてそこから北に、日本海が見えました。ここからの下り道、ホイッスルをピーピーと鳴らしながらぐんぐん下っていったん車道に出て、そこから先は多少は緩やかになるかと思いきやまたしてもアップダウンが続きます。二本松峠の先の登りにへこたれそうになり、入道山の北の416mピークからは地図の等高線が示す通りの怒濤の急下降をこなすと、北陸道を走る自動車の音が徐々に大きくなってきて、とうとう栂海新道登山口に降り立ちました。しかしここは標高100mほどで、まだゴールではありません。

道路を渡り、親不知観光ホテルの自動販売機でコーラを買うと、ザックを担いだままホテル右手の階段を下りました。長い階段を一段一段かみしめるように下って、最後の直線を下ると、そこに待望の海が広がっていました。

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〔インフォメーション〕

  • 今回歩いたコース中の避難小屋としては雪倉岳避難小屋がありますが、ここは緊急時の退避所として設置されているものであり、最初からここを宿泊場所として計画に組み込むことは認められていません。
  • 朝日岳の南面を巻く水平道はアップダウンが多く歩きにくいとする記述をよく見かけますが、実際に歩いた感じではそれほど厳しい道ではなく、要所に木道もあるほか、途中の水量豊富な水場が慰めを与えてくれます。
  • 長栂山の山頂標識は登山道からちょっと離れたところで、かつ実際の長栂山の最高地点ではない場所に立てられているようですが、そこからの広闊な眺めは一見の価値があり、立ち寄ることを勧めます。
  • 黒岩平及び北俣ノ水場は冷たく豊富な水が得られ、貴重な給水ポイントとなっています。
  • 黒岩山から先の道はアップダウンが続き、距離以上に体力を搾り取られます。鍛錬と軽量化が必須。虫除けスプレーも。涼しい季節に歩けば消耗は軽減するでしょうが、それでは花の季節をはずしますし、水場が涸れる可能性も出てくるので悩ましいところです。
  • 栂海小屋はさわがに山岳会の所有で、大事に利用したい小屋です。箒も備え付けられているので、退去時には掃除を。
  • 尻高山周辺の熊対策も必要。鈴、笛など。マムシが出たという記録も見ましたが、幸い私は遭遇しませんでした。
  • 登山口近くの親不知観光ホテルでは、1,500円で日本海を見下ろす展望風呂に入れて、その後親不知駅までホテルのバスで送ってくれるありがたいサービスを行っています。
  • ところで「高山植物保護パトロール員」って何?という方は、こちらを参照して下さい。富山県だけでなく、長野県でも募集しているようです。

さて、無事に海岸に到着して泥だらけになった靴を日本海の潮に浸し、その後コーラで一人で乾杯しているところへ、朝日岳から前後していた御夫婦と単独行の男性も到着。握手を交わして、お互いの健闘を讃え合いました。また、下山が危ぶまれたガイドパーティー5人組は、なんとか坂田峠まで達してそこで不調の一人を車で登山口へ先行させ、残るゲストを予定通り最後まで歩き通させることに成功したようです。途中リタイアした方も含めて、皆さんよくがんばったなあ(拍手)。