塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

高原川沢上谷

日程:2008/08/10

概要:乗鞍岳西面、奥飛騨の美渓・沢上谷を遡行。

山頂:---

同行:トモコさん / KSさん

山行寸描

▲不思議な形状の五郎七郎滝。上の画像をクリックすると、沢上谷の遡行の概要が見られます。(2008/08/10撮影)
▲こちらは岩洞滝。25mの直瀑だが、落ちた水を受け止める岩の堅さにも驚かされる。(2008/08/10撮影)
▲蓑谷大滝。まさに「ぬりかべ」という感じ。(2008/08/10撮影)

◎「王滝川鈴ヶ沢東股」からの続き。

2008/08/10

△07:25 入渓点の橋 → △07:50-55 五郎七郎滝 → △08:35-50 岩洞滝 → △09:15-20 蓑谷大滝 → △10:20-35 遡行終了点の橋 → △11:30 入渓点の橋

5時すぎに起床し、諸々準備を調えて沢上そうれ谷に向かいました。県道89号をくねくねと下って、右手に見えていた深い沢と道路が同じ高さになり橋で渡るところが入渓点です。先行の数人のパーティーが準備しているのを遠目に見ながら、我々も橋の少し手前の道路が膨らんだところに車を駐め、遡行準備にかかりました。

橋の右手から下りた沢は、最初のうち暗いゴーロで何ともぱっとしません。時折ナメのようなものが現れはしますが、なんだかイマイチだなあと思っているうちに、右岸にナメ滝をかける支沢が登場しました。この奥に五郎七郎滝という見どころがあるとトポにあるのでナメ滝の左壁を上がってみたところ、何やらよさげなナメの廊下が続いており、途中2カ所顕著な段差(滝)をかけて、その奥に不思議にねじれた曲面からなる五郎七郎滝に辿り着きました。ここまで本流からたったの10分。何がどうしてこういうことになったのかわかりませんが、ゆるやかにうねりながら落ちる滝の上を、けっこうな落差があるのに水はしぶきを上げることなく滑らかに落ちてきています。なるほど、これは確かに面白い。

元の沢筋に戻ろうとするとナメの廊下は下りでちょっと怖いですが、実はフリクションが利いているのでしっかり沢靴の底をつければ大丈夫。それでも草付の巻き道も利用しながら本流に戻って、遡行を続けました。

ちょっとしたナメや釜に癒されながら上流に進んで次の見どころは、やはり右岸の支沢を詰めたところにある岩洞滝です。こちらも本流から10分余り面白みのない沢を詰めなければならないのですが、その奥には先ほどの五郎七郎滝とは違って正統派の25m直瀑が、ハングした落ち口から水を落としていました。

ここでしばし休憩の後、また本流に戻って遡行再開。このへんから、ときどき楽しいナメが現れるようになってきます。特に斜めのナメというかスラブというかの上を水流が滑り落ちるところの先に、オープンブックを横倒しにしたような地形が出てきて、ここは左ページに両足、右ページに両手をついて全身ステミングで横移動しました。すると、そのすぐ先にいよいよ蓑谷大滝が登場しました。

蓑谷大滝は、スケールという点では先日の滑川大滝に遠く及びませんが、つるんとしたダムのような岩壁が唐突に立ちはだかるその「妖怪ぬりかべ」のような姿は、確かに偉容ではあります。乗鞍火山の働きのなせるわざなのでしょうが、それにしても不思議です。

この滝の巻き道は左岸。右手の草付から樹林帯の中を登って、頭上に岩壁が見えるところで左に続く踏み跡に入りましたが、これは失敗でした。トポによればもっと上まで上がりきればそこに杣道が走っているようなのですが、我々が入った道はまだ左岸の岩壁の途中。コーナーを曲がったところで高さ2mほどの白い垂壁になり、そこをガバに助けられながら(ショルダーも使って)越えた先の下り斜面がすとんと落ちていて、普通に歩いていける状況ではありません。まあそういうときのためにロープがあるわけで、しっかりした木の幹にロープを回して垂らし、トモコさん、KSさん、私の順に懸垂下降すると上流側へ10mほど斜め懸垂すれば安定した斜面になって、そこからは踏み跡が蓑谷大滝の落ち口のすぐ上に続いていました。

沢上谷の最上の部分は、実はここからその先の二俣までの間の明るいナメ床です。ほとんど傾斜の感じられない真っ平らなナメ床の上を透明な水がさらさらと流れていくさまは楽しく、歩いているだけで幸せになってきます。しかしその幸福はそれほど長くは続かず、すぐに二俣に到着しました。この二俣に右からかかる滝もつるりとした中に水流が穿った溝が面白い幾何学構造を作っているのですが、ちょっと傾斜が強いので上から垂れているフィックスロープのお世話になって上まで抜けました。

その先は左右から樹林の下草が迫る中を1本の車道のようにナメ床がどこまでも続き、小学校の先生であるトモコさんは「これなら子供たちを水遊びに連れてきてもいい」と喜んでいましたが、あまりにも単調なナメ床の連なりに少々退屈してくる頃に沢を横断する林道の橋が現れて、そこで遡行終了としました。

林道に上がり沢装備を片付けて、林道〜県道をつなぎ1時間弱の緩やかな下り道の歩きで車を駐めた場所に到着。前日に鈴ヶ沢を遡行していたため沢上谷のコンパクトさが少々物足りなくも思えましたが、随所に見どころを抱えたテーマパークのような沢で、これはこれで面白い沢でした。そして、二つの沢登りを連ねたことで実に充実した2日間の沢旅となりました。

全ての行程を終え、トモコさんの車は高山に向かいます。途中のレストランで食事かたがたガソリン代等の精算を済ませ、高山駅前で車を下りて大阪方面へ帰るトモコさん・KSさんとお別れした後、高速バスでその日のうちに帰京しました。あいかわらずの腕の冴えを見せてくれたトモコさん、山屋としての脚力(と酒量!)は年齢とは関係がないことを教えてくれたKSさん、本当にありがとうございました。沢はもとより、道の駅での宴会も最高でした。ぜひ、またご一緒しましょう。