南秋川矢沢軍刀利沢

日程:2006/06/17

概要:南郷バス停から矢沢林道を歩いて軍刀利沢に入渓。遡行終了後、三国峠から浅間峠経由上川乗に下山。

山頂:---

同行:デチ / まっきー

山行寸描

▲3mナメ滝と2条4m滝。上の画像をクリックすると、軍刀利沢の遡行の概要が見られます。(2006/06/17撮影)
▲2段10m滝。右のルンゼを上がってフィックスロープで落ち口へトラバース。(2006/06/17撮影)
▲6m滝。途中にハーケン1カ所あり、III級程度。(2006/06/17撮影)

今年4月に湯河原幕岩で現場監督氏に稽古をつけていただいたデチとまっきーを、今度は沢登りに連れて行くことになりました。どこがいいかなとガイドブックを物色しているうちに、そういえばと思い出したのがひろた氏の記録で見た奥多摩の軍刀利沢(ぐんだりさわ)で、短いながらも面白い(&難しければ巻ける)滝が詰まっているようなので、これはうってつけだとここに決定。ガイドブックの他、ひろた氏と常吉さんのレポートを頭に入れてから、梅雨の合間の曇りを狙って武蔵五日市駅で彼女たちと待ち合わせました。

2006/06/17

△09:40 南郷 → △10:35-55 軍刀利沢出合 → △11:45 2mCS滝 → △12:45 2段10m滝 → △13:40 6m滝 → △15:40-16:00 三国峠 → △17:05-15 浅間峠 → △17:55 上川乗

数馬行きのバスに乗って40分の南郷で降りたのは我々だけで、地元の人に道を聞き、橋の上で通せんぼをしている体長2mほどのヘビをなだめすかして、歩きやすい矢沢林道をてくてく歩きました。この日は曇天ながら時折日が差し、気温も比較的高く沢日和と言っても差し支えないお天気です。林道途中のゲートの先の土砂崩れを乗り越えて、右手に大きな小屋を見たらそこから10分ほどで立ち木に赤テープが巻いてあり、右下の矢沢に左岸から沢が入っているのが見下ろせました。それが軍刀利沢です。

路上で沢装備の準備をしていると、ゲートのところに駐めてあった車に乗っていたとおぼしきフル装備の沢屋集団数人が上流側から下りてきました。彼らは赤テープを見落として先に進んでしまい引き返してきたらしく、「ここから下りられますけど」と教えるとリーダーが「あ、そうだった」。この日この沢で見掛けたのは彼らだけで、この後、沢の中でも抜いたり抜かされたりすることになりました。

準備が整っていざ入渓、矢沢を渡って軍刀利沢に入りました。最初は小さな流れ、ついで狭いゴルジュ状で、この先に立派な滝がありそうには見えませんが、すぐに「小手調べ」といった雰囲気の2m幅広滝が現れます。今日はなるべくデチとまっきーに自分でラインを見つけて先行してもらうことにしているので「どうやって登るかな?」と見守りましたが、2人は期待に応えて右寄りのちょっと立った壁を問題なく登ってくれました。続いて釜を手前に持つ3mナメ滝と2条4m滝の連瀑は、新緑や苔の鮮やかさとあいまってとてもきれい。2人ともナメ滝の方は問題なく登り、上の滝は「どうしよう……」という顔をしていたので右からの易しいラインを指示。さらに小滝やナメを進むとまたしても顕著な滝が出てきて、これが「逆くの字滝」に違いないと見ていたら先頭のまっきーは振り向きもせずにすたすたと左寄りから滝に近づき、そのままあっさり上へ抜けてしまいました。

その先で休憩中の先行パーティーを抜かして、比較的平凡な渓相の中をどんどん進むと、逆くの字滝から10分ほどで2mほどのCS滝が出てきました。常吉さんの記録を思い出し、なるほどこの先に8m滝があって、常吉さんたちは初心者混じりということで短い懸垂下降で戻ったうえで巻いたのだな、とピンときました。右手を見上げ、あまり楽ではないものの巻けそうな地形になっていることを確認してから試しにCS滝に取り付いてみましたが、つるつるの両壁にステミングでバランスをとりながら近づいてCSの上に手を掛けてみてもホールドはいまいち浅く、しかもCSの下はハング状で足が掛けられません。ここ数日の雨で水量が多く冷たい水をかぶりながらあれこれホールドを探って、どうやら自分一人なら抜けられそうだと見当はつきましたが、その後に彼女たちを引っ張り上げられる自信がなく、おまけにその先の8m滝もどうなっているかわからないのでここは自重することにしました。とりあえず偵察で数m右壁を上がったところから奥の8m滝を観察し、予想外に立派な滝が豊富な水量をどうどうと落としていることを確認してから灌木にスリングを回してセルフビレイをとって、リュックサックからロープをとり出して安全環付きカラビナを末端と中間にセットして投げ下ろし、2人がハーネスに連結するのを見届けてからさらに斜面を上がりました。この間に到着した先ほどのパーティーは、お助けスリングも駆使しながら全員CS滝を突破し、8m滝は左の脆そうな壁から巻き上がって行きました。

CS滝と8m滝を高巻いて沢床に戻るとすぐに見事な大滝が現れて、これがガイドブックに「2段10m滝」と書かれている滝のようですが、ひろた氏の記録にもあるようにとても10mではきかない高さです。先行パーティーはここの右手の斜面で懸垂下降の練習をしており、我々はその間を縫ってルンゼを上がってから、長めのスリングを各自のハーネスに結んでランヤードを作って極太のフィックスロープにかけ、安定した足場を辿って落ち口へとトラバースしました。

続く5mナメ滝は易しいながら面白い滝で、水流の左寄りを豊富なホールドに導かれて登ってから落ち口近くで右足を水流をまたぐように大きく出すのがポイントです。先に私が登り、その後ロープで確保して2人にも登ってもらいましたが、デチはこれが見つけられず左壁のホールドが乏しいところを逃げ気味に登り、まっきーはしっかり自分で右足の置きどころを見つけて登ってきました。続いて落ち口に流木がはさまった5m滝は、ひろた氏の記録でも常吉さんの記録でも楽しいということになっているのでできればこれも登りたかったのですが、やはり水量が多く水圧で叩き落とされる可能性があったため、仕方なく左の滑りやすい泥の斜面から小さく巻きました。

流木が立てかけられている壁のような3m滝を右から巻くと、先ほどの5m滝の上でロープを畳んでいる間に我々を抜かしていった先行パーティーが、その先の顕著な6m滝でロープを出していました。彼らが途中のハーケンにA0用のヌンチャクをかけて登っているのが見えたので、彼らが抜け終わるのを待ってからまっきーにビレイしてもらって同じ右壁を登りました。後続のデチも私が残したクイックドローを使ってA0混じりで登ってきましたが、その際クイックドローを回収してきてしまったためにまっきーはそこでA0できずに足を滑らせ1回ロープテンションをかける羽目になってしまいました。

ここを過ぎれば、もうロープを使うことはありません。泥まみれになったロープを洗い、その重みをずっしり感じつつリュックサックに納めて先を急ぎます。ガイドブックには「遡行2時間」と書いてあるのに、この時点で既に入渓してから4時間が経過していました。

4m滝はしっかりしたホールドに助けられて右寄りを楽しく直登し、最後の10m滝はあっさり右から巻いて、その先で右に枝沢を分ける場所に木漏れ日が差し込んでいるのを見つけて短い昼食休憩をとってから、ずいぶん水量の減った沢をさらに詰めていきました。続く分岐を右俣に入り、後は水量の多い方を選んでいくと小滝CSの先で水が涸れ、最後は土のV字谷になって登りきったところでぽんと登山道に出て、そこは三国峠の西寄り20mの地点でした。

水が涸れてからの最後の登りはデチもまっきーも「足が上がらない……」と息も絶え絶えでしたが、とにかくこれで無事に遡行終了。3人で握手を交わしてから、三国峠のベンチで装備を解き、靴を替えました。三国峠には誰もおらず寂しい風情でしたが、開けたところから遠くにうっすらと、わずかに雪を残している富士山も見ることができました。

山というのは、下山口に到着するまで終わりではありません。数馬の温泉センターに行きたかったので下り道は浅間峠経由上川乗バス停への道を選択したのですが、三国峠から浅間峠までの尾根道には地図では目立たないながらも実際には意外にきついアップダウンがあって我々を苦しめました。考えてみればここは長谷川恒男CUPのコースの一部で私も何度か走っているはずなのですが、なにしろハセツネではこの辺りを歩いているときはほぼ真っ暗なので印象が薄く、途中の軍刀利神社にしても「こんなのあったっけ?」という状態です。それでも道のわきに朱色の花をつけているツツジに慰められたり、浅間峠からの下り道の歩きやすさに感謝したりしながら、どうにか上川乗に下り着くことができました。ところが、あいにくバスの便が極端に少ないため温泉センターは諦めることにし、タクシーを呼んでそのまま武蔵五日市に出て(5,160円)、衣類についた沢の匂いをお互いに気にしながら立川に移動して駅近くのちょっとあやしげな入浴施設で汗を流してから、焼き鳥屋で打上げとしました。

いろいろな要因で想定外の時間がかかってしまいましたが、軍刀利沢自体はなかなか面白い沢でした。いくつかの滝についてはガイドブックに記載されている高さはやや控え目のような気がしましたが、ともあれ今回巻いた滝も、もうちょっと水量が少なければ正面から楽しくトライできたはずです。この沢には、いつか再び遡行してみたいと思わされました。