暑寒別岳

日程:2001/09/24

概要:増毛側から暑寒別岳に登頂、南暑寒岳を越えて雨竜沼湿原へ降りる。

山頂:暑寒別岳 1491m / 南暑寒岳 1296m

同行:---

山行寸描

▲滝見台から山頂方面。本当の山頂は雲に隠れている。(2001/09/24撮影)
▲雨竜沼湿原の眺め。1年前と変わらぬ姿でそこにあった。(2001/09/24撮影)

2001/09/24

△05:20 暑寒荘 → △06:10 佐上台 → △06:45-07:00 四合目 → △07:20 五合目 → △07:55 滝見台 → △08:20 八合目=扇風岩 → △09:20-35 暑寒別岳 → △10:45 最低コル → △11:30 南暑寒岳 → △12:35-50 展望台 → △13:30 雨竜沼湿原入口 → △14:35 南暑寒荘

増毛の民宿からカト氏の車で送ってもらい、暑寒別岳の登山口である暑寒荘でカト氏・スー氏とお別れ。備付けのノートに記帳し、クマよけの鈴を身体にくくりつけて出発しました。

空は朝焼け色ですが、山の上の方はすっぽり雲に覆われていて展望は望めそうにありません。それでも昨年の宿題は何としても果たすつもりで歩き出しました。このルートはコースタイム10時間ですが、ヒグマの危険を最小化するため実働で2時間短縮することを目標とし、休憩は極力とらずに歩き通す作戦です。

樹林の中の広い道を登ってやがて稜線上に到達し、歩きやすい緩やかな登り道をひたすら進みます。合目ごとに標識があるのがありがたく、途中えらく足の速い単独行に抜かされながら四合目に達したところで最初の休憩とし、昨夜のうちにコンビニで買っておいた助六寿司をつまみました。空気は晩秋の冷たさで風も海鳴りのように音をたてていますが、眼下に増毛から留萌方面の海岸や町並みが見えて気分は悪くありません。早々に行動を再開し、水場のある五合目に着いたところでやはり単独行の中年氏が後ろから上がってきて抜かされました。私も決して足は遅くはない方だと思っていましたが、北海道の岳人の健脚にはまったく恐れ入るばかりです。

滝見台は晴れていたら眺めの良さそうな尾根上の小ピークで、右前方の山腹に滝がかかっているのが見えましたが、そのすぐ上はもう雲の中に隠れているのが残念です。少し進んだ小岩峰の扇風岩はついホールドを探したくなるような面白い岩ですが、道は右に巻いて下っており、この辺りから完全にガスの中に入ってしまいました。雪どけの泥田のような道がなだらかな地形の中に続き、九合目の先の急な坂道で山頂から戻ってくる中年氏と行き交いました。

暑寒別岳の山頂は、箸別からの道を合わせて広い台地状の地形の上をけっこう歩いた先にありました。もう1人の単独行氏とも山頂の手前ですれ違った後ではガスと強風の山頂には誰もおらず、あるのは標識が二つ、ケルンに囲まれた祠。方向指示盤もありましたが、このガスでは見る気にもなりません。ここでこの日2回目の休憩をとり、ケルンの陰で風を避けながらパイナップルの缶詰を開けましたが長居は無用です。

山頂から笹の中の急坂を滑りそうになりながら下り、ガレ場の縁を抜けて稜線上を高度をぐんぐん下げると、いつしか雲の下に出て左右に美しい湿原や笹原が広がっているのが見えてきました。やがて前方からしっかりした装備の単独行者とすれ違いましたが、彼はおそらくこの日南暑寒岳から暑寒別岳へ縦走したただ1人の登山者でしょう。ちなみに後日知ったところでは、この日逆コースの暑寒別岳から南暑寒岳方向への縦走をした者も私を含めて2人しかいなかったようです。

背丈を超える笹の中に切り開かれた道をどんどん歩いて辿り着いたのが最低コル。小沢から湿原の中に踏み跡が伸びており、近くに見える目玉のような丸い池塘がユーモラスですが、ここに幕営することもできるようです。

道はここから登りに転じ、最後に厳しい急登になって息が切れそうになる頃に南暑寒岳の山頂に到着しました。ここからの暑寒別岳の眺めは素晴らしいそうですが、今日は展望ゼロ。リュックサックを下ろすこともせずさっさと下山にかかりました。このピークを越えれば山行は終わったも同然と何となく思っていましたが、しかし雨竜沼湿原までの道のりは湿原が見えてからでもうんざりするほど長いものでした。やっと下り着いた展望台でこの日3回目の、そして最後の休憩をとりました。展望台の周囲のベンチには中年女性の団体が思い思いに腰を下ろして食事中で、こちらも空いているベンチにリュックサックを下ろしてペットボトルのお茶を飲み、ソーセージやチーズなどの行動食を口に入れました。前方には懐かしい雨竜沼湿原が草もみじ色に広がっており、実に穏やかな景色です。

湿原内の木道をゆっくり歩いて湿原入口(こちらからは出口ということになります)に着いた頃から雨が降り出しました。下り道の途中で何人かを追い越し、南暑寒荘に着いたときにはすっかり本降りになっていました。

結局登り始めからゴールまで9時間15分。うち休憩が3回で合計45分なので、実働8時間半ということになります。実を言うとゴム長靴の靴底では石ころ道が足裏に痛くスピードが上がらない場面があったのですが、中敷の工夫でこの点を克服すればもっと時間を短縮できたことでしょう。

なお、翌日カト氏から「よくぞ無事で」というメールが入りました。と言うのも、この日増毛側の二合目でヒグマが目撃されたのだそうです。私が鈴を鳴らしながら登ったその近くで、そのヒグマは息をひそめてこちらの様子を窺っていたのかもしれません。