塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

水無川本谷〜広沢寺弁天岩

日程:2001/06/30-07/01

概要:流レノ沢にツェルト泊の翌日、水無川本谷を塔ノ岳頂上まで詰めてからF5の上まで逆に下り、書策新道を戸沢出合へ下山。その後、広沢寺弁天岩に転進。

山頂:---

同行:黒澤敏弘ガイド

山行寸描

▲F8全景。何人も亡くなっている危険な滝であり、我々もあっさり巻いたが巻き道自体も危なっかしい感じ。(2001/07/01撮影)
▲塔ノ岳山頂。この日は猛烈に暑く、尾根道からではここに登る気になれない。(2001/07/01撮影)

2001/06/30

△11:20-15:30 「ストーン・マジック」 → △18:30 流レノ沢

この土日は夏の山行に向けて特別メニューを『猫の森』の黒澤ガイドに依頼していましたが、出だしのこの日はあいにくの雨。よって外の岩場に代えて話題のクライミングジムである「ストーン・マジック」に行くことになりました。このジムは巨大な空間にさまざまなテーマの課題が設定されており、人工壁はもとより自然壁のシミュレーションも、人工登攀やミックスクライミングの練習すらもできてしまう凄いジムです。さらに子供向けの施設も用意されて家族連れで楽しむのにはかっこうの場所で、現にたくさんのお父さんと息子の組み合わせがクライミングを楽しんでおり、ふと気付くと平山ユージ氏の一家も遊びに来ていて子供に壁を登らせていました。

さて、ここでの課題は自然の岩を模したコーナーでの5.10aとbと表示された2本にハングでの人工登攀とセルフレスキューの練習です。5.10aの方はTRでホールドを指示されながら登りましたが、5.10bの方は全然だめでがっくり。一方、アブミを使った人工登攀はそこそこ形になってきましたし、セルフレスキューも最初プルージックの結び目が甘くスリングがずるずる下にずれてしまっていましたが、徐々にしっかり乗り込めるようになってきました。セルフレスキューは、例えばハングの下に落ちて壁に戻れないときにメインロープに巻き付けたスリング2本で身体と足を支え尺取り虫のように脱出を図る技術ですが、ぶら下がった状態ではハーネスに腹部を圧迫されてかなり苦しく、できることならこの技術を使う羽目には陥りたくないものだと思いました。

「ストーン・マジック」での練習を終えたら、翌日の水無川本谷のスタート地点となる戸沢出合へ移動しました。今日はここでツェルトでのビバークの練習を行うこととしており、戸沢出合対岸の流レノ沢をわずかに遡った堰堤の上の静かなところに今宵の寝床を決めて、まず流木を集めて盛大に焚火を焚きました。

その火を眺めながら夕食をとり、ウイスキーを飲んで気持ち良くなったら、河原の平らなところにテントマットを敷きシュラフをのべて上からツェルトをかぶって寝るだけですが、幸い雨に降られることもなく快適に眠れました。

2001/07/01

△07:00 戸沢出合 → △07:50-55 書策新道横断点 → △09:25-45 塔ノ岳 → △11:15-25 書策新道横断点 → △12:00 戸沢出合 → △14:00-17:30 広沢寺弁天岩

〔水無川本谷〕

5時に起床。朝食をとってから戸沢出合に置いた車に戻り、遡行準備をしていよいよ本谷に入りました。F1とF2は左の鎖、F3も左の悪い鎖をゴボウで登ってトラバース、F4はなんと言うこともなく登りF5は右の鎖を登って書策新道の横断点まで50分で着いてしまいました。ここから先は未体験ゾーンで、チョックストーンの乗っ越しが難しいF6は左からさっさと巻き、F7は水流をそのまま登りました。何人も亡くなっているというF8の大滝は右から巻きましたが、この巻き道も決して安全ではなく、少々緊張しました。F9は左から登れることになっていますが条件が悪そうだったのでこれも右から巻いて、上部の古い堰堤で左岸へ登るとそこにきれいな水場がありました。これは塔ノ岳山頂の尊仏山荘の水場で、丹沢でも有数のうまい水なのだそう。ここで水をたっぷり補給してからガレを詰めていって飛び出したところは表尾根で、そこから登山道を5分登ると猛暑の塔ノ岳に到着しました。

尊仏山荘で寛いでから、元来た道を戻ります。登りで滝をほとんど巻いているのもここから下るのも、今回の遡行が滝登りのテクニカルな愉しみを狙ってのものではなく、ゴーロの登下降をスピーディーにこなす訓練が主眼だからです。先ほど登り着いた表尾根から下りはじめ、F9-F6は全て巻きながら沢の中を下っていきます。沢靴の下降は爪先が痛く、また下手に歩くと石車に乗る危険性もありますが、幸いどうにか無事に書策新道の横断点まで下り着くことができました。ここから下の滝下りは既に経験済みなので手っ取り早く書策新道を下ることになっていることを黒澤ガイドに確認してから、手近の瀞に飛び込み仰向けにぷかぷか浮かんで涼をとりました。

〔広沢寺弁天岩〕

これでメインテーマの本谷遡行は終わりですが、追加メニューあり。それは前回うまくいかなかった人工登攀の再挑戦です。ナバロン近くのハング帯で2本のルートにトライしましたが、前回のルート(下写真の左)は苦労しながらもなんとかアブミをつなげて最後はフリーで上がることができました。ところが二つ目のルート(下写真の右)は途中ボルトが遠い上にハングの具合の関係でアブミの最上段の巻き込みが難しく行き詰まってしまい、図らずも習いたてのセルフレスキューで脱出することになってしまいました。しかし「ストーン・マジック」ではうまくいったものも実際の岩場ではなかなかうまくいかず、ギャラリーが見守る中さんざん悪戦苦闘し拳を痛めながら、なんとか脱出に成功してアブミを回収し上へ抜けました。

ここで今日のメニューは終わるはずだったのですが、前回最後に中央フェースの右クラックで落ちたことを根に持っていた私は志願してもう1本、ただしセカンドで登らせてもらいました。ここはすんなり登れたのですが、これで今度こそ終わりと思っていたらなぜか解放してもらえず、立て続けに中央ルートと左ルートを登ることになってしまいました。おかげで最後の終了点に着いたときは、息もすっかり荒くなってしまいへとへとです。

午前中に本谷を塔ノ岳まで往復してから午後に人工登攀2本 / IV+を3本は体力いっぱいのところでしたが、現役クライマーの練習ペースに近い線までは行けたとの黒澤ガイドの御墨付きを得て広沢寺を後にしました。