塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

表妙義縦走

日程:1999/10/30

概要:妙義神社から大の字を経て白雲山から金洞山中ノ岳へ縦走。

山頂:相馬岳 1104m

同行:---

山行寸描

▲麓からの表妙義。「大の字」はこういう風になっています。(1999/10/30撮影)
▲鷹戻しから振り返る。このアングルも甲斐駒的でサマになる。(1999/10/30撮影)

1999/10/30

△07:50 松井田 → △08:40 妙義神社 → △09:15-20 大の字 → △09:40 奥の院 → △10:05 見晴 → △10:45 大のぞき → △11:25-45 天狗岳 → △12:15 相馬岳 → △13:35-45 茨尾根のピーク → △13:55 掘切 → △15:05-15 鷹戻し → △16:00 東岳 → △16:25-30 中ノ岳 → △17:15 中ノ嶽神社 → △18:25 ブドー園

始発の新幹線で高崎まで行き、信越線に乗り換えて松井田駅に到着。快晴の空の下に妙義山が近く高く聳えていますが、駅前にはバスもタクシーもおらず、仕方なく妙義神社までてくてく歩きました。参道から鳥居をくぐって石段を登ると立派な本殿があり、登山道はその右手から始まります。急な道をぐんぐん登ると、小さな鎖の上の鞍部の左手岩峰上に下から目立っていた「大」の字の鉄看板があって鎖を伝ってその足元まで登ることもできますが、先を急ぐのでパスしました。

奥の院の右手が最初の本格的な鎖で、30mの長さを腕力で乗り切ってさらに登るとだんだん展望がよくなり、木々の葉も色付いてきます。7mの鎖を越えた見晴からは裏妙義の姿がごつごつして面白く、その奥には浅間山の優美な姿も見えていました。浅間山は信州の山で、こちらからは碓氷峠を越えたところに聳えていますが、峠の向こう側は白い雲が下から沸き立つように山あいを埋めていてその一部が滝雲になって峠からなだれてきています。先日の谷川連峰縦走でも関東側の谷を埋めた雲が清水峠や蓬峠を乗り越えて越後側に溢れていく様子を目撃しましたが、なるほど峠というのは人の営みだけを隔てるものではなく、気象や地勢までも区分するのだなと妙に感心しました。

この見晴まで来ると道は稜線上の緩やかなものとなり、すぐに石碑の立つ大のぞきに着きました。前方には天狗岳方面の断崖が眺められますが、そこへ行くためには30mの長い鎖を下らなければなりません。とは言っても足場はしっかりしているので鎖で体重を無理なく支えることができましたが、やはり長さのせいで腕が疲れてきます。下り着いたキレットから再び登り返して、天狗岳でカレーパンとチョココロネとの昼食をとり、それに谷川岳の馬蹄形縦走で乾きに苦しめられた教訓を活かして持参したみかんを食しました。

天狗岳から下って登り返して展望のあまりない最高峰の相馬岳山頂に着くと、そこでは年配の男女4人が弁当を広げています。ここからいやというほど下り、不安になり始めた頃ようやく沢を渡ってはっきりした水平の道に移りました。稜線の途中の茨尾根のピークは相馬岳方面が姿良く眺められ、行く手の金洞山も一望でき、さらに裏妙義方面も手が届きそうな抜群のロケーションです。少し下ったところにある分岐点の掘切ほっきりには中間道から道が上がってきており、そこからどちらに進もうとしても「危険、引き返せ」の標識が待ち伏せしていましたが、もちろん言う通りにしているわけにはいきません。しかし、予想外に時間がたっているため先を急ぐうちに、濡れたいやらしいトラバースを過ぎた先で道を間違えてしまいました。眺めの良い岩から先に進むことしばし、ふと「なんで下っているんだ?」と疑問が湧き、あわてて地図を確認すると確かに道は登りになるはず。5分下ったところから引き返してみると、先ほど通ったところにちゃんと標識やテープがありました。

いよいよ難所、鷹戻し。鎖・ハシゴ・鎖・ロープ・鎖・鎖……と一気に50mを強引に登り、緊張で喉がからからになる頃やっとてっぺんに到着しました。ここから見る相馬岳の姿は絶品ですが、既に日は傾き、上空には黒い雲が広がり始めています。頼むから降らないでくれよ、と祈りながら急坂をずるずると下って登り返したところで道が唐突になくなり、崖っぷちに出てしまいました。確かに鎖のない直立の岩場があるとはガイドブックに書いてありましたが、その前に鎖の下りがあるはず、と少し戻ってみるとやはり死角になったところに鎖が見えています。しかしフリーで少し降りたところから始まるこの鎖が強烈で、2段25mをほぼ腕力頼みの下りとなりました。

ここを下りきれば狭い岩稜の歩きとなり、紅葉もいくぶん鮮やかになってきます。東岳からもよい眺めですが、中ノ岳の上に出たとき前方に荒船山の特徴的なシルエットや浅間山の柔らかな影絵が眺められたのはとりわけうれしく思いました。最後のピークから、まだ真新しい鎖を伝ってようやく下山開始です。

中ノ嶽神社に下り着いたときにはもはや真っ暗で、駐車場でジュースを飲んでからガイドブックを広げましたが、さっさとタクシーを呼べばよいのにここで妙義神社と中ノ嶽神社を読み違えるというボーンヘッドを犯し、バス停を探して歩き出してしまいました。明かりのない車道を妙義神社方面へひたすら歩いたもののさすがにだんだん歩くのが嫌になってきて、ブドー園の前に公衆電話を見つけたのを幸い松井田方面からタクシーを呼ぶことにしました。