硫黄岳〜横岳

日程:1999/03/20-21

概要:美濃戸口から赤岳鉱泉へ入って泊。翌日硫黄岳から横岳を越えて、地蔵尾根を下り、そのまま美濃戸口へ下山。

山頂:硫黄岳 2760m / 横岳 2835m

同行:---

山行寸描

▲硫黄岳からの赤岳方面の展望。灰色の空が前途の厳しさを予告しているよう。(1999/03/21撮影)
▲横岳への稜線からの大同心。遠景は阿弥陀岳ほか。(1999/03/21撮影)

1999/03/20

△13:20 美濃戸口 → △14:20-35 美濃戸山荘 → △16:35 赤岳鉱泉

9時新宿発の特急に乗ったときは雨だったのに、茅野に着いてみると大雪でバスも途中からチェーンを巻く始末。美濃戸山荘で暖かいお汁粉を飲んでから、降りしきる雪の中をひたすら歩きました。

赤岳鉱泉では感じの良い受付で宿泊の手続(あらかじめ電話で予約済み)をし、ついでに稜線の状態を聞いてみると「昨日まで雨続きで雪も消えていたが今日の雪でぐっと歩きやすくなったはず」とうれしい情報を教えてくれました。夕食は川魚のムニエルにシチュー、冷やっこ、サラダ、フルーツ。おおむね満員というところですが、それほど混み合っている感じでもありませんでした。

1999/03/21

△06:45 赤岳鉱泉 → △08:45-55 硫黄岳 → △11:05-10 横岳 → △12:55-13:05 地蔵ノ頭 → △13:55-14:10 行者小屋 → △15:15-30 美濃戸山荘 → △16:15 美濃戸口

朝食後、身繕いをして出発。高曇りで空は灰色ですが、稜線ははっきりと見上げられ、とりわけ大同心が立派に聳えています。

樹林帯を抜けて稜線に出るところが固く雪が締まった急斜面になっており、アイゼンの前爪を蹴り込んでガリガリと登りました。

今回の硫黄岳山頂は前回と違って眺めが良く、北には天狗岳・蓼科山・霧ヶ峰から美ヶ原、それに諏訪湖が見え、西には乗鞍岳・御嶽山・中央アルプス、南には南アルプス、これから辿る横岳・赤岳・阿弥陀岳、東には金峰山、浅間山などといった具合に次々に山名を指摘できました。ただ徐々に雲の色が黒っぽくなって西から押し寄せてきている感じで、風も3月とは思えない冷たさ。写真撮影は早々に切り上げて横岳へ向かいました。

強烈な風が吹き飛ばす雪粉に頬を刺されながら横岳山頂手前まで来たところで、鎖が雪に埋もれて左がすぱっと切れ落ちたトラバースを20mほどホールドなしで歩かなければならないところに出くわし、ここが若干下り気味の上に途中に1カ所足場が狭くアイゼンの爪しかかけられないところがあって、情けないものの立ち往生してしまいました。足を止めている間に後続のパーティを4組程先に行かせましたが、うち2組はロープで確保しています。そんな具合にぐずぐずしているうちに黒雲がとうとう上空に到達して天候が急速に悪化し、撤退するにしろ進むにしろ早く決めなければならなくなっていよいよ覚悟を固めたのですが、実際に歩いてみるとないと思われたホールドがかろうじて見つかり、足元も4組通った後では意外にしっかりしていて、なんとか渡りきることができました。

この難所(?)を越えてから鉄梯子を登ってすぐの斜面がこれまたガリガリに凍った急斜面で、緊張しながらピッケルのピックを打ち込んではアイゼンの前爪を蹴り込みました。なんとか横岳山頂について一息つき、カメラのフィルムを入れ替えてから稜線を進みましたが、視界は既に極度に悪くなっている上に強風で雪が飛ばされるために先行者の踏み跡も消えがちになっています。登山道は石尊峰の先で右(西)に岩場を下って雪の急斜面の長いトラバースをこなしてから稜線に上がり、ついで日ノ岳の左(東)の急斜面を下りましたが、今度は新雪がずぶずぶと崩れて焦りました。それでもなんとか鎖のトラバース道まで辿り着いて、最後にちょっと悪い巻き道を渡り切るとようやく緊張から解放されました。

西からの風は衰えを知らず、額に手をやると眉毛がばりばり音をたて、目出帽をちょっと下げると息が当たっていたところがすぐかちかちに凍ってしまいます。本当はさらに赤岳に登頂し、あわよくば阿弥陀岳もと欲張りなプランを立てていましたが、天候が悪化している上に横岳通過に予想外に時間をかけてしまったため、ここから地蔵尾根を下りそのまま下山することにしました。

実を言えば、以前冬に赤岳に登ったときに地蔵尾根を登路に使ってその急峻なことを実感し「雪のある季節には決してここを下るまい」と心に誓っていたのですが、今日ばかりはそうも言っていられません。赤岳鉱泉で作ってもらっていたおにぎりを一つ食べて心を落ち着けてからおもむろに下降を開始しましたが、案の定上部はスノーリッジで高度感もあり、アイゼンの神様にひたすら祈りながら下りました。

行者小屋に着いてようやく一安心。後は16時35分発の最終バスに間に合うよう足を速めるだけです。美濃戸山荘に着いた時点で十分時間に余裕があることを確認し、おでんを食べて遅い昼食としてから、ゆっくりと車道を下りました。