塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

南秋川小坂志川本流

日程:2020/07/19

概要:笹平から小坂志川沿いに林道を歩いて小坂志川本流に入渓。遡行終了後、連行峰から和田峠経由陣馬高原下に下山。

⏿ PCやタブレットなど、より広角(横幅768px以上)の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:---

同行:アユミさん

山行寸描

▲ゴルジュ状のパート。困難な滝や釜はなく、楽しく抜けることができる。(2020/07/19撮影)
▲一応の核心部である6mトイ状滝。手掛かり足掛かりには困らない。(2020/07/19撮影)

◎本稿での地名の同定は、主に『奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート』(山と溪谷社 1996年)の記述を参照しています。

先月の生藤山に続くアユミさんのリハビリ山行第2弾は、このところ自分が通い込んでいる南秋川の小坂志川。湯場ノ沢ウルシガ谷沢とコンビニエントな支流を経て、いよいよ本流を辿ります。山行のゴールはもちろん、陣馬高原下の山下屋さんです。

2020/07/19

△07:55 笹平 → △08:50-09:00 入渓点 → △11:25 二俣 → △13:15-30 連行峰 → △14:45 和田峠 → △15:30 陣馬高原下

武蔵五日市駅でアユミさんと合流して、バスで笹平まで。小坂志林道を歩くのはこの2カ月ほどで3回目ですが、たぶんこれが最後になるだろうと思います。

道すがらの大きな白百合や紫色のイワタバコの花を愛でながら1時間ほど歩いて、林道が小坂志川を跨いで川筋から離れ出すところの橋の手前から入渓しました。

入渓してしばらくは大規模な伐採跡が広がって興醒めでしたが、それにしても水がきれいなことには驚きました。あまり芳しくなかった天気予報とは裏腹に空には青空が広がり、透明な水をキラキラと輝かせています。

しばらく歩くと伐採跡は終わって沢筋は自然の姿を取り戻し、やがて最初の滝が出てきました。ここは左から回り込んで壁に取り付けば、ごく簡単に落ち口に上がることができます。

トウノ木沢を左に、キットウ谷沢を右にそれぞれ分けて本流はさらに続きますが、過去の記録を見ると、キットウ谷沢出合には林道工事のために遡行を控えるようにという看板が下げられていたそうです(ウルシガ谷沢も同様)。しかし、今では林道工事も終わったのか看板はなく、名残のトラロープが垂れ下がっているだけでした。

支沢を二つ分けた後は沢筋が狭まり、ゴルジュ状になってきます。その中には小滝や釜が続いていますが、いずれも難しい箇所はなく10分もかからずに抜けていくことができました。

いったん沢筋が開けて短いナメ床や穏やかな水面が広がりましたが、すぐに再び両側の壁が迫り始めます。

ゴルジュと呼ぶには短いのでゴルジュ「状」としておきますが、次々に出てくる小滝はどれも癒し系。ガイドブックには箱庭のようという表現が出てきますが、言われてみればこれは的確な形容のようにも思えます。「函庭」と表記したらさらにフィットするかも?

沢の中にもイワタバコの花が咲いていて、ますます癒されました。

沢は開けたり狭まったりを繰り返しながらどこまでも続き、さすがに小滝登りにも満腹感が漂ってきます。おまけに腰の上まで水につからなければ通過できない釜や淵も出てきて、ちょっと身体が冷えてしまいました。渇水期にどうなるかはわかりませんが、ここだけ採り上げればこの沢は夏向きだと言えるのかもしれません。

釜を持つ小滝は腰まで水につかって右壁を登り、チョックストーンのある2条滝は左側を容易に登ります。そして左(右岸)からいくつか支沢を合わせた先の標高640mあたり(「570m」としているガイドブックもあるがおそらく誤り)が開けた二俣になっており、そこから10分ほどでこの沢では最大の落差である6mのトイ状滝が出てきました。ここは水流の右側を登るとホールドが豊富で容易。ただし高さがあるので落ち口の右(左岸)にあるしっかりした木の根にスリングを巻いてセルフビレイをとり、上からロープを投げ下ろしました。

アユミさんが難なくトイ状6m滝を登ってきたところで上流を見ると、すぐそこに階段状の6m滝が続いていましたが、これはほぼ歩きで越えられます。

最後の顕著な滝とされる3m滝は釜に踏み込んで水流右寄りを登りましたが、その上流にもまだまだ豊富な水量が続いていました。さすが本流、そのボリュームはウルシガ谷沢などとは雲泥の差です。

さしもの本流も標高900mほどで水涸れとなり、ガレた沢筋がしばらく続いた後にずるずるの土の斜面が行く手に広がりました。三歩進んで二歩ずり落ちるということを繰り返しながら徐々に高度を上げて、やっと飛び出した場所は連行峰からほんのわずかに醍醐丸寄りの位置です。沢特有の詰めの苦行に音を上げかけていたアユミさんは、思わず連行峰の山名標識に抱きついていました。

下りは例によって和田峠から陣馬高原下へ。先日軍刀利神社から和田峠へつないだときは巻かずに稜線通しの道を選んでいたアユミさんも、さすがに今日は「巻けるところは巻く」という方針です。それもそのはず、遡行を終えた時点でアユミさんも私も、陣馬高原下の山下屋さんで飲むビールのことしか考えられなくなっていたからです。ところが……。

《悲報》この日に限って山下屋さんは臨時休業。しかも1時間に1本しかないバスは出たばかり。そのため、我々2人がビールにありつけたのはさらに1時間半後、高尾駅に降り着いてからのことでした。

この沢の支流にあたる湯場ノ沢もウルシガ谷沢もごく短いお気楽沢だったのでこの沢もそうかと思っていたら、上記の通りいつまでたっても終わらないミニゴルジュやら小粒ながら面白い小滝群やら滑りやすい詰めの斜面やらにけっこう絞られました。しかし沢のスケールとしてはむしろこれがノーマル。ヌメりも倒木も少なく、遡行しやすい状態であったと思います。今回はアユミさんのリハビリ山行でしたが、リハビリ向きと言うよりは、沢登りの経験をこれから増やして行こうとする人を案内するのによい沢です。