塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

富士山

日程:2019/07/27-28

概要:初日は富士スバルライン五合目から七合目まで登り、鎌岩館に泊。翌日、吉田口頂上に登ってからお鉢巡りをして、富士スバルライン五合目へ下山。

山頂:剣ヶ峰 3776m

同行:---

山行寸描

▲2日目の朝。御来光を仰ぐまでには回復しなかったものの、前日の荒天からは想像もつかないほどの穏やかさ。(2019/07/27撮影)
▲剣ヶ峰から火口を見下ろす。前日の荒天のおかげか、驚くほどに人が少ない。(2019/07/28撮影)

この夏のシャモニー行に向けて高度順化を行うべく富士山へ……というのは、これまでのヨーロッパでの登山の前の恒例行事ですが、この週末はなんと台風が本州を直撃するという間の悪さ。

とは言うもののシャモニー到着後にいきなり4000m近い高所でのクライミングが予定されているため、どうしてもここで富士山に登っておきたいところです。だめなら佐藤小屋に泊まらせてもらうこともセカンドプランとしつつ、ここは運を天に任せることにしました。

2019/07/27

△11:00 富士スバルライン五合目 → △12:55 七合目鎌岩館

新宿を7時すぎにバスで発ち、一路富士山富士スバルライン五合目へ。都内はとても良い天気でしたが、やはり台風到来の予報を敬遠してか、バスの中はがら空き(数少ない乗客は私以外は外国人)でした。

富士スバルライン五合目に着いてみると、雨が降ったり止んだりと不安定な天気でしたがところどころ青空が覗いていて、これから荒れてくるとはにわかに信じられない空模様でした。しかし、この日宿泊の予約をとってある頂上富士館に念のために電話を入れてみると「頂上は暴風である」「遭難者(心肺停止)も出ている」「よって登ってこないように。キャンセルOKです」とのこと。マジですか……。

さらに六合目の安全指導センターでも話を聞いてみたところ、ルートは閉鎖されてはいないものの、かなり厳しい状況にあることは間違いない様子。先ほどの電話で聞いた遭難者についても「暴風で動けなくなっているうちに体温を奪われた」らしいことを聞かされました。ここは無理は禁物、風雨の接近を感じたら手近の小屋に宿を求めるか、それがダメなら佐藤小屋まで下ることにして歩き始めました。

それにしても富士山に来るたびに驚かされるのは、この軽装登山者です。コーカソイドは基礎体温が高いとは聞いたことがありますが、それにしても先ほどからガスが降りてきて明らかに荒れ模様になりつつあるのですが、ここまでくるとカミカゼ登山者と呼んだ方がよさそうです。

七合目の鎌岩館(標高2790m)に達したとき「本日空室あります」の表示に気付きました。試みに八合目の太子館(標高3100m)に電話を入れたところ「空室はありますが、明日降りられなくなるかもしれませんよ」と言われたため、今日はここまでとすることに決定。中に入って宿泊を申し込むと快諾された上に、濡れ物を拭いてくれたりと懇切丁寧な対応をしてもらえました。

荷物を所定の場所に納めてほっとしたところで外を見ると、はっきりと暴風雨。高度順化のためにはもっと上の方で宿泊したかったのですが、ここでこの日の登りを打ち切ったのはいいタイミングだったと考えた方がよさそうです。

2019/07/28

△05:15 七合目鎌岩館 → △07:45-55 吉田口頂上 → △08:30-10:00 剣ヶ峰 → △10:30 吉田口頂上 → △12:40 富士スバルライン五合目

夜明け前に外に出てみると、雨も風も収まっていました。これなら山頂を目指せます。

ちょうど日の出の方向に雲が広がっていたために御来光を拝むことはできませんでしたが、とにかく上へ。

いつもなら山頂を目指す登山者の行列ができているはずの登山道には、数えるほどしか人の姿が見当たりません。今回は高度に身体を慣らすことが目的なので、一歩一歩じっくりと踏みしめながら、その代わり休みをとらずに歩き続けることを意識して山頂を目指しました。

今崩落により月上旬まで閉鎖されていた吉田口頂上直下の道も再整備されていて、難なく山頂の一角に辿り着きました。この場所でのこの人の少なさも驚きです。

久須志神社の右手に立っている真新しい小さな鳥居の向こうに剣ヶ峰。風もなく穏やかな山頂を右回りにぐるりと回って、その剣ヶ峰を目指しました。

剣ヶ峰に建つ測候所跡には「日本最高峰富士山剣ヶ峰」の石碑があり、いつもなら下からそこまで写真撮影待ちの行列ができているのですが、これまたがら空き。静かな富士山頂を満喫できて、実に幸運と言うしかありません。

剣ヶ峰の薄い空気の中で1時間半のんびりと過ごして下山にかかりました。

頂上浅間大社奥宮に参拝してから、さらに反時計回りに歩み続けるうちに、周囲は徐々にガスの中。一方、この頃から山頂に到達する登山者の数が増えてきました。

吉田口頂上から下り始めたすぐのところで見た湧き水。この水が伏流水となって、長い年月(一説によれば15年くらい)をかけて下界に達するのでしょう。

下山のジグザグ道はがらがら、かたや九合目あたりで見た登り道は長蛇の列。これから登る人たちも山頂で展望に恵まれることを祈ります。

当初計画していた「富士山頂での宿泊による高度順化」はできませんでしたが、台風到来とあっては致し方なく、できる範囲でできることをするしかありません。そしていよいよ4日後から、シャモニーでのクライミングが始まります。