塾長の山行記録

日川曲り沢

概要:景徳院から車道を少し歩いて曲り沢林道に入り、終点から適当に入渓。大谷ヶ丸の南の稜線に抜け、大谷ヶ丸を越えて米背負峠からやまと天目山温泉を目指して西へ下る。

日程:2019/06/16

山頂:大谷ヶ丸1,644m

分類:関東周辺 / 沢登り

同行:サチ子さん / トモミさん / エリさん

5段20mナメ滝。水量は豊富でしたが、弱点を探せば難なく登れます。(2019/06/16撮影)
明るいナメで鳳凰のポーズ。小規模ながらこうしたナメが何ヶ所か出てきました。(2019/06/16撮影)

3月に乗鞍岳でご一緒したトモミさん・エリさんコンビと、ジム仲間のサチ子さんを加えた四人で、沢歩き。「沢登り」ではなく「沢歩き」としたのは、これがエリさんにとっては初めての沢だからです。泳げないのでゆる沢がいいという彼女のリクエストに応えるべく行き先を探索した結果、近年話題のウォーターウォーキングの対象として人気が出ている日川曲り沢をチョイスすることにしました。日川は甲府盆地の南端で釜無川と合流して富士川となる笛吹川の支流ですが、笛吹川本流が塩山を経由して甲武信岳に向かっているのに対し、こちらは石和あたりから東に向かって大菩薩の南、小金沢連嶺に向かいます。

2019/06/16

■09:25 景徳院 ■10:00-35 曲り沢林道終点 ■10:50 5段20mナメ滝 ■13:30 二俣 ■14:05-30 登山道

起点となる中央本線の甲斐大和駅に午前9時7分着の列車で到着したところで全員合流し、サチ子さんとトモエリコンビは初対面の挨拶。エリさんは一週間前のトレランで左足首を捻挫しており、サチ子さんもこの日の出がけに駐車中の他人の自転車に蹴つまずいて膝のあたりを流血、と最初から暗雲漂う船出でしたが、お天気の方は前日の豪雨が過ぎ去って見事な青空が広がるよい天気でした。

駅前で待っていた上日川峠行きのバスに乗り、ほんの5分ほどで着いた景徳院の前に降りました。ここは武田氏滅亡後に徳川家康が甲斐を領有していたときに、武田勝頼の菩提を弔うために創建された寺だそうですが、今日は歴史探訪の旅ではないので残念ながらスルー。そのまま車道を日川に沿って上流方面に進み、途中から曲り沢林道に入りました。谷あいの歩きやすい林道を30分ほども歩いたところに堰堤と広場があり、ここまでは車も入って来られる様子。ここから橋の上を渡ってまっすぐ進む沢筋は支流で、曲り沢は左へ折れています。ここで装備を装着することにしました。

サチ子さんは沢登りの経験豊富、トモミさんもこれが三度目の沢登りになりますが、エリさんは初めてで、身につけた沢靴やハーネスはいずれも新品です。ギアはツインゲートのカラビナを二枚持参しており、私が自作したランヤード(6mmスリングをアメリカンプルージックで伸縮自在にしたもの)と以前なにかのおまけでもらったエイト環を進呈してハーネスに装着すれば、これで一人前の沢ノボラーの誕生です。

広場から沢を渡って左岸の道筋をしばらく進み、適当なところから入渓。すぐにこの沢のハイライトと言われる5段20mナメ滝に到着しました。もう少し明るく開けた滝かと思っていましたが、季節がらのせいか光線の加減のせいか、なにやら鬱蒼とした感じがします。それでも適度な水圧を楽しみながら問題なく越えることができてひと安心。実は前日の大雨による増水が懸念材料だったのですが、これなら問題はなさそうです。

苔むす岩の間の小滝を越えたり、ゴーロと見れば適当に巻いたり、水流の穏やかなところにきらきら光る金粉のようなもの(正体不明)に見とれたりしながら、どんどん上流へ。

ところどころに出てくるナメもいい感じ。最初の五段滝は花崗岩っぽいつるりとした岩質でしたが、茶色のナメは階段状かつギザギザでフリクションがよく効き、まったく不安なく歩けます。またたまには小滝も出てきますが、登れないものははっきりと「登るな」という形相をしており、これまた易しく巻いて越えることができます。

それでも、ところどころの岩場をクライミング気分であえて正面突破するのも楽しいもの。高さがないので危険はほとんどありませんが、右の滝は背後からスポットした方がよかったかな。

易しい沢とはいえ、ナメが出てくるとついポーズをとって写真を撮りたくなるので、気がつけば時間がどんどんたってしまっていました。

この倒木の大きさには驚きました。この木なんの木?生きていた時代には、間違いなくこの沢の主のような存在だったことでしょう。

石積みの滝をかわしたところで、前方に赤丸の目印がマーキングされた標高1,270mの二俣が現れました。ここは右へ進みます。

右俣に入ると、すぐに源頭の様相を呈してきました。じゃがいものような岩と三角おむすび岩がセットになった場所を過ぎて、フリクションのよいナメ床をひたひたと登ります。とにかく、途切れそうで途切れない水を追ってどんどん登ればOK。

最後の二俣は、比較的手軽に登山道に出られそうな右を選びました。間の支尾根に乗り上がってもよさそうですが、ここは沢登りの醍醐味(?)であるツメの斜面を味わってもらうべく、あえて正面突破のラインに突っ込みます。

最後の急斜面もふかふかの土で歩きやすく、藪漕ぎもなしに無事に登山道に抜け出ることができました。登り始めるときには捻挫持ちのエリさんや流血騒ぎを起こしたサチ子さんのことが心配でしたが、終わってみればそれらの不安材料は遡行の支障にならずにすんだ模様です。やれやれよかった、あとは沢装備を解いて下山にかかるだけだ……というところで、脱ぎ履きがしにくいモン◯ルの沢靴を強引に脱ごうとしたトモミさんがふくらはぎをつらせてしまい悶絶する羽目に。

■14:55-15:05 大谷ヶ丸 ■15:20 米背負峠 ■15:50 登山口 ■16:20 大蔵沢

登山道に出たところは標高1,440m。ここから南に下って景徳院へ下山する記録をよく見かけますが、我々は北へ向かってやまと天目山温泉へ下山する計画です。つまり、まずは標高差200メートルを登って大谷ヶ丸を越えなければなりません。

先頭を行くエリさんのハイペースに置いていかれまいと必死になりながら、途中ツツジの赤にかろうじて癒されつつ急坂を30分弱がんばって、やっと大谷ヶ丸に到着しました(この登りがこの日一番きつかったかも)。大谷ヶ丸山頂は展望には恵まれませんが、明るい広場になっていて気持ちのよいところ。西側には下界を見通せるポイントがあり、塩山方面の町の広がりを見下ろすこともできました。

先ほどのエリさんのハイペースに懲りた私は「下りはトモミさんのペースで行きましょう」と宣言したのですが、今度はぐんぐん飛ばすトモミさんの下りのスピードについていけません。トモミさん、こんなに足が速かったっけ?

下山の道が車道に変わる直前の小沢を渡るところで土がついた沢靴を洗い、はっきりと整備された林道を下ってゆくと、山頂部にまだ雪を残した富士山の姿が前方に見えて皆は大喜び。最後にこんなご褒美が待っているとは……と思ったら、これが最後ではなく、もうひとつご褒美が待っていました。ただ、道路交通法的に大丈夫?という問題がなきにしもあらずなので、こちらの「ご褒美」の説明は控えます。

日川曲り沢は、確かに「沢登り」というより「沢歩き」と呼ぶのがふさわしい、易しい沢でした。しかし、アプローチもよく、ちょっとした滝やナメもあり、最後には源流から詰めにかけての雰囲気を味わうこともできて、初めての沢登りには絶好です。登り着いた大谷ヶ丸周辺は広葉樹林が卓越していましたから、この沢は新緑の季節・紅葉の季節のいずれも楽しいことでしょう。

なお、これが初めての沢だったエリさんも、久しぶりの沢歩きだったトモミさんも、沢の楽しさを満喫してくれたようです。これをきっかけに、いろいろな沢へ一緒に行けるようになってくれることを期待します。また、遡行の大半において先頭に立ってパーティーを導いて下さったサチ子さんにも感謝です。次の計画、その次の計画もありますので、またよろしくお願いします。