塾長の山行記録

清津川サゴイ沢

概要:入山口は小日橋。初日は赤湯温泉の先、昌次新道が清津川を横断するところから入渓し、標高1,410mで幕営。二日目も遡行を続け苗場山から赤倉山へ続く尾根上に出て、赤湯温泉へ下降。

日程:2017/09/30-10/01

山頂:赤倉山1,939m

分類:上信越 / 沢登り

同行:ルーリー / ノダ氏

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五重ノ滝。上の画像をクリックすると、清津川サゴイ沢の遡行の概要が見られます。(2017/09/30撮影)
二段10m滝。あえてシャワークライムにする必然性はないのだが……。(2017/10/01撮影)
15m滝。この上で沢は平瀬となる。(2017/10/01撮影)

考えてみると今年は、6月の奥秩父・市ノ沢の一本しか沢登りをしていません。遡行適期は過ぎているような気もしますが、遅ればせながら沢登りに行きたいものと市ノ沢でご一緒したルーリーにお声がけしたところ、ルーリーとその山岳会仲間のノダ氏の山行に混ぜていただくことになりました。行き先は、前々から気になっていた清津川サゴイ沢。苗場山に東から突き上げてゆく沢です。

金曜日の夜、西武秩父線の稲荷山公園駅の改札でルーリーと落ち合って、ノダ氏とは初対面のご挨拶。その日は関越自動車道の赤城高原SAで前祝いの乾杯をして、お二人は車、私はテントで一晩を過ごしました。

2017/09/30

■07:40 小日橋 ■09:25-40 赤湯温泉

6時にSAを出発し、登山口となる小日橋に着いたのは7時15分頃。携帯電話が通じトイレもあるここで身繕いをして、まずは赤湯温泉を目指すことになります。

出発前にノダ氏から渡されたのは無線機で、こういうものを使ったことがない私は興味津々ではあるものの「使う場面があるのかな?」とこのときは思っていましたが、翌日このデバイスにずいぶん助けられることになりました。

小日橋から先にも林道が続いていて車で入れそうですが、歩き始めて30分ほどのところで山側の斜面の崩落があり、そこから先には車が進めない状態になっていました。もちろん歩行には支障なく、やがて棒沢にかかる橋を渡ったところから山道を登るようになりました。途中には「見返りの松」というポイントがあってここからDoCoMoが通じるようになっており、木の幹には商売上手なタクシー会社の案内板が掲げられていました(先ほどの小日橋から越後湯沢駅まで4人乗りタクシーで8,200円ということですから、これは十分リーズナブルです)。

途中でルーリーが見つけたブナハリタケを大量ゲットし、やがて急斜面を下るとサゴイ沢と清津川本谷を連続して渡る橋。その先、河原の風呂を「明日はここに入るぞ」と見下ろしながらさらに歩くとすぐに赤湯温泉山口館です。想像以上に立派な建物でついそのままここに泊まりたくなるところですが、ぐっとこらえてお風呂セットだけを預かっていただき、ハーネス等を身につけてから出発しました。

苗場山に向かう登山道は、宿の前を流れる清津川の河原を少し上流へ進んでから橋を渡って山道の登りとなり、尾根の乗越しにかかります。そのちょうど尾根上に赤倉山から下ってくる登山道が合流していて、翌日はここに降りてくることになるわけです。

尾根を越えて下り着いた沢が、清津沢の支流であるサゴイ沢です。お二人は小日橋からラバーソールの沢靴でしたが、私はここでフェルトソールの沢靴に履き替えました。

■10:05-15 入渓点 ■10:40 五重ノ滝

平凡な河原の入渓点から入ってしばらくは荒れた様相でしたが、小滝を一つ越えたら安定した様相になり、やがて五重ノ滝に着きました。

なぜ五重ノ滝なのかは不明ですが、これは一見して登るのは無理。しばらく戻って左岸にお助けスリングが残置されているのを発見し、そこから慎重に巻いてゆくとそこは先ほど見えていた滝のすぐ上にあるもうひとつの滝の上で、熊ノ沢を分ける二俣です。ルーリーとノダ氏はここから竿を出しながら行くことになりました。

続いて8m滝。これも右側から巻くことになりますが、沢筋に戻るには30mロープ1本を使って2回の懸垂下降が必要でした。2ピッチ目の懸垂下降はルーリー、ノダ氏、私の順番。最後の私が沢まで下る間に、先に降りていたルーリーはぬかりなくミズの実を集めていました。

沢が左に屈曲した先にまたしても登れない8m滝が右から落ちている場所に着きました。右から巻きか?しかし滝に近づいてよく見ると、遠目に見えていた滝の上にも4〜5mの滝が二つ続いていて、最後の滝から沢は左へ曲がっている模様です。よって右岸(左)巻き。草ぼうぼうの尾根を少し登ると崩壊地に出て、ざらざらの足元に少々緊張しながら登り続ければ、懸垂下降1ピッチで沢筋に戻れる場所に出ることができました。

これら三回の高巻きをこなしたあとは困難なところもなくなり、ゴルジュ状を楽しくへつったり、釜で試みに竿を出したりといった感じでのんびりと進みます。

■14:20 幕営地(1,390m)

やがて右岸から見事な多段滝を伴う支沢がまっすぐに落ちてくる場所の左岸に平坦地を見つけ、この先に幕営適地もなさそうなので、少し早いながらここで落ち着くことにしました。手早くテントを張って、男二人は薪集めと火熾し、ルーリーは魚釣りに上流へ。ここまで何度か竿を出したものの、骨酒の具にしかならないような小型一匹しか釣れていないので、ルーリーとしては何としても食料計画の穴を埋めたいところです。

沢もスキーも狩猟も釣りもこなすアウトドアマンのノダ氏が驚くほど太い薪を組み上げてしっかりした焚火を作ったあとも、ルーリーはなかなか戻って来ません。16時半まで待ったところで「もう飲んでもいいでしょう!」と男二人はお先に乾杯を始めたのですが、その直後にルーリーが戻って来ました。ルーリーの話では、ここからほんの少し上流の淵の中に魚がうようよ泳いでいるのが見えたそうですが、季節的に食欲がないのかなかなか食いついてくれず、結局釣果は一匹でした。

ともあれ、自然の恵みを美味しくいただきます。

夕食のメインはノダ氏が持ってきて下さった具だくさんのキムチ鍋。びっくりするくらい肉が入っていて、これなら魚がなくてもタンパク質補給には問題ありません。もちろん、釣れた魚は塩焼きと骨酒になって、食卓をさらに豊かなものとしてくれました。

2017/10/01

■06:50 幕営地(1,390m) ■09:40-45 二俣 ■10:25 藪漕ぎ開始 ■11:15 登山道

5時半起床。前夜は20時に就寝しましたから、9時間余りも寝たことになります。ルーリーは寒い思いをしたようですが、私はありったけ着込んだ上にNeoAirマットのおかげで暖かく眠ることができました。

朝日がさして下流の木々が赤や黄色に美しく染まる中、昨夜のキムチ鍋の残りに焼き目をつけたモチを入れた温かい朝食で元気になり、朝のお勤めもすませてから出発です。

淵の中で悠然と泳ぐ魚たちに未練の視線を送りながら先に進み、突き当たりで左右に分かれる二俣は左へ。二段二条7m滝は左から歩いて越えることができましたが、その先に出てくる7m滝は細長い釜の左側をへつり、反対側に回り込んでそちらにある滝の左壁を登るという楽しいものです。

そのすぐ上には二段10m滝が控えていて、下段は左壁を簡単に上がれますが、上段はちょっとルートファインディングが必要。最初に取り付いたノダ氏は巧みに上段左側の弱点を突いて、まったく濡れることなく抜けていったのですが……。

なぜそこでシャワークライムをするのか……。

容易な小滝をひとつ越えた先に出てきた釜の向こうの5m滝は、右から行けば膝までしか没しないで滝のすぐ下まで近づくことができるのですが、滝を登ろうとすると水圧をもろにかぶりそう。この季節にそれはないだろう、ということで左から巻きました。そして巻き終えた先に続いて顔を見せたのは立派な12m滝です。よそ様の記録ではこの釜を泳いで滝の左を登ったり、右壁をへつって滝の右手を上がったりしていますが、やはりこの水量と水温では正面から勝負を挑むという発想は出てきません。しばらく左右を眺めているうちに釜の右にあるカンテの手前側の凹角状が弱点となっていることに気づき、この遡行で唯一ロープを出しての登りとなりました。ほぼ狙ったライン通りに高度を上げ、20m強登ったところで左のカンテに乗り移ればトラバースできそうなラインが見えてきます。ここで灌木にスリングをセットしてロープを固定し、ルーリーはタイブロックで後続。最後に登ってきたノダ氏がそのまま斜度の緩い草付き斜面をトラバースして、12m滝の落ち口のすぐ上に降りることができました。最初に渡された無線機の威力を感じたのはこの高巻きの場面で、ルートの状況やロープのセット、後続の行動開始など、登攀上必要とされる意思疎通を肺活量に依存せずに実現できるのはすごいことだと心の底から感心しました。

さらに容易な小滝をいくつか越えて次のポイントとなったのが、トポに出てくる最後の15m滝です。見た目にはそれほど高さがあるようには思えませんが、とは言え滝自体は立っているので何らかのラインを見出してここを突破しなければなりません。手前左から合わさる細い支沢を登れればその上の安定した笹薮に入れそうですが、支沢の登りは手がかりのない垂直な凹角になっていてこれも無理。結局、右から滝に近づいて釜をかわした後に左壁の弱点に取り付いて一段上がるラインを採用することにしました。ここも最初に私が登りましたが、右壁のへつりは手が甘くて若干微妙。左壁の弱点を登る箇所は容易ながらその上に立ったところで笹に手が届かないなと見上げていたら、背後で見上げていたノダさんから無線機を通じて、さらに落ち口に近づけば笹や灌木をつかめるようになるというアドバイスが飛びました。

こうして15m滝を越せば沢は穏やかな平瀬となり、彼方には抜けるような青空の下に苗場山の平らな稜線を見ることもできるようになりました。そして、少し進んだところが幕営適地とされる標高1,570mの二俣で、ここは左へ。その後、釜を持つ連続した小滝二つを過ぎれば完全に源流の様相となって、やがて水涸れとなりました。

記録によっては2時間もの藪漕ぎを強いられているものもあるのですが、我々は左俣の途中から南の谷筋に入り、さらに標高1,750mで左手の尾根に乗り上がったところ、50分ほどで登山道に出ることができました。ここは苗場山の頂上台地から赤倉山へ向かう尾根筋の途中にあたります。

■12:15-20 赤倉山 ■13:45-14:25 赤湯温泉 ■15:55 小日橋手前

あとは登山道を下るだけ。沢装備を解除し、私はもとのアプローチシューズに履き替えました。

少しばかり登り返しがつらい赤倉山の山頂は、樹林の中で展望皆無。登山道はここから南南西の佐武流山へ続いていますが、赤湯温泉へは少し戻った分岐点から東へ下ります。

下降路はよく刈り払われていて明瞭な登山道でしたが、枯れた笹の葉で最初のうちは滑りやすく神経を使いました。しかしやがて足元が安定した道になり、紅葉の始まりを鑑賞するゆとりも生まれてきます。

思ったより早く昌次新道との合流点に着き、そこからわずかで赤湯温泉でした。

極楽……。男湯は玉子の湯と薬師の湯、女湯は青の湯。それぞれ温度も成分も異なるようです。そして最後は元来た道をてくてく歩いて、小日橋まであと15分くらいのところで先に下っていたノダ氏の車による出迎えを受けました。


アプローチの長さはあるものの、サゴイ沢は巻きもさほど悪くなく、登れる滝もいくつもあって楽しい沢でした。あれだけ姿が見えていたのに魚が思ったほど釣れなかったのは唯一残念な点でしたが、産卵期を控えているからという季節要因なのでしょうか?だとすれば、夏に遡行すればもっと釣れるかもしれませんし、暑い日なら我々が巻いたいくつかの滝も問題なく直登できることでしょう。詰めの藪漕ぎも上述のとおりで、総合的にみてこの沢は沢登りに癒しを求める人にお勧めです。

打上げは、人里に出て最初に現れたセブンイレブンの揚げ鶏とノンアルコールビールでの乾杯。これは美味い!やみつきになりそうです。ともあれルーリー、ノダさん、二日間たいへんお世話になりました。次はアイスクライミングで、そして来年の夏・秋はまた沢登りで、末長くお付き合い下さい。