塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

ジョウゴ沢

日程:2016/03/21

概要:美濃戸から赤岳鉱泉経由ジョウゴ沢。ナイアガラの滝を登っただけでそのまま稜線に抜け、硫黄岳山頂から赤岳鉱泉に下り、美濃戸へ戻るワンデイアイスハイキング。

山頂:硫黄岳 2760m

同行:かっきー

山行寸描

▲ナイアガラの滝全景。これで「ナイアガラ」と言うのは看板に偽りありだと思う。(2016/03/21撮影)
▲リードする私。手掛かり足掛かりが豊富で簡単だった。(2016/03/21撮影)
▲硫黄岳の南の稜線から赤岳方面。右下にジョウゴ沢が見えている。(2016/03/21撮影)

この連休はかっきーと少し大きなアルパインアイスに行こうという計画だったのですが、お天気はあいにくの土曜日雨模様。気温も高いしこれは自重しようということで意見が一致し、ワンデイでジョウゴ沢を遡行することにしました。

2016/03/21

△09:00 美濃戸 → △10:25-11:00 赤岳鉱泉 → △11:05 ジョウゴ沢出合 → △11:50-12:15 ナイアガラの滝 → △13:40-50 稜線 → △14:05 硫黄岳山頂 → △14:50-15:10 赤岳鉱泉 → △16:00 美濃戸

朝の6時に高尾駅で合流し、中央自動車道を八ヶ岳方面へ。途中の双葉SAで朝食をとるのも我々のパターンと化してきました。

美濃戸からは道が少々凍っており、私は早々にチェーンスパイクを装着しましたが、そうした文明の利器に背を向けているかっきーは本ちゃんアイゼンの爪が減るのを嫌がってノーアイゼンで頑張ります。途中でクマ?という場面もありましたが、よくよく見れば木の芽を食べることに余念のないカモシカでした。

今日は晴れの予報でしたが、西からの天気の回復がまだ追いついていないらしく、赤岳鉱泉に着いたときにはあたりはガスの中。時折は小雪もぱらついていました。

優雅にアイスキャンディーを登るブルジョワジーな人々を眺めながらギアを装着し、我々一般ピープルはジョウゴ沢へ向かいます。大同心沢には踏み跡あり、裏同心ルンゼは出合が新雪に覆われて踏み跡なし、そしてジョウゴ沢ははっきりとトレースが上流に向かっていました。ありがたく踏み跡を辿っていくと、初心者の練習によく使われる(私もかつて使った)F1はちゃんと凍っているものの、左側から雪の上を踏んで越えることができました。

しばらく進んで現れるF2はそこそこ高さがある滝ですが、左半分は水が流れており、右半分からワンポイントだけアックスを使う箇所がある他は雪の上の階段状を歩いて通過しました。そしてこの頃になってようやく雲が切れ始め、青空が覗くようになりました。

ジョウゴ沢にはずいぶん昔にガイド講習で来たことがあるのですが、まったくと言っていいほど記憶がありません。すっかり埋まったF3をチラ見し、さらに右俣の奥に大きな滝がかかっているのをやり過ごして本流を詰めましたが、目の前に展開するダイナミックなゴルジュ地形には感動を覚えました。

狭いゴルジュを抜けると目の前に立派な氷瀑があり、先行パーティーがトップロープを張っているところでした。左奥にも滝が見えているのを確認してから、先行パーティーのビレイヤーがこちらを振り向いたタイミングをとらえて声を掛けました。

私「そこは何という滝ですか?」
ビ「乙女の滝です。あっち(と左奥の滝を示して)がナイアガラの滝です」
私「(あちらの滝に行けということだな……) ありがとうございます!」

見るからに乙女の滝の方が立派そうでしたが、ここは彼女の希望(?)を尊重することにしました。

本流に対して乙女の滝は右の支流、ナイアガラの滝は左の支流。本流の奥に大滝が見えていてそちらも今日のターゲットですが、ナイアガラの滝を越えて草付をトラバースすれば本流の大滝に着くことができるという情報を仕入れていたので、まずはナイアガラの滝へ向かいました。

こちらでは先行2人組が休憩中。ご多分に漏れず滝の下部は雪に埋もれてスケールがなくなっており、これで「ナイアガラ」の名前を使うのは御本家様に対して失礼に当たるのではないか?という疑問を拭うことができません。ともあれ、左寄りの弱点と思われる浅い凹角を登ることにしました。

リードはスクリューをぶら下げている私となり、そのまま本流の大滝へ向かうためリュックサックを担いだまま取り付きましたが、登り込まれているせいか穴や段差が多くアックスは引っ掛けでいける上に、足も今回履いてきたデュアルポイントで何ら問題なく決まります。快適というか楽勝というか、微妙な感じです。

落ち口の上の右岸側にボルトが打たれており、そこに支点を作って後続のかっきーを迎える頃にははっきりと青空が広がり出し、南八ヶ岳の主だったピークを一望できるようになってきました。

この展望に恵まれただけでも、来た甲斐があったというものです。

ナイアガラの滝を抜けたらそのままコンテで上流に進み、適当なところで右手へのトラバースにかかりました。後から思えばこのトラバースを開始する位置が高過ぎたようで、もっと低い方向へトラバースしなければならなかったのですが、歩いているときはこれが自然なラインだと思っていました。

しかし、本流筋と思われる地形に降り立ってみると上流には滝らしいものは見当たらず、どうやら大滝よりも上に出てしまったようでした。ここから沢筋を下って大滝を懸垂下降する(さらに乙女の滝を登る)という選択肢もありましたが、今回はもともと稜線まで抜けようという申合せになっていたので、そのまま上を目指すことにしました。

ちょうど適当なボルダーがあり、その足元の雪がえぐれて穏やかな平坦地を提供してくれていたのでここでロープを畳み、「ナイアガラを登って大滝を探す」ということで大瀧詠一の歌を2人で口ずさみながら、しばし日向ぼっこをしました。

登高を再開すると既に沢形はぐっと浅くなっており、稜線部には硫黄岳への登山道の特徴である大きなケルンが見えてきました。

最後に草付の斜面を登れば、横岳から硫黄岳への登山道に飛び出しました。ちょうど横岳方面から登山者数人が歩いてきているところで、少し言葉を交わしてから一緒に硫黄岳に向かいました。

爽やかな八ヶ岳の風景(歌の心はちょっと哀しいものですが)。風も八ヶ岳にしては穏やかで、時間にゆとりがあるならこの景色の中にいつまでも浸っていたくなります。そしてジョウゴ沢は、上から見下ろすとまさしくジョウゴの形であることがよくわかりました。

硫黄岳の山頂に着いたら後はひたすら下るだけ。雪の状態もよく、下降がはかどりました。

アイスキャンディーは今日で営業終了で、アイスクライミングのシーズンが終焉に向かいつつあることを実感しました。そうした中、今回のジョウゴ沢の遡行は易しいアイスハイキングとしては楽しいものでしたが、クライミングとしてはあっけなさ過ぎました。次にジョウゴ沢に入るときは、あちらの滝こちらの滝と廻ってみたいものです。

アイスクライミングのシーズンが終わりということは、甲府の「美味小家」に通う機会もなくなるということを意味しています。せっかく常連の象徴である専用箸をもらえたばかりだというのに……。

そんなわけで、帰路の車の中での話題の一つは「こちら方面で沢登りの面白い課題はないものか?」でした。