芦安上荒井沢ビギナーズ

日程:2015/01/25

概要:日帰りで手頃なアイスはないかとガイドブックを探して芦安上荒井沢の氷瀑へ。カモシカルンゼが目標だったものの、先客がいたためにビギナーズの「ステップアップ」だけに終わる。

山頂:---

同行:かっきー

山行寸描

▲ステップアップ1ピッチ目。見た目は傾斜が寝ているようだが取り付いてみると意外に立っていた。(2015/01/25撮影)
▲ステップアップ2ピッチ目。短いように見えて、上からビレイポイントを見下ろすとそれなりに高さがあった。(2015/01/25撮影)

2015/01/25

△08:40 桃の木温泉の奥 → △10:00-13:50 ビギナーズ → △14:40 桃の木温泉の奥

例によってかっきーと朝6時に高尾駅前で合流して故障に喘ぐかっきー号をだましだまし中央自動車道を走り、さらに芦安温泉の先の桃の木温泉まで進んで林道を奥へ入ったところで猟友会のおじさん(?)からアドバイスをもらい、沢筋がイデノ沢と御勅使川の二手に分かれ巨大な堰堤が見られる地点まで車を進めました。

目指す氷瀑は、正面(左寄り)の御勅使川のわずかに上流に左(右岸)から入る上荒井沢沿いにつけられた林道をさらに上流へ進んだ先にあります。

林道と言っても荒廃しておりもはや車の通行は不可能ですが、人が歩く分には支障なく、最初に数回の渡渉があって凍った岩に足を滑らせて尻餅をつく場面もあったものの、その後はおおむね安定した道の形をとどめていました。

ゆっくり30分ほども歩いて左岸にかかっている立派な氷瀑=トリコルネに達したところ、ちょうど3人パーティーのリードが落ち口に達しようとしているところでしたが、この見栄えのする滝の様子には目を見張りました。

……が、トリコルネは見るだけにして、さらに林道を先に進みます。

今回の我々の目標は顕著なF1を林道すぐの位置にかけてこれまた見栄えの良いカモシカルンゼでしたが、こちらも1組が取り付いているところ。少し待てばもう1本ラインを引かせてもらえそうでしたが、とりあえず先の方を偵察してみるかと歩みを進めました。しかし、すぐに出合に達するマシラには6人が入っているとのことでこちらもアウト。

だんだん登る滝がなくなってきたことに焦りを感じながら林道を詰めて、林道終点のさらに先に沢筋を進むと左岸にビギナーズの氷瀑が現れました。手前が「入門の滝」、奥側が「ステップアップ」で、後者の方はそれなりに登りごたえがありそうです。沢を渡って「ステップアップ」の前に陣取っていると、車を駐めたところからずっと後続してきていた男女2人組がやってきました。そして我々がギア装着をのんびりしているのを見てとったらしい2人は、素晴らしいスピードで準備を済ませると挨拶もなしにさっさと滝に取り付いてしまいました。これに驚いたかっきーが思わず抗議しましたが後の祭り。確かにクライミングでは先に取り付いた者の勝ちですから、2人を非難するわけにはいきません。

とは言うものの「さっさと登って下の滝に移動しますから」という言葉を残して2人組の男性の方が氷にアックスを打ち込むのを指をくわえて眺めているうちに、彼の技量では「さっさと登って」というのは難しそうであることが判明しました。しかも苦戦しながら上に抜けた彼が奥の氷瀑にスクリューで支点を作ってから後続の女性を引き上げようとすると、今度は女性の方がロープをハーネスに結んでおらず、引っ張られるロープを必死に止めながらハーネスに結ぼうとする始末。そこは手を抜かないで欲しかったな……。

女性の方が登りきってもしばらくは上から氷塊が降ってきていましたが、それが収まった頃合いを見計らってかっきーリードで我々もスタート。スムーズに抜けていって右岸の灌木にビレイポイントを作ったかっきーからのコールで私も後続しましたが、出だしの滝は易しげな見た目とは裏腹に意外なほど傾斜が立っていて、そこそこ歯ごたえがありました。当初の予定ではこの出だしの滝をお互いにリードすることになっていたのですが、前方には短いながらも氷瀑が見えているし、どうせ我々が登ろうとするところへ先行パーティーが懸垂下降で降りてくることになるだろうからここで降りてしまうのは得策ではありません。それなら我々も彼らに続いて2ピッチ目を登ってしまおうと方針を変更し、そのままつるべで前方に進みました。雪の斜面を登り緩傾斜から短い急傾斜部を抜けてみるとそこから先に氷はなく土や岩の上に薄く雪が乗っただけの状態で、先行パーティーもその先へ進むことを断念し、向かって右寄りの灌木に際どい態勢で寄りかかって懸垂下降の準備をしていました。

私もそちらに移動して2人が下り終えるのを待ったのですが、私がこの位置に着いてから2人目が懸垂下降にかかるまで優に30分。さすがにこれは時間の掛け過ぎではないかと思います。ようやく明け渡された灌木にセルフビレイをとった私のコールを受けて2ピッチ目を登ってきたかっきーは憮然とした表情でしたが、これだけ待たされては私も戦意喪失。もう「さっさと下ろう」と話し合って懸垂下降に入りました。

かっきーが灌木の位置に到着してからロープをセットし、まず私がぶら下がってロープを捌きながら下降。50mロープ2本では微妙に下まで届かなかったので出だしの滝の落ち口上の左岸の灌木でピッチを切ったところでコールし、上で待っていたかっきーが降り始めるまでの所要時間は15分でした。

下に着いてから未練がましく「入門の滝」の方も眺めてみましたが、ランペ状に寝ているこの滝にはもはや食指が動きませんでした。

仕方なくロープをしまい、万が一にもカモシカルンゼが空いていれば……と儚い望みを抱きつつ下ったのですが、カモシカルンゼは朝にも増して盛況で取り付く島がありません。そんなわけで、傷心のままに下山することになったのでした。

アイスクライミングは不完全燃焼に終わりましたが、アフタークライミングは満足のいくものとなりました。

白根桃源天笑閣というお笑い系(?)のネーミングの温泉で時間調整をした後、前回定休日のために食べ損ねた甲府の「美味小家」の厚切りロースかつ定食に舌鼓を打ち、近日中のリベンジを誓い合って、どうにか明るくこの日の山旅を終えることができたのでした。