南沢小滝

日程:2014/03/21-22

概要:アルパインガイド保科雅則氏の保科クライミングスクールの講習で、初日は美濃戸の赤岳山荘に設置された人工氷瀑、2日目は南沢小滝でのリード講習。

山頂:---

同行:保科雅則ガイド

2014/03/21

山行寸描

▲赤岳山荘での講習会風景。ここの人工氷瀑は赤岳鉱泉のアイスキャンディほどの大きさはないものの、基本練習には十分な大きさがある。(2014/03/21撮影)

△10:00- 赤岳山荘

今回は保科ガイドのアイス講習の仕上げとしてリード講習に参加しました。初日は美濃戸の赤岳山荘の人工氷瀑で基礎練習です。

保科ガイドの車でアイスバーンの道を美濃戸まで入って、赤岳山荘の部屋に荷物を置いたら道路を挟んだところにある人工氷瀑へ。まずはTRで登ってウォームアップし、ついでTRでスクリューを入れる練習。さらにTRなしでのリード練習。腕が張ってしまわないように休みながら登るのですが、この日は上空に寒気が入っていて時折雪がぱらつく極寒の気候だったために、待っている間も足踏みしていないとやりきれませんでした。

赤岳山荘の屋内でストーブにあたりながらの昼食休憩の後、今度は支点構築の練習をすることになりました。リードで登って、ロープいっぱいになった(つもりの)ところで最初のスクリューにまずセルフビレイをとり、ついで2本目のスクリューを斜め下の位置に入れて支点を作って後続を迎えるのですが、ここでアクシデント。下で支点構築の手順を確認しているときに、私のPASにつけてある安全環付カラビナがスクリューの穴にはまって抜けなくなってしまったのです。カラビナのサイズが大き過ぎる上に、体重をかけた拍子にスクリューのハンドルの形状と絶妙に合ってしまったようですが、再度体重をかけてカラビナを歪ませてなんとか外すことができました。セルフビレイ用のカラビナは大きければいいというものではないということを図らずも学習したわけです……。

さらにアバラコフの作り方を学習して、ここでこの日の講習は終了しました。この日練習したことはすべて、翌日の南沢小滝で実践に移されることになります。

温かい赤岳山荘に戻り、美しい夕景色を眺め、カモシカのような犬にちょっかいを出して機嫌悪く唸られ、おいしいステーキの夕食をいただいて、後は爆睡でした。

2014/03/22

山行寸描

▲よく発達した南沢小滝。右端・中央右寄り・左端の3本をリード&フォローで登った。(2014/03/22撮影)
▲アバラコフでの懸垂下降。自分で作ったV字スレッドほど信用できないものはない……ような気がする。(2014/03/22撮影)

△08:10 赤岳山荘 → △09:25-15:10 南沢小滝 → △15:40 赤岳山荘

午前7時からの遅めの朝食の後、昨日とは打って変わって無風快晴の中を南沢沿いの道に入りました。

通い慣れたこの道をゆっくり歩くこと1時間余りで南沢小滝。滝の近くにテントが張られていたものの小滝には誰も取り付いておらず独占状態かと思いましたが、やがて後から他のパーティーもやってきてそこそこの賑わいになりました。もっとも続々と上がって来るクライマーたちは大半が南沢大滝へ向かったようで、小滝の方の混み具合は講習には困らない程度でした。

今日の受講生はこの日から合流した方も含めて5人。私は昨日の練習でも安定したクライミングが際立っていたYUさんと組んで、交互にリードすることになりました。まずは右端の傾斜が緩くボコボコに穴が空いた易しいラインをリードして、そのまま奥の左岸の木に掛かった残置支点まで進んでロワーダウン。2本目は中央右寄りのやや立ったラインを登って、落ち口の上にスクリュー2本で支点を作って後続を迎え、つるべで進んだセカンドが残置支点まで進み、最後は2人とも残置支点から懸垂下降。アイスクライミングでのリード経験はあまりないので緊張するかと思っていましたが、保科ガイドの淡々とした口調に乗せられたのか、こちらも怖さを感じることもなく淡々と作業をこなす感覚で登ることができ、気が付けばリードできていたという感じです。

練習の合間に南沢大滝を見物に行きましたが、2月下旬に登ったときと比べてはっきりと滝が発達しており、傾斜もきつくなっている感じでした。振り返れば雲一つない青空の下に北アルプスが姿を見せていて、これはどちらかといえば縦走日和です。

最後の練習は左端のやや立ったラインを登って、落ち口上に抜けたところで支点を作って後続を迎え、さらにアバラコフで懸垂下降するというものです。氷が硬く割れやすくてさすがに少々慎重な登りになりましたが、スクリュー4本をこまめに入れて登りきり、さらにセカンドも登って2人揃ったところで、セカンドがスクリューでV字スレッドを作りました。元来、懸垂下降用のスリングは捨て縄となるのですが、ここではロープが60mと長いのでスリングの片方にカラビナをかけてロープの末端を留め、滝の下に着いたところから折り返してスリングを通しました。画像の左側からクイックドローがスリングに掛けられていますが、これは最初の1人が下りるときのバックアップ用。2人目が下りるときは支点を回収するため、バックアップなしになります。二つの穴の間隔が近いように思えますが、広くて浅いよりは狭くても深くした方が良いのだとか。

V字スレッドの強さは昨日の練習でも確認済みですが、それでも自分たちで作ったV字スレッドで懸垂下降するのはやはり怖い。文字通り清水の舞台から飛び降りるようなつもりで、しかし飛び降りるのではなくなるべくそっと荷重をかけて下りました。そして無事に滝の下に降り立ってロープを引くとあら不思議(ではありませんが)、スリングがちゃんと回収できました。

ここでこの日の講習も終了となり、明るい雪道を美濃戸に下りました。本当は講習は翌日も南沢大滝を舞台に続くのですが、私は日曜日に所用ができてしまったためにここで皆さんとお別れです。保科ガイドに美濃戸口まで車で送っていただき、下界の人となりました。

さて、この2日間で学んだことを今シーズンのうちにもう一度おさらいしておきたいのですが、果たしてその機会が得られるかどうか……。