甲斐駒ヶ岳(敗退)

日程:2012/10/06-07

概要:初日、黒戸尾根を七丈小屋まで。翌日、八丈バンドを渡る予定だったが、雨のため中止し、そのまま黒戸尾根を下降。

山頂:---

同行:ケイ氏

山行寸描

▲初日。小淵沢でケイ氏と合流し、黒戸尾根を七丈小屋まで。(2012/10/06撮影)
▲翌日。しっとりとした日本の山の秋の風情を堪能しながら、黒戸尾根を下降。(2012/10/07撮影)

2006年に甲斐駒ヶ岳の赤石沢奥壁中央稜を登ったとき、その取付まで辿った八丈バンド(第一バンド)はかつて講中の登拝路(御中道)として摩利支天峰まで歩かれていたという話を聞き、それ以来、いつか自分もここを歩き通してみたいと思っていました。そして、この体育の日の連休は当初違うパートナーと違うプランを持っていたのですが、先方がNGとなってしまい、急遽、先日正沢川細尾谷を一緒に登ったばかりのケイ氏に声を掛けて、温めていたこのプランを実行に移すことにしました。

2012/10/06

△10:25 尾白川渓谷駐車場 → △14:20-30 五合目 → △15:15 七丈小屋

名古屋在住のケイ氏と小淵沢駅前で合流。ケイ氏はバイクでやってきていて、私を後ろに乗せて登山口までひとっ走りとなりました。バイクの後ろに乗せられたのはこれが初めてですが、なにしろタイヤが二つしかないので(←当たり前)ちょっと怖いものがあります。そしてその疾走感は、昨年の中国旅行の際に嘉峪関で経験したタンデムフライトを連想させました。

竹宇駒ヶ岳神社からは、これが5回目になる黒戸尾根の登り道。一番最近登ったのは今年の1月の遺品回収山行で、少々気の重い登り下りでした。しかし今回は純粋に登山を楽しむための登高で、小屋泊まりであるおかげでリュックサックも軽やか……のはずなのですが、ケイ氏はおでんやらワインやらを詰め込んだ16kgの重荷を担いでいます。山はちょうど実りの季節で、明るい広葉樹林の尾根下部は随所に木の実が落ちており、それを拾うサルの群れやリスの旗尾が目を楽しませてくれました。

刃渡りでは背後に八ヶ岳から甲府盆地までの大きな展望が開けましたが、やや曇りがちです。しかし天気予報ではそれほど悪い天気にはならないはずなので、明日もこの程度に見通しが利いてくれることを期待しながら高度を上げ続けました。

五合目の上あたりから黄紅葉が目立つようになり、やがて七丈小屋に到着。昨年の1月にもお世話になった小屋番の田部さんは私の顔を見て「明日の赤蜘蛛は5、6パーティー入りますよ」といきなりのご託宣でしたが、いえいえ今回の目的は赤蜘蛛ルートではございません。八丈バンドのことを聞いてみると大丈夫、渡れるとの話で安心しました。

寝具付素泊まり@4,500円の我々は第二小屋に場所をあてがってもらい、ケイ氏持参の赤ワインで乾杯してから小屋の外に出ておでんの夕食としました。ストーブに乗せられたやかんのお湯が使い放題のこの小屋では調理も楽チンで、小屋の周辺や八合目に向かう斜面の黄紅葉を愛でながら食べ飲みしているうちに、いつの間にか1.5リットルあったワインのペットボトルが空になりました。さすがにこれは飲み過ぎで、暖かい小屋に戻って横になると久しぶりに天井が回る感覚を感じました。

2012/10/07

△07:05 七丈小屋 → △07:50-55 五合目 → △10:40 尾白川渓谷駐車場

山に来てまで飲み過ぎる我々を神様がお咎めになったのか、夜半に強い雨が降りました。二日酔いの頭でうとうとしながら時折目を覚まして外の様子を窺いましたが、雨が上がる気配はなく、これは今回はダメだなと思いながら明るくなるまでごろごろしました。他の宿泊者たちも出発を急ぐ気配はなく、小屋の中にはまったりとした諦めのムードが漂います。

6時になって外に出てみると、雨は上がって上空には半月が見えており、空の高いところは青みがかっていました。しかし朝食を作っている間にもぽつぽつと落ちてくるものがあり、やがて小屋周辺まで雲が下りてきてあたりはガスに包まれました。山頂に行くだけなら支障のない天候ですが、ケイ氏も私も甲斐駒ヶ岳の山頂にはこれまでにも立っていますし、今回の目的のルートは情報が乏しいだけに岩が乾いた状態で辿りたいもの。今回はあっさり諦めてここから下ることにしました。

雨に濡れた美しい苔、落ち葉、樹林など、日本の秋ならではのしっとりした情景を堪能しながら下る途中、刃渡りの下の笹の急斜面の途中でケイ氏の山スキー仲間HEIDI氏と遭遇しました。日帰りで黒戸尾根往復だそうですが、ケイ氏自身も含めこの人脈は健脚揃いでホントかないません。どういうトレーニングをしたら、あの脚力が生まれるのか。

横手登山口への分岐を過ぎてからもだらだらと長い下りが続きましたが、終わりの来ない旅はなし。やがて尾根を回り込んだところから沢の音が聞こえるようになって、そこからひと下りで登山口に下り立ちました。あいにくの天候のために今回は七丈小屋往復に終わってしまいましたが、秋山の風情に心癒されたから収穫ゼロというわけでもなかったかな。ケイさん、お疲れさまでした。