湯檜曽川東黒沢〜宝川ウツボギ沢

日程:2012/09/01-02

概要:白毛門登山口から東黒沢を遡行し、丸山乗越を越えて反対側の沢を下り広河原に幕営。翌日、ウツボギ沢を遡行して白毛門と笠ヶ岳の間の稜線に達し、白毛門を経て出発点に戻る。

山頂:白毛門1720m

同行:セキネくん

山行寸描

▲繰り返し現れるナメ。上の画像をクリックすると、湯檜曽川東黒沢の遡行の概要が見られます。(2012/09/01撮影)
▲唯一巻いた滝。上の画像をクリックすると、宝川ウツボギ沢の遡行の概要が見られます。(2012/09/02撮影)

ジム仲間セキネくんを沢登りに案内することになり、私がまだ行ったことがない癒し渓という条件で行き先を考えた結果、白毛門の南から東を巡る東黒沢〜ウツボギ沢の継続とすることにしました。東黒沢は以前ナルミズ沢を遡行したときに経験済みですが、ウツボギ沢の方はそのときに誤って途中までは遡行したもののきちんと登ったことはまだありません。というわけで、ネット上の諸々の記録で予習して当日を迎えました。

2012/09/01

△09:50 白毛門登山口 → △10:25 白毛門沢出合 → △12:25 丸山乗越 → △13:00 広河原

私と同じく目黒区在住のセキネくんに午前6時に車で私の自宅のすぐ近くまで迎えに来てもらって、そのまま関越自動車道へ向かいます。出だしこそ事故処理渋滞に巻き込まれましたが後はスムーズに走れて、白毛門登山口の駐車場に9時半頃に到着しました。

信号機カラーのユニフォームが眩しいキャニオニングツアー参加者の皆さんが次々に入渓していく中、我々も沢装備に身を固めて東黒沢左岸の道を進みました。

ツアーの皆さんと前後しながら遡行することしばしで、ハナゲの滝に到着。見た目の立派さとネーミングとのギャップに毎度悩みながら登る滝ですが、今日は水量が比較的少なめでまったく安全に水流の左を登り、上部で水流をまたぎ越して左岸に渡ることができました。そのすぐ上にはウォータースライダーができる場所があって、たぶんツアーの行程はここまでなのでしょう。スーパーマン風に前向きに飛び込む参加者を眺めながら、こちらはさらに上流へと遡行を続けました。

明るいナメ床を過ぎ、さらに白毛門沢を左に分けて東黒沢本流を遡行し続けると、ナメの先で両岸が迫って小さなゴルジュになりました。ここは右から巻くこともできますが、セキネくんがせっかく沢登り初体験なので、そのままトロ場に突っ込んでもらうことにしました。水は腰の高さまであってその冷たさがぐっと身体を引き締めますが、すぐに出口の段差を乗り越して左へ上がれば、釜・樋・3段滝とこの沢らしいこじんまりした楽しみが待っています。

緩やかなナメ滝の先のナメをひたひたと歩いて、支沢を右に分けて左に進むと段違いに連なる2段の大きな滝。しかし上部には倒木やガレが積み重なっていて、かなり荒れた状態です。ここはもっときれいな滝だったはずだが?と首をひねりながら登ってみると、左岸の岩壁が比較的最近、それも大きく崩れた跡がありました。なるほど、どんな癒し渓でもこうした崩壊の要素をどこかに秘めているということか……。

またしても長く続くナメを慈しむように歩き、そして右から簡単に越せる滝は上部の樋部を合わせれば20m滝となるところ。さしもの東黒沢も楽しいところはここまでで、後は丸山乗越まで高度を上げていくだけになります。

草ぼうぼうの因縁の(?)二俣は2004年に遡行したときには右に行って苦労させられたのをよく覚えており、今回はもちろん左へ進んだところ、二俣の少し先でこの日初めて先行パーティーに追いつきました。3人パーティーが2組で行動していましたが、おそらく同じ会なのではないかと思いながら後についていくと、途中で次々に抜かさせてくれました。

丸山乗越までの間にも小段差やおむすび状の岩などがあり、適宜巻いたり直登したりしているうちに水が涸れて、笹薮っぽくなりました。沢形を追っていくと最後に三俣が現れ、これを左に行けば最低鞍部に着いたのだと思いますが、コンパスが示したのは右。このため最低鞍部よりも丸山へ少し寄ったところに上がってしまいましたが、さしたる苦労なく軌道修正して宝川側の沢筋に下ることができました。

丸山乗越を越えて宝川側に下る沢筋はすぐに水を集めてはっきりと沢の様相を示し、ところどころに小さな段差も持っていましたが、いずれも問題なくクライムダウン(1カ所だけ右から巻き下り)可能です。30分もたたないうちにウツボギ沢の本流に合流し、そこからわずかの下降で宝川の広河原に到着しました。結局、途中休憩をとることもなくノンストップの3時間強でこの日の行程を終えてしまったことになります。

多くの記録では宝川本流とウツボギ沢とに挟まれた河原状の場所にテントを張っていますが、以前ナルミズ沢を目指したときに他のパーティーのメンバーが宝川左岸の樹林帯に上がっているのを目撃していたのでそちらを偵察してみました。すると1カ所かすかに登り口らしい踏み跡があり、そこから乗り上ると樹林の中にテント3張り分くらいの広場が作られていました。ここならどんなに増水してもまず大丈夫。それに薪の調達にも都合が良さそうですし、何より柔らかい下地の上で快適に眠れそうです。くだんの河原は後続の6人パーティーに譲ることにして、この樹林の中の広場に我々のテントとタープを設置しました。

到着が早過ぎてすることもないまま、宝川下流からやってくるパーティーを見送ったり、後続の6人パーティーがノコギリ片手に薪の調達にいそしむ様子を見やったり、近くのボルダーによじ登ってみたり。実は、この朝の移動の際にコンビニに立ち寄りそびれ、沢泊まりに必須のアルコールを調達し忘れていたために、思い切り手持ち無沙汰になってしまっていたのでした。

暗くなりかけた頃にスコールが激しく降りましたが、幸いにも少しの時間で雨は上がり、かき集めてあった薪に点火すると気持ち良く燃えてくれました。セキネくん持参のグリーンカレーの夕食をおいしくいただき、薪を寄せ上げて燃やし尽くす態勢を整えてから20時頃に就寝しました。

2012/09/02

△05:45 広河原 → △08:20-50 登山道 → △09:30 白毛門 → △11:25 白毛門登山口

身長の高いセキネくんはタープの下、私はテントの中で、それぞれ暖かく1晩を過ごして午前4時起床。夜半に一時的に雨がぱらつきましたが、起きてみれば空には星も見えていました。

さっそく焚火を熾し、パスタの朝食をとってから燃やすべきものをすっかり燃やしきって満足したところで、この日の行程を開始しました。

河原に泊まったパーティーに挨拶し、昨日下ったウツボギ沢を上流へとどんどん遡ると大きな釜を持つ立体的な地形が現れて、その先に立派な滝が登場しました。ここは右から巻き上って落ち口の近くから右手の薮の中に入り、かすかな踏み跡を辿って上流へトラバース後に斜面を下ると、落ち口の上流わずかの場所にすんなり降りられました。

この滝の上までは以前誤ってウツボギ沢に入ってしまったときに経験済みですが、そこから先は未体験ゾーンです。と言っても難しいところは皆無で、ところどころの美しい釜や可愛らしい段差をすたすたと越えていくだけ。ロープを出す場面はまったくありませんでした。

昨日の東黒沢も癒し渓ですが、このウツボギ沢はそれに輪をかけた癒し渓。歩きにくいゴーロはほとんどなく、明るい茶色のナメや小滝を次々に越えて、二俣が現れれば手元の地形図と高度計とで現在位置を同定しながら行き先を選定するばかりです。

1530mの二俣を左に入ってしばらくしたところで水を汲み、やがてその水が涸れると草地の中の沢形を辿っての登りになりました。沢形が消えてザレになったところで左後ろを振り返ると、そこには白毛門からの登山道が現在位置より低いところに見えています。ということはここは登り過ぎなので左方向へ軌道修正して少し笹薮を漕いで、笠ヶ岳から白毛門方向へ150mほど下った位置の登山道に出ました。ここまでの消費時間は広河原から2時間35分であっけない感じもしますが、退屈するところのほとんどない良渓だったので満足感はそれなりにありです。

装備を登山仕様に替えて勝手のわかっている道をのんびり歩いて、40分ほどで白毛門山頂に到着しました。そこからは、松ノ木沢ノ頭までは一ノ倉沢の様子(残雪がまだ中途半端に残っていました)やジジ岩・ババ岩の立派な姿を眺めながらの、しかしその先は展望も失われてうんざりするような、長い下りになります。

白毛門から2時間弱の下りでやっと登山口に到着です。東黒沢の水で沢靴類をきれいに洗い、またしてもキャニオニングツアー参加者の皆さんと合流しつつ駐車場に帰還しました。

初日も2日目も、3時間前後で遡行終了。いくら初沢登りとは言っても、セキネくんには少し(かなり)簡単過ぎたかもしれません。しかし、初沢登りとは思えないセキネくんの堂々たる歩きぶりも掛け値なしに見事でした。これを機にセキネくんも上越の山や沢に親しんでくれればうれしい限りです。

おなじみ湯テルメ谷川でさっぱりした後の〆は沼田まで車を飛ばしてワンゲル御用達の「山彦」で、セキネくんはとんかつ定食+ヤマメの塩焼き、私はひれかつ定食。相変わらずの美味に、ここが初めてのセキネくんも大満足だったようです。どうぞこれからもご贔屓に。