塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

片品川中ノ岐沢小淵沢〜尾瀬

日程:2007/08/18-19

概要:大清水から林道歩きの後に小淵沢に入渓。小淵沢田代から大江湿原を経て尾瀬沼畔の長蔵小屋泊。翌日、尾瀬沼北岸〜尾瀬ヶ原を抜けて鳩待峠へ。

山頂:---

同行:デチ / まっきー

山行寸描

▲苔のきれいな15m滝。上の画像をクリックすると、小淵沢の遡行の概要が見られます。(2007/08/18撮影)
▲多段滝の上の20mナメ滝。左端から取り付いたら意外な難しさだった。(2007/08/18撮影)
▲最後の12m滝。ここを右から巻けば滝は終了。(2007/08/18撮影)

昨年、デチを癒し系の泊まりの沢、奥秩父の釜ノ沢へ連れて行ったのですが、これが思いの外の厳しい遡下降になり、デチにとってトラウマになってしまいました。ところが、その2週間後に別のメンバーを連れて行った尾瀬の小淵沢は掛け値なしの癒し渓。このことを根に持った(?)デチは、季節が巡るのを待って「自分も癒しの沢へ連れて行け!」と強く要求してきました。しょうがないなあ。しかし、実は私自身も静かな尾瀬の雰囲気が気に入っていたので、デチとその盟友まっきーを小淵沢へ案内することにしました。

2007/08/18

△05:50 大清水 → △06:45 小渕沢出合 → △07:25-50 入渓点 → △11:25 登山道 → △11:35-12:05 小淵沢田代 → △12:50 大江湿原 → △13:10 長蔵小屋

新宿発22時の夜行バスで大清水に着き、屋内で少々仮眠してから、時折雨模様の曇り空の下を出発して中ノ岐沢沿いの林道を歩きます。既に沢旅に慣れている2人なので小淵沢出合でも休憩することなく林道を左に進み、道が右岸から左岸に渡る橋から入渓しました。

この入渓点からの小淵沢上流の眺めはなんとも冴えませんが、すぐに楽しい小滝や多段のナメの廊下が連続するようになります。ちょっと立った2m滝では去年のかっしいとアイコはお助けスリングで確保しましたが、デチとまっきーはちょっとどきどきしながらも自力でラインを見つけて抜けていき、少なくとも「初心者」の域は十分に脱していることを証明しました。

傾斜のある7m滝は、左の笹をつかみながら1段上がり、ややもろい階段状を登って上に抜けました。さらに小滝を越えて緑の苔が明るい15m滝が出てきましたが、雨のせいで水量はかなり多い様子。ここでは昨年の晴れた日でもずいぶん冷たい水に苦労しましたが、今回は水を頭からドバドバとかぶりながらの登りとなってエラい目に会いました。すっかり身体が冷えてしまったため、休憩をとることなく先を急ぎます。

楽しい2段の斜滝や樋状の滝を過ぎたところで、見慣れた青紫色の花が出てきました。「これがあのトリカブトだよ」と教えると、デチとまっきーは喜んでさっそく記念写真。去年のアイコもトリカブトに異常に反応していましたが、女というのは誰でも心の中に自分のデスノートを持っているのでしょうか()?

そして実質的な核心部となる20mナメ滝。昨年はど真ん中を登って最初の一歩が難しかったので今度は左端から取り付いてみましたが、途中でちょっと立ってきて、貧弱な笹をつかんで身体を引き上げなければならなくなりました。落ち口でも横に張り出した木の枝が邪魔で不安定になりましたから、ここはやはり真ん中から登るのが正解なのかもしれません。上からロープを投げて2人には真ん中を上がってもらいましたが、やはりこの滝が一番難しかったと後で口を揃えていました。

明るく開けたプロムナードのようなナメの先の10m滝をロープなしで各自抜けると、少しの歩きで修行にもってこいの12m滝。こちらも去年より水量が多く迫力がありますが、右手の悪い泥壁をだましだまし登って巻けば、この沢の滝は終了です。後はコンパスとにらめっこしながら沢筋を詰めていって、適当なところで北へ針路をとればよいのですが、昨年同様少し東に行き過ぎてしまい、ほぼどんぴしゃで登山道の昨年と同じ場所(小淵沢田代から東に5分)へ出てしまいました。

小淵沢田代へ移動して木道上で装備を解き、昼食タイム。デチもまっきーもこうした高層湿原を見るのは初めてらしく草原の広がりとかわいい池溏に大喜びしていましたが、ちょうど青空も雲間から覗くようになって、美しくはあるものの少々陰鬱だった沢からの開放感に浸りました。

緩やかに木道を下り、大江湿原ではとげとげのオゼヌマアザミや赤味が鮮やかなワレモコウ、そして紫のサワギキョウやタンポポに似たオゼミズギクの群落を楽しみながら歩くうちに、今日の宿である尾瀬沼畔・長蔵小屋に到着しました。受付を済ませ、3人で一部屋をゆったり使わせていただいて、軽く昼寝の後さっぱり入浴、おいしい夕食。さらに19時から近くのビジターセンターでのスライドショーを見に行きましたが、デチとまっきーはところどころ睡魔に負けて「落ち」ていたようで、翌日折々に私が「これはビジターセンターのお姉さんが説明していたでしょ?」と言った事柄がことごとく「?」で返されてしまいました。

2007/08/19

△07:00 長蔵小屋 → △07:50-08:25 沼尻休憩所 → △09:45-10:25 下田代 → △11:55-12:50 山の鼻 → △13:50 鳩待峠

朝、がんばって4時頃に起床し、大江湿原へ朝靄の幻想的な景色を期待して散歩に行きました。あいにく綺麗な朝靄は出なかったのですが、平野家代々のお墓に手を合わせたり、朝焼けに染まる雲を見上げたりとそれなりに楽しい時間を過ごしました。しかし、ところどころ草が踏みしだかれ、お化けのように大きくなったミズバショウのゴーヤのような実が喰い散らかされているのは、ツキノワグマの仕業のようです。

おいしい朝ご飯をいただいて、沢装備に興味津々といった顔つきの受付のお兄さんに小屋の前で記念写真を撮ってもらって、尾瀬沼の北岸の道を辿り沼尻へ。ここでも他の登山者からこの朝のクマの目撃情報を知らされましたが、出会い頭にならない限り害はないはずだと信じて、燧ヶ岳南麓のブナの樹林帯の道を下りました。

今日は幸い天気も良くなって、しかもそれほど暑くはなく気持ちの良い湿原歩きとなりました。何より、人が多くないのがうれしいところ。昨夜のビジターセンターでのスライドショーで尾瀬の四季を説明してくれたお姉さんも「この時期の尾瀬に来る人は『通』」だと言ってくれて、私は内心鼻高々でした。

ところどころの池溏や拠水林と清流をアクセントとしながら、竜宮〜三又〜牛首と歩いて山の鼻に到着。さすがにここに来ると鳩待峠から降りてくる軽装の観光客も多いのですが、ここまで十分に尾瀬の自然を堪能してきたので、かえってそうした下界の空気も懐かしく親しみを感じられます。

山ノ鼻で花豆ジェラートとカレーライスの昼食をとった後、1時間の最後の頑張りで鳩待峠に到着し、3人で握手を交わして山旅の締めくくりとしました。

ここから乗合タクシーとバスを乗り継いで老神温泉でゆったり湯に浸かり、沼田駅前では「山彦」で4cm厚のトンカツ定食を食し、ついでに「山彦」の御主人にせがんで木道がない頃の尾瀬ヶ原の写真が載った記事のスクラップも見せていただきました。

そうこうするうちに時刻はだいぶ遅くなり、JRの鈍行を乗り継いで大宮で解散したときには21時を回っていました。最後の移動の長さには少々げんなりしたものの、デチもまっきーも小淵沢の沢登りと尾瀬沼・尾瀬ヶ原歩きとを共に堪能してくれたようです。2人ともお疲れさまでした。またいつか、今回のようにゆったりと山に親しむ機会を作りましょう。