塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

中川川白石沢モロクボ沢

日程:2005/08/20

概要:西丹沢のモロクボ沢を遡行。畦ヶ丸山頂に出て、善六のタワ経由下山。

山頂:畦ヶ丸 1293m

同行:ナカジ / オグ

山行寸描

▲大滝30m。上の画像をクリックすると、モロクボ沢の遡行の概要が見られます。(2005/08/20撮影)
▲F3の泳ぎと登り。上の画像をクリックすると、F3の様子が見られます。(2005/08/20撮影)

多摩川水根沢谷企画はなかなかセンセーショナルな話題を呼んだのですが、一方で「あんなサバイバルな沢は、ヤダ」という声もあったので、第2弾は丹沢でも珍しく癒し系とされるモロクボ沢を選んでみました。この日一緒に沢に行くことになったのはナカジとオグ。2人ともおニューの沢タビを用意して、かなり気合が入っている感じです。

2005/08/20

△09:50 西丹沢自然教室 → △10:30-50 白石沢キャンプ場 → △11:05-25 大滝(F1) → △11:50 F5の上の堰堤 → △14:00 稜線 → △14:05-30 畦ヶ丸 → △15:35-45 西沢本棚見物 → △16:00-10 西沢下棚見物 → △16:35 西丹沢自然教室

小田急線新松田駅からバスで1時間余り、終点の西丹沢自然教室に到着。あたりはオートキャンプの家族連れで賑わっていて、小さい子供たちが川遊びをしている姿も見られます。よく晴れて暑い白石沢沿いの道を奥へと進んで、用木沢出合のゲート、手沢橋を次々に過ぎて道が緩やかに登りだしているあたりに左に渡る小さな橋が出てきました。ここが白石沢キャンプ場の入口で、すなわちモロクボ沢への道になります。キャンプ場は閑散としていて、最初左岸、ついで橋を渡って右岸を奥へと進むと、三つ目の堰堤の上に降りられるあたりに赤テープがありました。ここで沢装備を装着です。

キャンプ場には誰もいないのに先ほどから焚火の匂いがするなと思ったら、入渓点のすぐ近くの川沿いでカップルが焚火を熾しながら静かに2人の世界に入っていました。邪魔してはいけないので後ろから回り込みわずかに上流から水に入りると、すぐに出てきた堰堤を右から越すとき堰堤のプレートに「室窪沢」と書いてあるのが読めました。これがこの沢の本当の名前なのか、などと思っているうちにすぐに大滝が目の前にどうどうと落ちているところに到着しました。ちょうど先行の男女ペアが大滝の下で寛いでいるところで、この後この2人とは中流域を抜けるところまで前後しながら進むことになりました。

高さ30mの大滝はなかなかの迫力で、しかも滝の真下まで近づいて見上げることができました。ガイドブックには「登るなら右岸を人工登攀」などと書いてありますが、ラインを読んでみたところ、左から上がって水流を右に渡り、水流すぐ右のルンゼ状を詰めれば上へ抜けられそう。とはいえ今日はあくまで「癒し系」の日なので、しばらく滝の下で涼んだ後は先行の2人と同様にノーマルなラインを辿ります。すなわち、左のガレからちょっと手応えのある岩溝(III-くらい?)を落ち口と同じ高さまで登り、そこから明瞭な踏み跡に導かれてぴったり大滝の落ち口に出ました。

大滝のすぐ上は釜になっていて、その向こうに楽しげな滝が待っています。今日は十分暑いので積極的に釜に入るように指示をして、後は2人が思い思いに滝に取り付くに任せました。木漏れ日が美しい緑のトンネルの中を進んで、続くF3も広い釜を手前に持っていて、正面から泳いで取り付き、ナメ状の滝にホールドを見つけて難なく登っていけます。この滝が、モロクボ沢の中でも一番楽しいところで、オグ、ナカジも楽しげに泳ぎ、登ってきましたが、ナカジのスイミングフォームが奇麗なのには驚きました。すぐに出てくるF4とF5は連続していて、F4は釜を泳いで右寄りからうるさい倒木を避けながら左上バンドを登り、F5も泳いで滝を正面から登ると石積みの堰堤が登場。これを右から越えると渓相は落ち着きを取り戻します。

この後はゴーロ歩きになって、二俣を水晶沢を右に分けて左に入り、右岸からガレがなだれている場所を通過。『東京周辺の沢』にはこの辺りに階段状4m滝が記されていますが、どうやらガレに埋もれてしまっているようです。きれいなナメを愛でたり、倒木の滝で短く泳いだりと楽しみながら奥に進み、両岸から小沢が落ちてきているところで小休止。男女ペアはこのときは我々の後ろになっていましたが、お賑りやパンを頬張っている我々を抜かすときに女性の方が「魚がいますよ」と教えてくれました。

小休止を終えて遡行を再開し、1:3の分岐はS字状のナメ滝が見えている右手に入りました。この後もナメが出てきたり、四角い岩でボルダリングの真似事をしたりして楽しかったのですが、その先の顕著な分岐を左に入ると水は枯れて谷の中は白い砂と苔に覆われるようになってきました。次の二俣は本流と思われる右へ。続くケルンのある二俣は左へ入って、以後は二俣のたびに左をとりました。最後は脆い窪状の斜面に多少胆を冷やし、きつい滑りやすいザレの斜面に汗もかきましたが、なんとか無事に稜線の登山道に出られました。右手を見るとちょっと上がったところに標識らしきものがあり、そこまで行くと「200m先避難小屋」と書いてあって畦ヶ丸の山頂はそこからすぐでした。

見通しはきかないものの木々がまばらで明るい畦ヶ丸の山頂で沢装備を解除し、遅めの昼食をとっているときに男女ペアも山頂にやってきました。男性の方が開口一番「どこを登ってこられました?」。最後を小尾根に上がったところで厳しい笹薮漕ぎになったそうで、アイスハンマーをふるう場面もあったようです。お疲れさまでした。

さて、バスの時間も気になるので下山開始。善六のタワを経由してよく整備された道をとっとと下りましたが、後から聞くとナカジにはこの下りが一番こたえたようです。それでも1時間余りで本棚沢、ついで下棚沢を通過するときに両方の大滝を見物してその迫力に圧倒されてから、西丹沢自然教室に帰り着きました。

帰りに中川温泉の「ぶなの湯」に立ち寄って汗を流し、さらに海老名のレトロな焼き鳥屋で打ち上げました。今回は確かに技術的にも環境的にもサバイバルな部分はなかったのですが、体力的にはちょっときつかったかもしれません。2人とも内心「話が違う……」と思っていたかもしれませんが、まぁ沢登りというのは体力が基本です。せっかく沢タビも買ったんだし、またどこかへ行きましょう。

こちらは下山の途中で見物した西沢本棚と下棚。特に前者は70mの高さから豊富な水を落として凄い迫力です。先日ここ(本棚)を登ったひろた氏が3ピッチ目のハーケンを抜いてしまった(当然フォールしたものの、強力な守護霊様のおかげで怪我なし)ことでその悪絶さにさらに磨きがかかってしまったそうなのですが、うーん、これはいつかチャレンジしてみたい。

……というわけで、命知らずでリード大好きの沢登ラー募集中。当方、ビレイ技術には自信ありです。