富士山

日程:2003/06/07-08

概要:靴慣らし・足慣らしを兼ねて富士山へ。初日は馬返しから吉田口五合目の佐藤小屋まで。2日目は佐藤小屋から吉田口頂上経由お鉢巡りの後、富士スバルライン五合目へ下山。

山頂:剣ヶ峰 3776m

同行:---

山行寸描

▲剣ヶ峰を対岸に望む。お鉢を右から回ったが息が上がって1時間もかかってしまった。(2003/06/08撮影)
▲山頂測候所を見上げる。あの特徴的だったドームはもうない。(2003/06/08撮影)

手持ちのワンタッチアイゼンが使えて軽い靴、というコンセプトで新しくシリオ製の靴を購入したので、富士山で試し履きをしてみることにしました。単に試し履きなら丹沢でも良かったのですが、どうせなら雪が残っていそうな富士山でアイゼンの具合も見てみようと思った訳です。この週末は幸いにも天気が安定しているようでしたが、土曜日の午前中は自宅にいなければならない用事があったため、午後に恵比寿のボルダリングジムで2時間ほど遊んでからおもむろに出発し、夕方に富士吉田駅に着いて、腹ごしらえをしてからタクシー(3,370円也)で馬返しまで入りました。

2003/06/07

△19:25 馬返し → △20:45 井上小屋 → △21:05 佐藤小屋

出発した時点で既に日が暮れかけており、半月も黒雲の合間に見え隠れしていて、樹林帯の中を進む登山道はヘッドランプがなければ何も見えません。出発してすぐに下ってくる外国人のカップルとすれ違ったほかは周囲に人の気配がなく、なんとなく無気味なので足を速めてぐいぐい高度をあげました。道の途中にはかつて登拝客で賑わったであろう神社や茶屋があって合目の目印になりますが、いずれもほとんど廃屋となっていて痛々しい感じです。

1時間ほども登った頃から焚火をたくような匂いがしてきて「?」と思っていたら、ふいに目の前に明かりの灯された小屋が現れて、中では地元の人らしい4人が寛いでいます。おかしいな、と思いながら「あの〜、井上小屋はこの上ですか?」と間の抜けた質問をしたらここが井上小屋だという回答。今日はその井上小屋の前にツェルトを張るつもりで準備してきていたので「この前にツェルト張っていいですか?」と聞いたところ「佐藤(小屋の)前の方がいいなぁ」とつれない返事が返ってきました。なんだよ冷たいな、と思いながらそのまま登山道を登っているうちに、稲光が光って雷鳴も聞こえてきました。雷鳴はまだかなり遠そうなので不安にはならなかったのですが、甲斐駒ヶ岳で怖い目にあった経験があるので方針を変更して、今夜は佐藤小屋に素泊まりさせてもらうことにしました。

明るい佐藤小屋の中では、小屋の主人夫婦(?)と常連客らしい3人が薪ストーブの前で酒を飲んでいました。素泊まり(5,000円)を申し込んでから「雷が……」と言うと、「あれは下界で光っているだけだからここでは全然関係ないよ」と言われて愕然。さらに追い討ちをかけたのは、この日上まで登ってきていた客の1人からの「雪はあってもアイゼンはいらないですよ」という情報で、リュックサックの中のシュラフはもとより、アイゼン・ピッケルの雪山装備もただの「歩荷の石」と化してしまいました。こうなったらせめて素泊まり料のもとをとらねば、と荷物をあてがわれた部屋に片付けてから酒宴に乱入し、23時まで呑んだくれてしまいました。

2003/06/08

△04:00 佐藤小屋 → △08:15-25 吉田口頂上 → △09:25-35 剣ヶ峰 → △10:20-30 吉田口頂上 → △13:10 富士スバルライン五合目

3時半に携帯電話の目覚ましで起床し、持参したパンとテルモスのコーヒーで朝食。小屋の外に出てみると地平線は既に明るくなりはじめていました。4時ちょうどに出発し、迷いようのない登山道を登って30分ほどでご来光を迎えたら、後は面白みのない道をひたすら上を目指すだけです。

吉田口頂上に8時前に着くことを目標に、息が上がらない程度のスピードで、休憩もなるべくとらないようにして高度を上げていきましたが、さすがに本八合目の辺りから苦しくなってきました。さらに九合目を越える頃からかすかに頭痛を感じ始め、高度の影響を受けていることがわかります。これまで4000m以下で高度障害を感じたことはなかったのですが、夕べの酒が悪かったのか睡眠不足のせいか、なかなか足が前に進まなくなってしまいました。山頂手前の雪田状の部分はキックステップで問題なく越えましたが、最後の鳥居をくぐって久須志神社に着いたときには到着目標時刻を15分もオーバーしていてがっかりしました。

お鉢巡りは右から逆時計回りに回りましたが、エネルギーも切れてしまったようでスピードが上がりません。それでも何とか着いた剣ヶ峰の測候所は、あの特徴的だったドームが撤去されていて寂しい風情でした。そのままぐるっと一周してみるとこの時間帯に山頂にいた登山者はざっと50人くらいでしたが、テントが何張りかあったので高度順化訓練のために山頂に泊まったパーティーもいたようです。

下山は吉田口方面へ下ります。夏は登りと下りで道を変えているのですが、この時期は登山者も少ないので登ってきた道をそのまま下りました。登りのときには佐藤小屋より上の全ての山小屋が閉鎖されていましたが、下りのときにはいくつかの小屋が来月からの営業再開に向けて準備を開始しているところに行き会いました。そして六合目からは道を左にとってスバルラインの五合目に下り、ここで14時発の新宿行き直通バス(五合目から新宿まで2,600円ですが、いくらバスとはいえ富士吉田駅から馬返しへのタクシー代より安いとは)に乗り、18時頃には帰宅することができました。