塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

八甲田連峰

日程:1996/08/13-15

概要:田茂萢湿原から赤倉岳、井戸岳を経て最高峰・大岳に登り、高田大岳をピストンして酸ヶ湯に下る。ついで猿倉温泉から旧道を辿り、旧道幕営地にリュックサックをデポ後、櫛ヶ峰を往復。テントで1泊後、黄瀬沼を往復してから猿倉温泉へ下山。

山頂:大岳 1585m / 高田大岳 1552m / 櫛ヶ峰 1517m

同行:---

山行寸描

▲八甲田大岳から見下ろす井戸岳。麓に建っているのは大岳避難小屋。(1996/08/13撮影)
▲仙人岱から見上げる八甲田大岳。明るく乾燥した広場は登山者が踏み荒らしてしまった元湿原。(1996/08/13撮影)
▲南八甲田の木道。ワタスゲの白さが心を癒してくれる。(1996/08/14撮影)
▲黄瀬沼。展望は得られなくても、私の山行歴の中の宝物。(1996/08/15撮影)

◎「岩木山」からの続き。

1996/08/13

△09:00 山頂ロープウェイ駅 → △10:20 赤倉岳 → △10:25 井戸岳 → △10:45-50 大岳避難小屋 → △11:15-40 八甲田大岳 → △12:15-25 仙人岱ヒュッテ → △12:50 小岳 → △14:10-20 高田大岳 → △15:20 小岳 → △15:40-55 仙人岱ヒュッテ → △17:00 酸ヶ湯沢野営場

青森駅前から十和田湖行き始発バスに乗り、ロープウェイに乗り継いで山頂ロープウェイ駅から歩き出しました。

ゆっくり順路を進むと田茂萢湿原が広がりましたが、ここで展望台から降りて湿原に入り写真を撮ろうとした男性がいたので、つい怒鳴りつけてしまいました(マジギレ)。バツの悪そうな表情を浮かべて戻ってきた彼を見てみると人の良さそうな老人で、こういう人が罪の意識なく自然を破壊することに暗澹となりました。

そのまま道は赤倉岳目指して高度を上げていますが、久しぶりにテントを担いでいるため足取りが遅々として進みません。それでも、オコジョらしい動物を見掛けたりしながらじわじわと足を進めるうちに登り着いた五色岩からは稜線慢歩となり、赤倉岳の曝烈火口や井戸岳のきれいな摺鉢火口を見てから八甲田大岳への鞍部に下ります。ここに建つ大岳避難小屋は真新しく清潔で、そのまま泊まりたくなるほどでした。

鞍部からの登りは急坂ですが、意外にあっけなく八甲田大岳の山頂に到達しました。木の柵に囲まれた山頂には軽装の登山者が思い思いの格好で寛いでおり、井戸岳ほど見事ではありませんがここにもすり鉢火口が見られます。西側の毛無岱から北へ田茂萢方面に目を転じていくと、遠くに青森市街も見えました。

ジャムパンなどで昼食にしていると、犬を連れた登山者が現われて主従共々食事を始めましたが、牛乳を皿にあける間、犬がおすわりをして待ち、主人の「よし」の声を聞いてから飲み始めました。青森の犬の行儀の良さにつくづく感心したところで休憩を切り上げ、八甲田大岳から南へ下って高田大岳へのピストンのために明るく清潔な仙人岱ヒュッテへ荷物をデポ。デイパックに水と行動食、ヤッケを詰めて元来た道を分岐まで引き返しました。

湿った道から小岳山頂に着きましたが、あいにくガスで展望はなし。高田大岳方面の道はあまり踏まれておらず、ピストンでも相当の時間がかかることから二の足を踏みましたが、意を決して下りにかかりました。怒濤の笹原を下り、湿原地帯を抜けて再び笹の下を潜るように登り返します。森林限界を超えたあたりで今日2匹目のオコジョに会い、さらにひたすら急登をこなしました。小岳山頂から高田大岳までの道では誰にも会いませんでしたが、高田大岳山頂には谷地温泉から登ってきたアマチュア無線家が立派なアンテナを立てて交信中でした。しかしここもガスで展望がなく、そそくさと来た道を引き返しました。

デポしてあった荷を回収し、地獄湯沢沿いの道を酸ヶ湯へと下ります。硫黄の匂う地帯を抜けると間もなく車道に出、野営場に入りました。幕営料金の支払は酸ヶ湯温泉フロントで行っており、そのまま酸ヶ湯に入れる仕組みになっていました。

1996/08/14

△09:15 猿倉温泉バス停 → △10:35-40 ヤビツ谷地 → △12:30-50 旧道幕営地 → △14:10-20 櫛ヶ峰 → △15:20 旧道幕営地

酸ヶ湯からバスで移動し、猿倉温泉バス停で降りて車道を奥に入るとすぐに猿倉温泉。山道はその奥まったところから始まっています。山道といってもかつては十和田湖まで伸びていた軍道であり、したがって軍用車が通れるように起伏を避けて極力平坦に作られているので歩きやすくはありますが、その分まだるっこしく、眺めのない笹のなかの道が延々と続きます。歩いている途中でふくらはぎに水滴が当たるのに気付き「?」と思っていましたが、ワタスゲの白い花が見事なヤビツ谷地でやっと水筒の蓋が外れていたことに気付きました。このときは「水場が途中にあるからいいか」くらいにしか思っていなかったのですが、後でそれではすまなかったと知ることになります。

地獄峠という名前とは裏腹に明るい穏やかな峠を越えて今日の野営地に到着すると、ちょうど学生4人パーティーが撤収を終え、背後の駒ヶ峰に登ろうとしているところでした。私の方もここにリュックサックを置き、例によってデイパックに必要最低限の荷を詰めて西に少々離れた櫛ヶ峰を目指しました。

時折通り雨に降られながら湿原の中の木道を歩き、さらに笹の斜面を進んで南八甲田の最高峰・櫛ヶ峰に到着。遠くの景色は見ることができなかったものの、眼下に櫛ヶ峰の傾斜湿原が広がり、さらにはるか下の方には歩いてきた木道が細く伸びて、はるばる来たと気持ちを高ぶらせました。

野営地に戻り、テントを張って食事の支度を始めようとしたところで、先ほど漏れていた水筒の水がマッチを濡らしていたことに気付きました。慌てたものの何度トライしても駄目。幸いなことに近くにもう1組幕営していたため、ライターを分けていただき事なきを得ました。彼らがいなかったらどうなっていたことか……。

1996/08/15

△06:05 旧道幕営地 → △07:10 黄瀬沼南端 → △08:15-50 旧道幕営地 → △10:20 ヤビツ谷地 → △11:20 猿倉温泉

朝食をとり、デイパックで黄瀬沼へ下りました。辿り着いた沼はガスに包まれて神秘的な気配を漂わせており、周囲を囲む木道の左右はきれいな湿原になっています。八甲田連峰は北の湿原や山々がよく歩かれていますが、本当の魅力は櫛ヶ峰や黄瀬沼のようにひっそりと人知れずたたずむ原始境のような雰囲気をもつ南八甲田にこそあるのではないかと思います。この黄瀬沼も、眺めには恵まれなかったもののかえってその幽玄な雰囲気が好ましく、ここを訪れたことを一生の思い出にできそうです。

昨日ライターを分けてくれた2人組が乗鞍岳へ取り付くのを見送ってから来た道を引き返し、テントを畳んで帰路に就きました。しかし、露に濡れた笹のために衣服はすぐにびしょ濡れになり、加えて台風の影響で雨が降り始めました。やっとの思いで下山し、バスの時刻を確認して温泉に入りました。当初の計画ではこの後青森に泊まってから、翌日を移動日として引き続き山形へ転戦するつもりでしたが、いったん帰京して心身の態勢を立て直し改めて山形新幹線で山形入りすることにしました。