塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

東京フィルハーモニー交響楽団 ニューイヤーコンサート2019

2019/01/03

Bunkamuraオーチャードホール(渋谷)で、毎年恒例のニューイヤーコンサート。私自身は昨年に続いて2回目の鑑賞です。

前回と同じく福袋プログラムの投票を済ませ、八海山の升酒をいただいてから会場内に入りました。やがて定刻となって、ライオンヘアーの指揮者・大谷直人氏が登場。

J. シュトラウス:ワルツ「春の声」Op.410
まずはおなじみのヨハン・シュトラウスの華やいだワルツが少し速めのテンポで演奏されて、祝祭の雰囲気がいっぺんに盛り上がります。この曲の演奏が終わったところで司会の朝岡聡氏が登場し、今年が文化村30周年であることを告げると共に、なぜか(しかし確かに気になる)この日の箱根駅伝の順位を速報してから、この日最初の福袋曲を決めるサイコロが大友氏によって振られました。サイコロの目は「16」、すなわち曲はビゼーの「カルメン」です。
ビゼー:歌劇『カルメン』前奏曲
曲に合わせて編成が変わり、そしてこれまたお正月らしい景気の良い「カルメン」。打楽器の音圧が会場を圧します。私がまだ物心つくかどうかという子供だった頃、家には「カルメン」のレコードがあって、曲に合わせて指揮の真似をしていたという個人的な思い出のある曲でもあります。
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
うまい具合にスペインつながりとなって、ギタリストの村治佳織さんが異国情緒あふれる赤いドレスをまとって登場し、「アランフェス協奏曲」の演奏となりました。全3楽章を通して聴いたのはこれが初めてで、メランコリックなフレーズが有名な第2楽章がこんなに長大なものだということも知りませんでしたし、フラメンコギターを連想させる軽やかなカッティングに続くメロディーの中にかすかに哀愁を漂わせる第1楽章や、モザイクのようにリズムと旋律が組み合わされて進行する第3楽章の魅力に接したのも初めて。もちろん村治佳織さんの演奏も素晴らしいものでした。ただ、演奏に入る前に大友氏が解説していたようにクラシックギターとオーケストラとの音量のバランスにはやはり難があり、割り切ってPAを導入しているのならもう少しギターの音のレベルを上げられたのではないかという感想も持ちました。

ここで休憩となり、昨年と同様に獅子舞が登場して正月気分を盛り上げてくれました。

ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲(冒頭)
第2部のイントロとして、まずはラデツキー行進曲のさわりから入ります。
ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
スネアロールを背景に入場チケットの半券によるくじ引きで当たった男性が舞台上でリクエストした曲は、賑々しいからという理由で選んだハンガリー舞曲の第5番。そこまでやるかというくらいに緩急・強弱のダイナミクスがついた演奏を、彼は舞台上で聴くことになりました。
エルガー:行進曲『威風堂々』第1番
リクエストの第3位は「『スター・ウォーズ』よりテーマ」、第二位は「モルダウ」、第一位は「威風堂々」。第二位と第3位が入れ替わっただけで、昨年のベストスリーと同じです。そしてやはり、短い序奏に続いて有名な中間部のゆったりしたテーマ("Land of Hope and Glory")が先に演奏されましたが、この曲の魅力は弦による勇壮な主題にあるというのが私の意見。
ラヴェル:ボレロ
このニューイヤーコンサートのみならず、バレエでもおなじみの曲ですが、踊るには速過ぎるテンポで演奏されました。指揮者の正面に置かれたスネアドラムによる169回のリズムパターンの繰り返しと共にオーケストラが徐々に輝きを増して行く中、ホルン、チェレスタ、ピッコロが旋律をとるところで(特に)ピッコロの音がスケールを無視した動きをするのが前から不思議だったのですが、これは基音となるホルンに対する倍音に見立てた並行音程をとらせているからで、パイプオルガンの音作りの手法を取り入れたものだそう。こうして目の当たりにすると、音量の変化が滑らかなクレッシェンドではなく途中で不連続に音量がアップすることや、各種の弦楽器がそれぞれどこでピチカートからボウイングに変わるかがわかって面白く鑑賞しました。
ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲
抽選によるプレゼント大会の最後の景品は「ラデツキー行進曲」を指揮する権利ですが、ここで登場した男性の指揮ぶりは事前のインタビューでの緊張ぶりとは裏腹に堂々たるものでした。曲の最後も見事に締めて客席を「おお〜」と驚かせ、盛大な拍手喝采が湧きましたが、どうやら仕事は小学校の先生で指揮の経験があった模様。「終わり方が秀逸でしたねえ」と褒めた大谷直人氏から指揮棒をプレゼントされていました。
ヨハン・シュトラウス2世:「雷鳴と稲妻」
アンコールはこれも昨年と同様に、ポルカ「雷鳴と稲妻」。打楽器による雷鳴の中を傘が指揮者やコンサートマスターの手を行き来し、楽しく終了しました。

福袋プログラムの曲目リストは以下の通りです。昨年との違いは「★」で示してありますが、大半が昨年と同じ曲で、上記のとおり人気曲も同じ。正直に言えば「威風堂々」は食傷気味なので、第一位になった曲は翌年のリストから外すといった工夫があればいいのにと思いつつ、また来年もチケットを買ってしまうかもしれません。

  1. モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジークより第1楽章
  2. モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』序曲
  3. ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』より第1楽章
  4. ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』より第1楽章
  5. J.シュトラウスⅡ:ワルツ『美しく青きドナウ』
  6. スッペ:『軽騎兵』序曲
  7. パッヘルベル:カノン
  8. バッハ:G線上のアリア
  9. ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番 ★
  10. メンデルスゾーン:交響曲第4番『イタリア』より第1楽章
  11. マスカーニ:歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』間奏曲
  12. フェラーリ:歌劇『マドンナの宝石』間奏曲
  13. ロッシーニ:歌劇『ウィリアム・テル』序曲より”スイス軍の行進”
  14. オッフェンバック:喜歌劇『天国と地獄』序曲より“カンカン”
  15. ビゼー:『アルルの女』第2組曲より“ファランドール”
  16. ビゼー:歌劇『カルメン』前奏曲
  17. エルガー:行進曲『威風堂々』第1番
  18. シベリウス:交響詩『フィンランディア』
  19. グリーグ:劇音楽『ペール・ギュント』より“朝”
  20. ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
  21. スタメナ:連作交響詩『わが祖国』より“モルダウ”
  22. チャイコフスキー:バレエ音楽『白鳥の湖』より“情景”
  23. チャイコフスキー:バレエ音楽『くるみ割り人形』より“花のワルツ”
  24. グリンカ:歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲
  25. ボロディン:歌劇『イーゴリ公』より“ダッタン人の踊り”
  26. ハチャトゥリアン:バレエ『ガイーヌ』より“剣の舞”
  27. J.ウィリアムズ:『スター・ウォーズ』よりテーマ
  28. J.ウィリアムズ:『スター・ウォーズ』より“帝国軍のマーチ”
  29. J.ウィリアムズ:『ハリー・ポッター』よりテーマ
  30. ハンス・ジマー:『E.T.』より“フライング・テーマ” ★