御存鈴ヶ森 / 助六由縁江戸桜

2013/06/16

先月に引き続いて、歌舞伎座へ。第一部の「俊寛」も大いに気になったのですが、歌舞伎らしさを求めて鶴屋南北の「鈴ヶ森」と歌舞伎十八番の一つ「助六」が掛かる第三部のチケットをとりました。

御存鈴ヶ森

因縁をつけてきた雲助たちをばったばったと薙ぎ倒したいわくありの若侍・白井権八と、その権八に声を掛けて自分の手元に匿うことになる江戸の侠客・幡随院長兵衛との出合を描く40分ほどの一幕。過去に観たのは、

    白井権八 / 幡随院長兵衛
2004/12/25 七之助 / 中村橋之助
2008/03/02 中村芝翫 / 中村富十郎

という組合せでした。白井権八役にはまだ十代の若侍の初々しさと人を殺して逐電してきた似た陰りが求められますし、幡随院長兵衛役には悠揚迫らぬ度量の大きさと多少砕けた味とが求められます。そういう点では、橋之助丈の幡随院長兵衛や芝翫丈の白井権八には、それぞれに仁から離れても客席に有無を言わせぬ芸の力が求められ、またそれを果たしていたと思うのですが、今回の組合せは白井権八に梅玉丈、幡随院長兵衛に幸四郎丈。梅玉丈の白井権八は、最初のうちは十七・八にしては貫禄あり過ぎなのでは?と思ったものの、暗い舞台上でのだんまりの立ち回り(足、顔、尻、腕、鼻と次々に切り落とされる工夫が面白く、特に横倒しになった駕篭を上を飛び越えながら空中回転するとんぼには拍手喝采)を経て最後の一人にとどめを刺した後にお若けえの待たっせえやしと声を掛けられて幡随院長兵衛とのやりとりになってみると、やはり若侍と大侠客という関係に落ち着いていました。さすが。駕篭から降りてきた幡随院長兵衛がかざす提灯に油断なく刀を構えながら対峙し、やがて感じ入った風になって一礼、提灯の明かりを借りて刃こぼれを確かめる場面や、地面に落ちていた手配書を読む幡随院長兵衛を刀の柄に手を掛けた姿で見入る白井権八の姿など、随所に緊迫感が漂いましたが、最後は柝の一打ちと共に黒幕が切って落とされ一瞬にして全点灯の明るい舞台となり、華やかに終演。この明暗の鮮やかな転換は、やはり歌舞伎ならではです。

歌舞伎ならではと言えば、冒頭に身ぐるみはがされる飛脚が白井権八の手配状のことを雲助たちに話す場面で、白井権八が歌舞伎役者で言えば中村梅玉似だと説明したり、白井権八から中国筋まで名の通った幡随院長兵衛!と感嘆すると、幸四郎丈がいやいやそれは昔の五代目の話、今の自分は九代目(現幸四郎丈は九代目)……と謙遜しながら男の中の男一匹と名乗りにかかるのも、いかにも歌舞伎らしいアドリブかも。

助六由縁江戸桜

「助六」は、最初に観たのは仁左衛門丈襲名披露(よって外題は「助六曲輪初花桜」)、以後は新之助丈團十郎丈海老蔵丈(これらはいずれも「助六由縁江戸桜」)。そして今回は、歌舞伎座新開場杮葺落公演として團十郎丈が助六を演じるはずだったのですが、團十郎丈が鬼籍に入ってしまったために、海老蔵丈が助六役を勤めることになったのでした。

冒頭の口上を幸四郎丈が勤め、この代役の次第を述べて一礼してから河東節連中に声を掛け、金棒引が行き交い傾城が姿を見せれば、そこはもう華やかな吉原の世界。以下、主立った役柄を登場順に紹介します。

久しぶりに観た、市川團十郎家の家の芸。これぞ江戸歌舞伎という演目を豪華配役で堪能して大満足。でもまぁ、これで暫くは歌舞伎座に顔を出さなくてもいいかな、という感じでもあります。

配役

御存鈴ヶ森 幡随院長兵衛 松本幸四郎
白井権八 中村梅玉
助六由縁江戸桜 花川戸助六 市川海老蔵
三浦屋揚巻 中村福助
通人里暁 坂東三津五郎
朝顔仙平 中村又五郎
福山かつぎ 尾上菊之助
三浦屋白玉 中村七之助
曽我満江 中村東蔵
髭の意休 市川左團次
くわんぺら門兵衛 中村吉右衛門
白酒売新兵衛 尾上菊五郎
口上 松本幸四郎

あらすじ

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