舞歌の至芸

2012/11/29

亀井広忠プロデュース能楽舞台「舞歌の至芸」を大手町の日経ホールで。同じ職場のノリちゃんが能を勉強したいと申し込んだものの同行をアテにしていた友達にフラレてしまい、私の方にエスコート役のお鉢が回ってきたという経緯です。深く考えもせずOKしたのですが、後で出演者を調べてみてその豪華さにびっくり。舞囃子でこそあるものの、観世流三巨頭の揃い踏みです。

舞台上は、通常のホール舞台の上に能舞台を模した板敷きが設置されており、演者は上手から登場します。冒頭に亀井広忠氏の、意外に低い声による、しかも巧まざるユーモアのある挨拶(後半は自分の番宣……)があって、以下次々に演目が進行しました。休憩も含めて全体でちょうど2時間くらいでしたが、紋付袴姿による素の謡や舞は、能舞台で装束をつけての常の形とは違ったストレートな魅力があって、これはこれで味わい深いものだと思いました。

屋島

観世宗家・清和師のシテによる舞囃子。思ひぞ出づる昔の春、月も今宵に冴えかへりから入り、《大事》の小書によって弓に見立てた扇を落とす「弓流」があり、弓を見込んでいったん流レ足で退いてから、波間に追って拾い上げる「素働」が挿入されて、終曲まで。さすが宗家、安定しているというか完璧というか。

高砂

謡と太鼓の組合せで、高砂やから楽しむまで。太鼓は一歩引いて、朗々たる謡を上手に盛り立てていた感じです。

鸚鵡小町

まずは居囃子。地謡・囃子方とも凄いメンツがずらりと居並んで(左から忠洋六喜玄清銕)、まさに壮観です。それ歌の様をたづぬるに、長歌短歌旋頭歌、折句誹諧混本歌鸚鵡返……と続いて、シテ役は梅若玄祥師。落魄の身の寂寥感が漂いました。休憩をはさんで、次は舞囃子。やはり梅若玄祥師のシテで、さても業平玉津島に参り給ふと聞えしかばから終曲まで。銕之丞師の率いる地謡は清元ばり(?)の高音を交えながら切々と謡い、その中でシテはかつての矜持と、受け入れざるを得ない老いの悲しみとを最小限の動きの中に最大限のオーラで示していました。うーん、これは凄い……。

夜討曽我

十郎既に討たれて五郎時致も死を覚悟した味方の勢はこれを見てから。勇壮な争闘の場面だけに謡と小鼓の迫力あるバトルが展開しましたが、その中で小鼓の連打のうちに音程が下がってまた上がるという部分があり、その表現力の豊かさに瞠目。こういうのは初めて聴きました。

獅子

忠雄(大鼓)・六郎兵衛(笛)コンビの、これも渾身の演奏。笛のメロディがまるでそこを獅子が歩き回っているかのような写実的なものであったとすれば、大鼓の高音と大音声の掛け声は獅子の咆哮のよう。最後はぴったり息があった終曲となり、会場は大拍手に包まれました。

春日龍神

谷本健吾師による待謡神託まさにあらたなるから入り、八大龍王の〔舞働〕へ。なにせ銕之丞師が直面のあのギョロ目で龍王を舞うのですから、その迫力たるや恐るべし。そしてその巨躯にもかかわらず高い身体能力を活かして飛安座、激しい足拍子、そして飛返りを次々に披露。最後の演目らしく、賑やかに終曲となりました。

配役

舞囃子 屋島大事 シテ 観世清和
地謡 梅若紀彰
地謡 山崎正道
地謡 谷本健吾
藤田六郎兵衛
小鼓 鵜澤洋太郎
大鼓
一調 高砂 観世喜正
太鼓 金春国和
居囃子 鸚鵡小町 地謡 観世清和
地謡 梅若玄祥
地謡 観世銕之丞
地謡 観世喜正
藤田六郎兵衛
小鼓 鵜澤洋太郎
大鼓 亀井忠雄
舞囃子 鸚鵡小町 シテ 梅若玄祥
地謡 観世銕之丞
地謡 観世喜正
地謡 山崎正道
地謡 谷本健吾
一噌幸弘
小鼓 成田達志
大鼓 亀井広忠
一調 夜討曽我 梅若紀彰
小鼓 鵜澤洋太郎
一調一管 獅子 大鼓 亀井忠雄
藤田六郎兵衛
舞囃子 春日龍神 シテ 観世銕之丞
地謡 観世喜正
地謡 山崎正道
地謡 谷本健吾
一噌幸弘
小鼓 成田達志
大鼓 亀井広忠
太鼓 金春国和