眠れる森の美女<世界バレエフェスティバル全幕特別プロ>

2009/08/15

東京文化会館で、東京バレエ団がアリーナ・コジョカルとヨハン・コボーをゲストに迎えての「眠れる森の美女」を観ました。第12回世界バレエフェスティバルの全幕特別プロとして上演されるもので、演出は2006年に観たのと同じマラーホフ版です。

大まかな進行は2006年のときと同様ですが、やはりプロローグの見せ場はリラの精とカラボスとの対立構図。性格的には善と悪、音楽的にはホ長調とホ短調。そのリラの精は田中結子さんが伸び伸びと踊って舞台全体にぱっと明るさをもたらしていましたが、一方のカラボスを踊るのはあの高岸直樹!長身の彼が違った意味で伸び伸びと性格のねじ曲がったカラボスになりきってくれていて、見ていて嬉しくなってしまいました。

そして第一幕、万雷の拍手に迎えられたアリーナ・コジョカルは、登場して最初に足を高く持ち上げた瞬間に、それまで舞台上にいたあらゆるダンサーが霞んでしまうような輝きを見せてくれました。彼女は、身長はむしろ低い方で日本人女性ダンサーと釣り合うくらいなのに、明らかにその一挙手一投足が他のダンサーとは違います。強いて言うなら、彼女の場合は全ての動作の軌跡と速度がコントロールされ、意味を与えられて滑らかに連続しているような感じ。加えて手先や足の甲の優雅さと美しさ、表情の可憐さに惹き込まれます。そんな彼女が登場後すぐに直面するのが、このバレエの最大の見せ場となるローズ・アダージョです。最初のアティテュード・バランスから、受け取ったバラを両親の足元に(投げずに)丁寧に置いた後、音楽が最高潮に達して四人の王子たちに次々に手をとられながらのアティテュード・アン・プロムナードは、最初はぎりぎりのバランスだったのが徐々に安定し、四人目のプロムナードを終えて最後に両手をアンオーにしての静止は十分に長く、次の瞬間に両手を高く伸ばしてフィニッシュのアラベスクに持ち込みました。

第二幕でヨハン・コボー登場。カラボスとの対峙ではリラの精の陰に隠れて弱気なのは前に観たときと同様で、リラの精から「早くあれやんなさいよ!あれ!」とブロックサインを受けてやっと気づいてオーロラにキスし、無事に眠りが覚めて第三幕へ。

第三幕では、おとぎ話の主人公たちによるディヴェルティスマンが見どころになりますが、ダイヤモンド(西村真由美)、シンデレラ(渡辺理恵)、青い鳥(松下裕次)、それに猫たちがそれぞれ見せてくれました。そして、主役二人のグラン・パ・ド・ドゥもまた、アダージョでの凄いスピードのパ・ド・ポワソンがびしびしと決まり、それぞれのヴァリエーション、コーダと力強く展開しましたが、技巧的なこと以上に感銘を受けたのは、大人になったオーロラ姫を踊るアリーナ・コジョカルの王女としての気品です。最後は、例によってカラボスによるフリーズとリラの精による解放を入れて、賑やかに終演しました。

ヨハン・コボーはちょっと無難なダンスに終始したかな、という感がありましたが、やはりアリーナ・コジョカルは魅力的です。これまで観たオーロラ姫というと、たぶん一番最初に観たのが森下洋子さん(四半世紀も前のこと……)で、他に完全無欠のバランスを示したシルヴィ・ギエムも印象に残っていますが、「世界は私のためにある」という感じのギエムのオーロラ姫よりは、アリーナ・コジョカルは持って生まれた可憐さと確かなテクニックとの結合という点で森下洋子さんのオーロラ姫に似ているような気がします。そのアリーナ・コジョカルとは、11月の「くるみ割り人形」で再会する予定。こちらも、今から楽しみです。

キャスト

オーロラ姫 アリーナ・コジョカル(英国ロイヤル・バレエ団)
デジレ王子 ヨハン・コボー(英国ロイヤル・バレエ団)
リラの精 田中結子
カラボス 高岸直樹
フロレスタン国王 永田雄大
王妃 坂井直子
カタラビュット / 式典長 野辺誠治
妖精キャンディード 矢島まい
妖精クーラント 乾友子
パンくずの精 高木綾
カナリアの精 高村順子
妖精ビオラント 奈良春夏
妖精のお付きの騎士 松下裕次 / 長瀬直義 / 宮本祐宣 / 横内国弘 / 梅澤紘貴 / 柄本武尊
オーロラ姫の友人 西村真由美 / 吉川留衣 / 渡辺理恵 / 川島麻美子 / 森志織 / 福田ゆかり / 村上美香 / 阪井麻美
四人の王子 木村和夫 / 後藤晴雄 / 平野玲 / 柄本弾
ルビー 岸本夏未
エメラルド 阪井麻美
サファイヤ 村上美香
ダイヤモンド 西村真由美
シンデレラとフォーチュン王子 渡辺理恵 / 柄本弾
フロリナ姫と青い鳥 佐伯知香 / 松下裕次
牡猫と子猫 吉川留衣 / 平野玲
赤ずきん 森志織
指揮 デヴィッド・ガーフォース
演奏 東京フィルハーモニー交響楽団