知られざるロバート・キャパの世界展

2004/05/05

この日の東京都写真美術館の二階展示室は、ロバート・キャパの写真。キャパの出世作である《崩れ落ちる兵士》も展示されていましたが、全体にはスペイン内戦を中心に、パリでの日本人との交流、そして日本訪問時の模様を多数の写真で綴るもので、質より量で勝負している感じがしました。特に日本訪問時のコーナーは、キャパ自身が被写体となった日本漫遊記の趣きがあって、キャパ自身の作品は多くありません。ただし、キャパはこの最初で最後の日本訪問の途中で「ライフ」誌の要請を受け、インドシナ戦線へ赴き、そこで亡くなることになるので、死の直前のキャパの姿を見るという意味では貴重です。

しかしこの展示会では、最後に掲示されていた1枚の写真だけを見ればいいように思います。《進撃(インドシナ)》と題されたその写真は、野原を散開して左奥へ進むフランス兵を背後から撮ったもので、兵士の中には銃を肩に担ぎ上げた姿の者もいるからそれほど緊迫した場面ではないように見えます。画面中央奥から右手前に向かって土手が空間を仕切っていて、キャパはよりよい構図を得るためにこの土手に上がろうとして地雷に触れ、亡くなってしまいます。つまりこの写真はキャパが最後に撮った一枚であり、その画面の中の目に見えないどこかに、キャパの命を奪った死神が隠れているという写真なのです。