Dream Theater

2004/04/26

2年ぶりのDream Theaterのライブ at 日本武道館。今回は最新作『Train of Thought』をフィーチュアしたツアーで、この日はDVD収録があることがあらかじめアナウンスされていました。

会場に入るとステージ上は下手からJordan Rudess、John Myung、Mike Portnoy、John Petrucci。そして中央前列にJames LaBrieの定番の立ち位置となっています。私の席はアリーナのかなり右前方で、目の前に横たわっているカメラを積んだ巨大なロボットアームが邪魔になりそうな予感(この予感は後で的中)。それにしても日本武道館でのライブはかなり久しぶりです。東京国際フォーラムという大きなハコができたせいもあるのでしょうが、記録を調べてみると前回日本武道館でライブを観たのは1992年のYesのUnionツアー(例の8人Yes)で、今から12年前です。

定刻の19時になって会場内に流れていた音楽がそれまでのメタル調からリズムの強力なクラシック曲に変わり、その曲が終わると突然暗転、ステージ後方の三つのスクリーンにスター・ウォーズよろしく「A long time ago in a galaxy far, far away...」の文字が現れた後、彼らのデビューアルバムから順を追って曲がメドレーされ、各アルバムのジャケットやプロモーションビデオ、ライブ映像が次々に流されていき、早くも聴衆は大歓声を上げました。最後に前作『Six Degrees of Inner Turbulence』のラストのシンセコードが長く伸びている間にいよいよメンバーがステージ上に登場し、そのまま新作『Train of Thought』の1曲目、ゆったりしたダーティーなベースリフからドラムが盛り上げて突如アップテンポのハードリフに変わる「As I Am」。長いイントロの後にJames LaBrieのボーカルが入ってきたとき、彼の声の調子が絶好調であることを知って、聴衆のボルテージがさらに上がりました。曲の終わり、ギターのフィードバックの間にMike Portnoyが3バスドラの巨大セット「ツインモンスター」の右セットから左セットへ移って、そのままツーバス連打で突入する新作2曲目の「This Dying Soul」へ。最後にキーボード、ギターのソロに続いて、こんなのライブでやらないでくれ、と驚くほどの恐るべき超高速ユニゾンで曲は終わります。

MCが入って、ハードなギターリフから「Beyond This Life」。この曲ではMike Portnoyが、途中の静かなパートを使って左セットと右セットとの間を行ったり来たり、水を潮吹きみたいに飛ばしたり、スティックをNeil Peartみたいに投げ上げたり、そして彼のドラムセット左後方にしつらえられた固定カメラに向かっておどけてみせたりと忙しく働いています。曲はベースのリズムキープの上でのコード主体のギターソロに移り、ドラムは適当にタムなどで遊んでいましたが、ドラムもインテンポになるとJohn Petrucciがハイポジションでの凄い速弾きソロを披露。続いてJordan Rudessがブラス系の奇怪なソロをとり、ここでもドラムはシンバルやカウベルなどで遊んでいましたが、やがてはっきりとキーボードとドラムの掛け合いになって、元の曲に回帰しました。

アコギのイントロのバラード「Hollow Years」をはさんで、カウントとともに「Six Degrees of Inner Turbulence」から「War Inside My Head / The Test That Stumped Them All」。特に後者は強靭なリズム感を要求される難曲で、聴いているこちらも必死になってメインフレーズの7/16+6/16拍子、ギターとシンセのソロのパートの14/16+15/16拍子についていこうとしますが、しかしその厳しいリズムの中でもMike Portnoyは、時折左手のスティックをくるくると回しています。そして最後の全楽器高速ユニゾンでは、ベースのJohn Myungが指弾きで本当にあの速度をこなすのに驚愕しました。新作の「Endless Sacrifice」で大合唱になった後は、James LaBrieが引っ込んでいよいよインストゥルメンタルメドレー。「Fatal Tragedy」をベースにしながらそこにさまざまな曲が入れ替わり立ち代わり登場する仕掛けで、「Erotomania」「Metropolis: Part 1」「A Change of Seasons」「YTSE Jam」「Hell's Kitchen」、それにLiquid TensionExperimentの曲もはさみこんで15分余り。本当に凄い体力!特にベースは6弦で肩にかなり重たいでしょうし、その上にフィンガーピッキングで指や前腕の消耗も半端ではないだろうと、半ば感動、半ば同情……。

イントロを聴くたびにRushの「Xanadu」と勘違いする「Trial of Tears」で第1部が終了して15分間の休憩。スクリーンには蒸気機関車の画像とともに「The next train will be leaving the station in 10 minutes.」と表示されていて、この「10」が時間の経過とともに少なくなっていきます。

第2部、ステージ上にメンバーが戻ってきましたが、John Myungの手にはベースではなくチャップマンスティックが!もちろんあの「New Millenium」です。独特の雰囲気を持つこの曲は、私のお気に入りの一つ。彼はスティックを本来の奏法であるタッピングだけでなく、通常のベースのようにツーフィンガーで弾いたりもしますが、ビデオで見ていたその光景を目の当たりにしてやはり奇異な感じがします。それにしても、全体に今日のPAは(今日も、というべきか)ギターが前面に出ていて、ベースがあまり聴こえないのが残念。Kurzweilの機能をフルに発揮したキーボードソロに続いて、ファーストから「Only a Matter of Time」。シンセソロは初代キーボードプレイヤーであるKevin Mooreのスタイルでいかにもシンセリードという感じ。そして「Goodnight Kiss / Solitary Shell」。今日のセットは『Six Degrees of Inner Turbulence」を重視した選曲になっているように思いましたが、泣きのギターが盛り上げる「Goodnight Kiss』とダブルネックの12弦ギターのコードカッティングから入る美しいメロディの「Solitary Shell」の2曲は「Six...」の中でも一番の聴かせどころです。ただ、流麗なピアノソロに続くスパニッシュギター風のソロは、ギターのテンションをコントロールできていないような音だったのが残念で、曲の終わらせ方も唐突な感じ。

テープによるギターアルペジオから長いインストの「Stream of Consciousness」を経て、不安な響きのピアノから導かれる「Disappear」は、今日のセットリストの中では唯一選曲ミスではないでしょうか。かなり長い演奏時間を経て我々も体力の限界が近づいており、ここでぐっと盛り下がるこの曲は正直辛いものがありました。しかし、そんな辛さを吹き飛ばしてくれたのはお約束の最終兵器「Pull Me Under」。演奏もボーカルワークも共に完璧!もちろん聴衆も「ぽーみーあんだー!」と歌いまくりで喉を嗄らしました。

アンコールは、最新作ラストの「In the Name of God」。雄大な曲想のこの曲のフィナーレでは、Mike Portnoyが右手でドラムを叩きながら左手を頭上で大きくウェイブ。聴衆もそれに応えるように大合唱し、James LaBrieがステージ上を歩き回ってあらゆる方向の聴衆に感謝の合図を送って、3時間に渡るコンサートを締めくくりました。

ミュージシャン

James LaBrie vocals
John Petrucci guitar, vocals
Jordan Rudess keyboards
John Myung bass, chapman stick
Mike Portnoy drums, vocals

セットリスト

  1. As I Am
  2. This Dying Soul
  3. Beyond This Life
  4. Hollow Years
  5. War Inside My Head / The Test That Stumped Them All
  6. Endless Sacrifice
  7. Instrumedley
  8. Trial of Tears
    -
  9. New Millennium
  10. Keyboard Solo
  11. Only a Matter of Time
  12. Goodnight Kiss / Solitary Shell
  13. Stream of Consciousness
  14. Disappear
  15. Pull Me Under
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  16. In the Name of God