寿曽我対面 / 素襖落 / 川連法眼館 / 舌出し三番叟 / 勧進帳

2002/05/12

5月の歌舞伎座は、四代目尾上松緑襲名披露。「三之助」のトップを切って、辰之助丈が祖父である二代目松緑の名跡を継ぐこととなりました(40歳で亡くなった父・初代尾上辰之助に三代目松緑を追贈)。ちなみに今年は既に三津五郎丈と魁春丈が襲名披露を行っていますし、この後2004年春には新之助丈が十一代目市川海老蔵、2005年には勘九郎丈が十八代目中村勘三郎、鴈治郎丈が四代目坂田藤十郎をそれぞれ襲名することになっています。歌舞伎の襲名は、芸の伝承と同時に興行会社の重要な収入源。松竹の快進撃は当分止みそうにありません。

寿曽我対面

さて、昼の部の演目は御存じ「寿曽我対面」から。正月に曽我物がかからなかったので不思議に思っていたのですが、この襲名披露のためにキープしていたとは気づきませんでした。これまで見た二度の「対面」では座頭の工藤祐経を富十郎丈團十郎丈が演じましたが、今回は三津五郎丈というのが意外。しかしいざ観てみると、全体に淡々とした中にも意外に線の太いところが出ていて、とてもよかったと思います。和事の十郎は菊之助丈でこれは役にぴったり。荒事の五郎は新之助丈の予定でしたが、体調不良で急遽父の團十郎丈が代役を勤めたものの、やはりバランス的にはどうかなという感じ。しかし、五郎が盃を勧められて工藤ににじり寄り、十郎が後ろから、工藤が正面からその殺気を押し止めるくだりは、三者それぞれの迫力に目が離せませんでした。

素襖落

同名の狂言を義太夫・長唄掛け合いの歌舞伎舞踊にした松羽目物。いかにも富十郎丈の得意そうな演目で楽しい一幕。

川連法眼館

松緑丈が佐藤忠信を演じる「川連法眼館」。あまりにも有名な「義経千本桜」の四の切です。忠信は新松緑丈の祖父及び父の当たり役だったそうですが、こちらはどうしても猿之助丈のそれと見比べてしまいます。そこで正直に白状すると、私は松緑丈の声質と滑舌の問題がどうしても気になってしまうし、演技自体もつかみどころがないというか、なかなか感情移入できないタイプのものだと感じました。ただ、声の問題に関しては現團十郎だって良くなったと言われるようになったのはほんの2〜3年前からのことですし、幸四郎丈なんかいまだに「喉で声をこねくりまわしている」などと批評されるくらいですから、まだまだこれからどう変わっていくかわかりません。演技の方も同様です。なお演出的には音羽屋型、早替りの後の出を床下からではなく館の奥からにして、欄間抜けを省略しここで床下から現れます。また最後の引っ込みは宙乗りではなく桜の木に沿って身体が登っていく型でした。

昼の部はこの後に「京人形」がありましたが、これをパスして近所で昼食をとってから夜の部の幕見席の受付に並びました。まず「舌出し三番叟」は踊りの名手・三津五郎丈の三番叟のめでたい舞踊。名前の通り、途中で三番叟がぺろっと舌を出す変わった演目です。続いて「口上」では、富十郎丈が新松緑丈を「少なくとも今後70年は贔屓にしてほしい」と述べて喝采を受けていました。

勧進帳

そして松緑丈の弁慶での「勧進帳」、菊五郎丈の冨樫と富十郎丈の義経にサポートされての大役です。前回観たのは團十郎丈の弁慶と菊五郎丈の冨樫で絶妙の組み合わせでしたが、今回の菊五郎丈も既に冨樫を自家薬篭中に入れている感じでさすがの貫禄だし、富十郎丈のおかげでこれまで十分気づいていなかった義経役の重要性が理解できて収穫でした。そして肝心の松緑丈も、菊五郎丈と張り合う大きさを出していました。

配役

寿曽我対面 工藤祐経 坂東三津五郎
曽我五郎 市川團十郎
曽我十郎 尾上菊之助
 
素襖落 太郎冠者 中村富十郎
姫御寮 中村時蔵
大名某 坂東彦三郎
 
川連法眼館 佐藤忠信実は源九郎狐 尾上松緑
源義経 市川團十郎
川連法眼 市川左團次
妻飛鳥 澤村田之助
静御前 中村雀右衛門
 
舌出し三番叟 三番叟 坂東三津五郎
千歳 中村芝雀
 
勧進帳 武蔵坊弁慶 尾上松緑
冨樫左衛門 尾上菊五郎
源義経 中村富十郎

あらすじ

寿曽我対面

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素襖落

主人の使いで出向いた先で勧められるままに盃を重ねた酒好きの太郎冠者、土産にもらった素襖を主人に手渡すまいと一苦労。

川連法眼館

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勧進帳

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